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この記事(きじ)はちょっと難(むずか)しいかもしれません。 あたいったら最強(さいきょう)ね! |
核融合とは、軽い原子核が融合して重い原子核になる反応である。
概要
原子核には、原子核同士が引き合う力(核力)と反発する力(クーロン力※)がある。
核力は距離が離れるほど弱くなるため、通常はクーロン力の方が勝り、原子核同士が接触する事はない。しかし何らかの手段によって核力>クーロン力となる距離まで原子核同士を接近させてやると、2つの原子核が融合し別の原子核に変換される。
この反応が核融合である。
※ クーロン力とだけ言うと広義には引力と斥力の両方を意味するが、この場合は原子核同士の話であり、同じ電荷(+)を持つもの同士なので、クーロン力と言えば斥力を意味する。
核融合反応が起こると、反応の前後で質量が変化する。
ここで、軽い原子同士の核融合ならば、質量の差分がアインシュタインの特殊相対性理論:質量とエネルギーの等価性(E=mc2)に従って、エネルギーとなって放出される。核融合の結果発生するエネルギーは、高エネルギーの粒子(陽子、中性子など)やガンマ線、ニュートリノなどの形で放出される。
これを発電に利用する方法が現在研究されている。
一般的には「核融合は核分裂と違って放射性廃棄物を排出しないのでクリーンかつ有用な夢のエネルギーである」と言ったようなイメージを持たれている事があるが、実情とは大きく異なる。
核融合反応によって発生する放射線は、核分裂反応での放射線よりも遥かに強力で、危険である。 工学的な利用を考えた場合、それらの遮蔽が必要となる。構造材も照射損傷によって著しく劣化する。 行われる核融合反応によっては構造材の放射化すら発生する。
何の原子核を反応させて何の原子核に変えるのかと言う分類と、どのような手段によって反応を起こすのかと言う分類が存在する。
・・・もうちょっと分かりやすく頼む
2つの原子核をぶつけると勢いで1つに融合することがある。原子核が融合するから核融合。
んでもって、核融合反応が起きると膨大なエネルギーが発生するので、コイツを産業に利用しよう、というわけである。
現在「原子力発電」として運用されているのは、核融合反応ではなく全て核分裂反応を使った原子力である。核分裂反応を利用した原子力は、テレビなんかでさんざん言われている通り燃料の燃えカスとして放射性廃棄物が出るのが欠点。原理上、核燃料を燃やせば燃やすほど放射性廃棄物は出てしまうのである。しかし、核融合反応はそういった放射性廃棄物を原理上生み出さない。その上、制御不能に陥っても性質上暴走・爆発等を起こさない。あれ?核融合炉が実用化されればエネルギー問題解決じゃね?というのが世間一般の核融合に対するイメージである。
しかし実際は、現在最も実用化に近いD-T反応(下で紹介)では燃えた後の物質こそ無害なものの、反応中に中性子線というものがバカスカ出て、これが炉の周囲の物質を放射性物質に変えてしまうので、完全にクリーンかと言われればそうでもない。核融合炉からの廃棄物は高レベル廃棄物ではなく、量も核分裂反応よりははるかに少ないのだが・・・
何にしろ、核融合の実用化への課題は放射性廃棄物などではなく、単純に反応を維持するのが非常に難しいのである。
極端な話、核燃料をテキトーに集めれば始まってしまう(本当にテキトーに集めると爆発しちゃうけど)核分裂反応と違い、核融合反応は超高温・高圧状態を保ってやらないと反応が即座に止まってしまう(これは「暴走の危険が無い」という利点でもある)。現在、日本を含む世界中の科学者・技術者達が実用化に向けて努力しているが、商業利用できるレベルの炉が完成するのは当分先だろう、というのが実状である。
あと、一口に核融合と言っても、燃料や手法により様々な種類がある。下で紹介されているが、どれも一長一短。
手段による分類
熱核融合
熱とはすなわち原子ないし分子の運動が活発である状態の事であり、温度が上昇すればするほど活発になる。
つまり、一定の空間に閉じ込めた原子の運動を活発にしてやればその分原子同士が衝突を起こす確率が高くなるため、これを利用して核融合反応を起こす手法である。
もちろん温度が上昇し運動が活発になれば膨張しようとする力が働くため、それを閉じ込めておくだけの圧力も必要である。逆に言えば、圧力によってどんどん圧縮していけばそれだけ温度が上昇する。
太陽を初めとした、一般的な恒星の内部で起こっている核融合反応は自己重力による熱核融合である。
現在の核融合炉に関する研究の主流でもあるが、恒星のような自然環境で起こる反応と違って人為的に起こす反応には、このような高温高圧の状況を確保する事が難しいという問題がある。
磁場閉じ込め式核融合
