政府開発援助とは (オーディーエーとは) [単語記事]

政府開発援助（Off ic ial Developm ent Assis tan ce、略称：ODA）とは、先進国の政府等が、開発途上国の経済発展や福祉の向上に貢献するために行う公的な資金や技術協力のことである。

この記事の概略と日本にとっての役割

日本が税金を財源として、開発途上国の「国づくり」を支援する活動全般を指す。専門家を派遣して技術を伝えたり（技術協力）、学校や病院を建設したり（無償資金協力）、道路や港湾といった大規模なインフラを整備するためにお金を貸したり（円借款）する。日本のODAは、戦後の復興期に世界銀行から支援を受けた経験を原点としており、国際社会への恩返しの意味合いも持つ。

外交基盤の強化：ODAを通じて途上国との友好・信頼関係を築くことは、国際社会における日本の発言力を高め、国連などの場での支持を得る上で重要な外交ツールとなる。
経済的な利益の確保：途上国の経済発展は、日本の貿易相手や投資先として新たな市場を生み出すことに繋がる。また、日本の重要な輸送路（シーレーン）周辺国の安定は、日本の経済安全保障に不可欠である。
国際社会への貢献と日本の平和と繁栄：貧困、感染症、気候変動、紛争といった地球規模の課題は、国境を越えて日本にも影響を及ぼす。ODAを通じてこれらの課題解決に貢献することは、ひいては日本の平和と繁栄を守ることに繋がる。

日本のODAは、「開発協力大綱」に基づき実施されており、「非軍事的協力による平和への貢献」「人間の安全保障の推進」「自助努力支援と日本の経験と知見の活用」などを基本方針としている。その実施は、主に外務省が全体を統括し、独立行政法人国際協力機構（JICA）が具体的な事業を行う体制となっている。

日本のODAは、大きく分けて「二国間援助」と「多国間援助」の二種類がある。

二国間援助：日本が直接、特定の開発途上国に対して行う協力。相手国の開発計画やニーズに沿ってきめ細やかな支援が可能。無償資金協力、有償資金協力（円借款）、技術協力がこれにあたる。
多国間援助：国連児童基金（UNICEF）や世界銀行、アジア開発銀行（ADB）といった国際機関へ出資・拠出し、それらの機関を通じて行われる協力。専門的な知見を持つ国際機関を通じて、広範な国・地域への支援が可能となる。

日本のODAは、長年にわたり世界各地で多くの成果を上げてきた。

【保健医療】ポリオの根絶
かつて世界中で子どもたちを脅かした感染症ポリオに対し、日本はワクチン供与や接種キャンペーンを世界規模で支援。1988年には年間35万人の患者がいたが、現在ではパキスタンとアフガニスタンの2カ国にまで撲滅が進んでいる。
【教育】みんなの学校プロジェクト
アフリカのニジェールで始まった、保護者や地域住民が学校運営に主体的に参加するモデルを構築。子どもたちの学力向上だけでなく、コミュニティの結束強化にも繋がり、現在ではアフリカ各地に広がっている。
【防災】インド洋大津波からの復興支援
2004年に発生したインド洋大津波に対し、日本は世界に先駆けて大規模な支援を表明。被災地のインフラ復旧だけでなく、自身の経験を活かした防災教育や津波警報システムの構築を支援し、地域の防災力向上に貢献した。

開発協力大綱
：日本のODAがどのような理念や方針に基づいて行われるかを定めた、政府の最上位の方針文書である。
人間の安全保障
：国家の安全だけでなく、一人ひとりの人間が恐怖（紛争、テロなど）や欠乏（貧困、飢餓など）から解放され、尊厳を持って生きられるようにすることを目指す考え方。日本のODAの基本理念の一つである。
自助努力（セルフヘルプ）
：開発は、外部から与えられるだけでなく、途上国自身が主体となって汗を流す努力が不可欠であるという考え方。日本は、この自助努力を促すような協力を重視している。