必殺剣劇人とは、朝日放送(現・ABC)制作で1987年8月7日~9月25日までテレビ朝日系列で放送された時代劇『必殺シリーズ』第29弾である。全8話。
オープニングナレーション
あの街この街、陽が暮れて 世の中、闇に沈む時
昼間隠れたお化けども、大きな顔で歩き出す
金・金・金の亡者たち、土地を喰ってる赤鬼や、権力欲しい青い鬼
どこかのお国に似ています
あまりと言えばあんまりな 百鬼夜行の鬼どもを バッタバッタと斬り倒す
ゲゲゲの鬼太郎、桃太郎
今度の必殺剣劇人 大人のお伽噺です
概要
1972年から15年の長きに渡って放送された『必殺シリーズ』だが、ついに終了が決定。本作はその最終作となり、以後は単発のスペシャル番組(必殺ワイド)が放送されることになった(ただし1991年と2009年にはテレビシリーズは復活し、『必殺仕事人 激突!』『必殺仕事人2009』がそれぞれ放送されている)。
それ以外にも本作の特徴として、
- 本作以前のテレビシリーズではあまり見られない、無声映画時代のチャンバラ大活劇が取り入れられていること(映画『必殺4 恨み晴らします』に参加したJAC(現・JAE)がアクションに協力している)。
- 全編を通じての頼み人が剣劇人3人の共通の娘・お七(父親は誰かは分からない。頼み料自体は3人行きつけの飲み屋の女主人・お歌が「三途の川の渡し賃」と称して渡している)。
が挙げられる。
わずか8話で終了したものの、本作の作風やラストの大立ち回り(と大ガマ登場シーン)はインパクトが強い。
当時のシリーズ最後の作品ということで、最終回では中村主水がゲスト出演したほか、「幻の世直し三人組(剣劇人のこと)」が過去のシリーズの殺し屋のコスプレをするなど、ファンサービスも用意されている。
なお、本作は前作『必殺仕事人V「風雲竜虎編」』のある意味続編で、『風雲竜虎編』最終回で起こった江戸城の御金蔵破りの下手人が実は本作の「幻の世直し三人組」であり、盗んだ一万両の半分を市井にばらまき、残り半分で悠々自適に暮らしているという設定となっている(同じ長屋の別の家の中をくり抜いて、同じ家にしている)。
ちなみに近藤正臣、田中健、あおい輝彦というキャスティングは、当時、日生劇場で行われていたミュージカル『三銃士』と同じである。
登場人物
剣劇人(幻の世直し三人組)と関係者
- カルタの綾太郎演:近藤正臣
- 決め台詞:「寄らばぁ……斬るぞぉ!」
一応、三人のリーダー格。普段は賭場でカルタ札撒きをやっている。
八丈島からやってきた「娘」お七の願いを叶えるために「剣劇人」を結成。白装束を身にまとい、二刀流で大立ち回りを行うが、事件と無関係な人達は峰打ち、事件の黒幕のみ斬り捨てるという技を披露する。
最終回では、主水への口止め料を五千両から使うつもりだったが、五千両は突然起こった地震で失ったために使えなかった。また、いつもの衣装も火事で失ったため、最後の仕事の時は仕事人・三味線屋の勇次と同じ衣装をどこからか調達し、殺しの際も「恨みを断ち切る仕切人~殺しのテーマ~」をBGMに、勇次と同じ技を使っている(一応、カルタを飛ばして糸を切るといった技を披露している)。
その後は、清次、松坊主と共にお七を連れてお七の故郷・八丈島へと旅立った。
なお、EDでは通常はトップクレジットだが、最終回ではトメになっている。 - 早縄の清次演:田中健
- 決め台詞:「あ、おととい来や~がれ~!」
三人の中では最年少。普段は火消しをやっている関係で、裏稼業では鳶口で立ち回り、鉤縄を投げて悪人の首に巻き付けて絞め殺したり屋根から投げ落としている(鳶口で刺し殺す事も)。その際、『遠山の金さん』のように諸肌を脱いで彫り物を見せているが、実は彫り物は襦袢に描いているだけである。
なお、お七とは年齢が近いせいか、お七のよき相談相手となっている。
また、中の人と同じく、南米の楽器・ケーナを趣味にしている。
最終回では、仕事人・飾り職人の秀と同じ衣装をどこからか調達(頭部は少し違う)。殺しの際も「闇夜に仕掛ける」をBGMに、秀と同じようにかんざしを回して悪人の首筋に刺して絶命させている。
その後は、綾太郎、松坊主と共にお七を連れてお七の故郷・八丈島へと旅立った。 - すたすたの松坊主演:あおい輝彦
- 決め台詞:「ふっふ~ん…ば~~か~~め~~」
