この家庭の父親もまた例外ではなく、青年時代に一度は興味を持つであろうエレキギターのテクニックについて自慢をしていた。
子供もはじめは「へー」などと反応を返していたものの、何度も言ってくる度「ウザい」と感じ、そのうち聞き流してしまうようになったのだった。
そんなある日、自慢話に嫌気が差した子供は、
「そこまで自慢をするなら、今の動画サイトで速弾き自慢が演奏するこの曲を弾いてみてよ!」
と、お父さんに挑戦状を叩き付けた。子供に尊敬されたかった父親は「何でも来い!」と曲も聴かずに安請け合いをしてしまった。
「まぁ、耳コピで何とかなるだろう」
と、余裕をかましつつ、演奏動画(アレンジが類似している)を観た父親は背筋が凍った。
「え? これを弾けと? ……本気と書いてマジ!?」
心の中でそう叫んだ。
確かに速弾きには自信があった。でも、楽譜は読めない。
(これを憶えるのか――――)
逃げたい気持ちは少しあった。だが、子供に舐められた揚句「お父さん、速弾き出来るとか嘘だったんでしょ!」などと貶されたくない、というプライドによって抑えた。
しかし、あまりの課題の重さ故に酷く狼狽し、父親は軽く震える口から、
「きょ、曲を憶えたいから時間をくれ……そう、一週間だ、一週間だけ待ってくれ」
と懇願した。子供は何とも言えない不敵な笑みを浮かべている。
残業を終えて22時過ぎに帰宅し、食事もそこそこに書斎に閉じこもる。明け方まで演奏動画のメロディを聴きながら自分で演奏して憶えて、またその続きを聴きながら憶えての繰り返し。
しかし、若い頃のように曲を憶える事すらままならない。「あれ?」「これでいいんだっけ?」「ちがうなー」「こうか?」「うーん」「アッー! 指がつった!」
しかし父は諦めなかった。
「過去の栄光などどうでも良い、いまはただ、ただ、娘に尊敬されたいだけなんだ!!」
――――そして約束の一週間後。なんとか憶えて子供に披露した。
一部をアレンジでごまかしたし、リズムもおぼろげだったが見事に演奏しきってみせた。
しかし、気がつくと………………
この間まで人間だったのに――――。
(この物語はフィクションです。 実在の人物、地名、団体名等とは、一切関係ありません。お父さんのブログにはこの動画が出来るまでの経緯がテクニック解説とともに書いてあります。)
速弾きは1970年代後半から80年代にカッコいいものとして脚光を浴びる事になり、その当時に青春時代を過ごした40代から50代にとってはモテるために必死に練習した技術である。だから、息子や娘世代が動画内で速弾きする若者をスゲー!カッケー!と賞賛するのを観てると「自分だって昔はこれくらい速弾きが出来たんだぞ。」と、思春期の子供からウザイと言われてるお父さん世代にとっては妬ましくおもえるのであろう。
そんな父親の子供世代への挑戦状がこの動画である。譜面が読めない事がなんだ。リズムが悪い事がなんだ。俺らは速弾きのブームを観てきたんだぞ!そんな誇りと意地が動画に映る口元からひしひしと伝わる。
元々、ニコ動では40代以上の人が主役の動画には結構反応がよく、温かい目で見られる事が多い。団地ベイダーやスピコファミリーのお母さんがその例である。そこに突如、東方の演奏してみたにこのお父さんは殴り込んできたのだ。
また、ニコ動では飼育動物の反応も良い。動画撮影中などどこ吹く風と映り込む動物達が主役を食った動画は多々ある。
このお父さん、途中参加の動物、というキラーコンテンツにアクセントを与えたのは、二つのタグである。「1:14から息子登場」と「逆ソフトバンク」。一般的ニコ厨は、うp主コメとタグを観てから動画を観る事が多い。だから、逆ソフトバンクはわからないが1:14から息子が競演するんだろう、と思いつつ動画を観始めた。しかし、1:14に現れたのは息子ではなく犬だった。
予想を斜め上行く出演者に「息子wwww」「逆ソフトバンク理解www」というコメが相次いで投稿され、再生数、コメント数、マイリスト数を順調に伸ばして行くのだった。
ちなみに投稿者は息子ではなく娘であった。娘に速弾き自慢するお父さん萌え
そして、8/23にお父さんはブログを始めた。若者に挑み続けるお父さんから目が離せない!!
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最終更新:2024/04/25(木) 05:00
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