積極財政とは、中央政府や地方公共団体の財政政策の形態の1つである。反対語は緊縮財政である。
本記事では中央政府の積極財政について述べる。
概要
定義
プライマリーバランスを赤字にして政府累積債務を増加させつつ政府購入や消費を増やす財政政策のことを積極財政という。
性質
積極財政の際は拡張的な財政政策が行われて政府購入と消費が高く維持されるので、閉鎖経済の国なら投資が減り、大国開放経済の国なら投資と純輸出が同じ割合だけ減り、小国開放経済の国なら純輸出が減る。
閉鎖経済の国や大国開放経済の国において積極財政をすることで投資が減ることをクラウディングアウトという。
閉鎖経済の国や大国開放経済の国において積極財政を必要とするとき
閉鎖経済の国や大国開放経済の国において積極財政を必要とするときとは、その国の生産設備が十分に充実し、クラウディングアウトを故意に起こして過剰投資の発生を防ぐ必要に迫られたときである。
日本において1965年以降はプライマリーバランスが赤字状態で積極財政といえるものになったが、それ以降の日本は生産設備が充実した先進国であり、積極財政をしてクラウディングアウトを起こさないと過剰投資が発生する危険のある国になっていた。
日本において1987年以降に特例国債の発行を減らし始め、1991年から1993年までになると特例国債の発行をゼロにまで抑制していた。このときの日本は生産設備が充実した先進国であったのに緊縮財政を実行した。こうした緊縮財政は理論どおりの結果となった。過剰投資が発生して住宅の価格が急上昇してバブル景気となり、1990年から株価が急落してバブル崩壊となり、銀行が大量の不良債権を抱える状態となって長期の不況に突入した。
閉鎖経済の国や大国開放経済の国において積極財政を必要としないとき
閉鎖経済の国や大国開放経済の国において積極財政を必要としないときとは、その国の生産設備が減少して投資を増やす必要に迫られたときである。
日本において1964年までプライマリーバランスが均衡状態で緊縮財政といえるものだったが、その当時の日本は生産設備が揃っていない発展途上国であり、投資を増やす必要に迫られた国だった。
積極財政のための体制
積極財政をするためには政府が国債を発行して金融市場から資金を供給しつつ、金融市場において中央銀行が国債を買いオペして資金供給オペレーションをする体制を構築しなければならない。
つまり、国家全体が通貨発行益(シニョレッジ)を得られるような体制にしなければならない。
そのためにはドル化や通貨同盟やカレンシーボード制といった体制を採用せず、「カレンシーボード制を採用しない固定相場制」や変動相場制を採用し、政府の影響を受ける中央銀行が発行する不換銀行券を自国通貨として採用する必要がある。
積極財政の内容
政府購入と減税の2つに分かれる
積極財政とは拡張的な財政政策であり、政府購入を増やしたり、減税をして消費を増やしたりすることである。
政府が人々に給付金を与えることは経済学において減税の一種と見なされる[1]。給付金は政府から人々への送金であり、税金は人々から政府への送金なので、給付金は税金の正反対であり、減税に等しい。
政府購入のほうが投資を効果的に減らす
財政政策の中で、政府購入を増加させる政策はクラウディングアウトを大きく発生させて投資を大きく減らす。
一方で減税の政策は、政府購入を増加させる政策に比べて、クラウディングアウトを小さく発生させて投資を小さく減らす。
政府購入の分類
政府購入は大別すると2つに分かれる。
1つは政府の貸借対照表の資産の部の数字を増やさない政府購入であり、公務員の雇用や鉛筆の購入などである。公務員が提供するサービスは「瞬時に消耗する物品」と同じように扱われて貸借対照表の資産の部に書かれないし、鉛筆のような物品も「1年未満で消耗してしまう物品」とみなされて貸借対照表の資産の部に書かれない。こうした政府購入のために国債を発行するときは、特例国債法を立法して特例国債として発行する必要がある。
もう1つは政府の貸借対照表の資産の部の数字を増やす政府購入であり、橋や道路などの建設や企業の株式の購入などである。橋や道路のような物品は「1年を超えて長期にわたって消耗する固定資産」とみなされて貸借対照表の資産の部に書かれるし、企業の株式も貸借対照表の資産の部に書かれる。こうした政府購入のために国債を発行するときは、財政法第4条にしたがって国会の議決を得てから4条国債という名前で発行する必要がある。特に橋や道路などの建設のための国債を建設国債という。
不景気から脱出するための積極財政
景気刺激
不景気に突入して総需要が減って実質GDPが減ったとき、積極財政をして総需要を増やして実質GDPを上昇させることがある。これを景気刺激という。
例
- 高橋財政 - 日本の高橋是清大蔵大臣が世界恐慌からの脱出を目指して実施した経済政策。世界最速で日本を恐慌から脱出させることに成功させた。その後、インフレを防ぐ目的で緊縮財政政策を実施しようとしたところ、旧日本軍によるクーデター事件「二・二六事件」が起き、高橋は暗殺された。
- ニューディール政策 - 米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が世界恐慌からの脱出を目指して実施した経済政策。新規巻き直し政策とも。
関連項目
脚注
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