普段は健康を祈るための「すたすた踊り」というよく分からない踊りを披露している坊主。風体も表稼業も三人の中では一番ふざけているが、性格は一番まとも(なはず)。
裏稼業では棒術を駆使して立ち回り、悪人に対しては棒の先端を槍状にして刺し殺している(投げ飛ばすことも)。また、最後に紙製の大ガマに空気を入れて膨らまし、他の人達を驚かせている間に逃げるという役目もある。
最終回では仕置人・念仏の鉄と同じ衣装をどこからか調達するが、殺し技は鉄の技ではなく、仕留人・村雨の大吉の心臓掴みを披露している(レントゲン+心電図も再現)。また、その際のBGMは「仕留めて候」ではなく、「旅愁~ブラウン館バージョン~」だった。
その後は、綾太郎、清次と共にお七を連れてお七の故郷・八丈島へと旅立った。
- お七演:工藤夕貴
- 決め台詞:「夢みたい!カモノハシみたい!」
八丈島へ遠島となった盗賊・お百(故人)の娘で、母の言葉で江戸に父親がいることが分かり、江戸へとやってきた(父親は三人のうち誰なのか分からないため、それぞれを「父ちゃん」と呼んでいる)。
性格は世間知らずで無鉄砲。しかし正義感が強く、虐げられた弱者の仇を取る(=悪人をやっつけたい)という「夢」を持っている。悪事が起こった際は、怒って包丁持って飛び出すが、直後に変なコスプレをした三人組がその悪人をやっつけている場面を見て、はしゃぎながら上記の決め台詞を言うのがお約束となっている(実は、そのコスプレ三人組の正体が三人の「父ちゃん」であることは最初から知っていたが、最終回まで知らない振りをしていた)。
なお、三人と対面した際に顔を張るシーンがあるが、それがお七を演じた工藤のアドリブであるのは有名な話。
最終回では、「三途の川の渡し賃」に対する主水の態度にいらつき、主水に説教して絶句させる場面も。その後は、綾太郎、清次、松坊主を伴って生まれ故郷の八丈島へ帰っていった。
ある意味、本作の主人公なのかもしれない。 - お歌演:二宮さよ子
- 三人組行きつけの飲み屋の女将で、裏稼業の際に三人組に「三途の川の渡し賃」と称して4文銭を一枚ずつ渡している殺しの仲介役(本来は三人組は大金持ちなのでお金は必要ない)。
職業柄気っぷがよく、お七にとっては姉的立場である。また、仕事人・中村主水とは旧知の間柄でもある。
最終回の仕事後、八丈島へ旅立つ4人を見送った。
最終回ゲスト
- 中村主水演:藤田まこと
- 最終回に登場した南町奉行所同心で闇の仕事人。
奉行所に乱入して大立ち回りを演じた挙げ句に主要人物を仕置した三人組に対して怒りを露わにしており、彼らの正体を知るために旧知の間柄であるお歌を問い詰めたことで綾太郎達と知り合った。
「三途の川の渡し賃」や「殺し」の見解の違いでお七にやり込められるという一幕もあったが、結局「三途の川の渡し賃」を「仕事料」だと言い張って仕事に臨んだ。その際のBGMは、おなじみの「中村主水のテーマ」であり、殺し技も悪人を油断させて刺し殺すいつものアレであった。
最後は何故か中村家コントで締め、EDでもゲストなのにトップクレジットであった。そのため、本来はトップクレジットである綾太郎(近藤正臣)が、最終回ではトメ扱いとなっている。 - 筆頭同心・田中演:山内としお
与力・鬼塚演:西田健 - おなじみの主水の上司コンビ。
2人とも番組冒頭で奉行所に乱入してきた剣劇人相手に立ち向かうが、あえなくやられてしまった。 - りつ演:白木万里
せん演:菅井きん - おなじみの主水の嫁と義母のせんりつコンビ。
番組ではラストの中村家コントに登場。りつは「必殺が始まって15年」といきなり訳の分からない事を言い出したが、せんが言っていたのは中村家の跡継ぎという切実な願いだった。
主題歌
- ついて行きたい
- 作詞・作曲:たきのえいじ 編曲:桜庭伸幸 歌:テン・リー
元々は前作『必殺仕事人V「風雲竜虎編」』の挿入歌で、本作では2番の歌詞が使われている。
また、『風雲竜虎編』が放送された頃に公開された映画『必殺4 恨みはらします』の主題歌でもある。
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関連項目
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