熱核融合を起こすためには1億℃と言った超高温が必要であるが、こんな高温ではあらゆる物質がプラズマ化してしまうため、物体による容器と言う概念が通用しない。プラズマは導電体なため、磁場による仮想的な容器を作って閉じ込めることができる。代表的なものが環状のプラズマに電流を流して発生する磁場で閉じ込めるトカマク式で、構造が単純で大型化しやすいため最も研究が進んでいる。他にも螺旋状のコイルでプラズマを縛り付けるヘリカル式、向かい合わせた鏡のような磁場でプラズマを“反射”させて閉じ込めるミラー式などがある。
レーザー核融合
強力なレーザーで融合反応に必要な超高温・超高圧状態を作り出す方式。まず燃料となる重水素をプラスチックの球殻に詰めて凍結し、これに四方八方からレーザーを照射する。プラスチックの殻はレーザーの高熱で爆散し、その反動で燃料は中心に向けて非常に急速かつ均等に圧縮(爆縮)される。その後のプロセスは点火、つまり融合反応を起こす方式によって二種類に分かれる。圧縮された燃料自体の断熱圧縮による熱で点火する方式(このプロセスはディーゼルエンジンに例えられる)を中心点火といい、圧縮された燃料の一部に圧縮用レーザーとは別の超強力かつ瞬間的なレーザーを照射して加熱、点火し(これはレシプロエンジンのスパークプラグに例えられる)連鎖反応で燃料全体を燃やしつくす方式を高速点火という。中心点火は主に米国で、高速点火は主に日本で研究されている。
衝突核融合
加速器などによって原子を加速してやり、原子を直接他の原子に衝突させる事で核融合反応を期待する手法。
運動エネルギーによって一時的にクーロン力を超えるという点では熱核融合と同じである。
違うのはそこに至るまでの過程だけで、自然界ではこの手の反応の仕方はあまり無い事である。
こちらは主に、エネルギーを利用するための核融合炉の研究と言うよりも、原子核そのものの研究において核融合反応を起こさせるために使われる。
フィロ・ファーンズワース フューザー
正式名称を慣性静電閉じ込め核融合という。フィロ・ファーンズワースは発明者の名前。重水素の気体中に二重の球形のかご状の電極を配置し、外側を陽極、内側を陰極にして2万ボルト以上の電圧をかける。すると放電により陽極から重水素のイオン、つまり原子核が飛び出して内部に向かって加速し、陰極を通過してその中心で衝突、このとき核融合反応が発生する。核融合といっても、発生するエネルギーは投入するエネルギーより遥かに小さいためエネルギーを取り出すことはできない。しかし核融合反応は確実に起きており、反応に伴って中性子も発生する。このため簡易型中性子源として既に実用化されている。構造がきわめて単純なため小規模なものなら素人でも自作が可能で、実際高校生が制作した例
がある。米国ではフュージョニアと呼ばれるアマチュア研究家の間でこの種の装置を制作するのが流行しており、専門のサイト
も存在する。
ミグマ核融合
物理学者ボグダン・マグリッチ博士によって発明された核融合方式。この方式では燃料は粒子ビームの形で加速器から反応装置に供給される。反応装置内部は特殊な磁場配置になっており、粒子ビームは磁場によって曲げられ装置の中を何度も周回するが、このとき一回の周回ごとに粒子ビームが必ず装置の中心部を通過するようになっている。これにより周回を重ねるごとに粒子ビーム同士が装置の中心部で幾重にも交差するようになり、このときに衝突核融合が発生する。この方式では加速器も含めた装置全体がコンパクトになるという利点があるが、問題が一つあり、それは発生したエネルギーを融合反応で生じた荷電粒子を減速器で受け止めることで回収することを前提としているため、反応によって荷電粒子のみを生じる後述のD-3He反応を前提としているということである。そのため発明者はヘリウム3が豊富に存在する月面での運用を前提にしているようだ。研究開発にはアメリカ空軍が絡んでいるため現在の開発状況など詳細は不明である。
スピン偏極核融合
これは厳密にはこれ単独で核融合を起こすための手法ではないし、また現段階ではあくまで理論上の存在である。
原子核はもとよりその中の陽子や中性子も自転(地球とかの自転と同じようなもの)をしているが、これを何らかの方法によって制御し、一定の方向に偏らせる(偏極させる)と、核融合反応が起き易くなる、と言う理論。
これを利用すれば核融合反応を起こす条件を引き下げる事が出来るのではないかと言われているが、まだ理論研究の段階である。
ミューオン触媒核融合
こちらもスピン偏極核融合と同じく、既存の核融合反応をおきやすくさせるための補助的な技術である。
文字通り、ミューオンと言う物質を触媒とするもの。
ミュー粒子(ミューオン)のうち負の電荷を持ったものを重水素と三重水素にぶつけると、それぞれの原子核がミューオンとくっついて一時的に電荷が中性になったかのような状態に陥る。このため他の原子核が接近してもクーロン力が働かず、核融合反応が起き易くなると言う現象が起こる。
これを利用するとそもそも重水素と三重水素をプラズマ状態になるまで温度を上昇させてやる必要がなくなるので、トカマク型炉のような大規模で大掛かりな炉を必要としないというメリットが存在する。実際、この手法を使って行われている核融合実験では重水素と三重水素が液体の状態でも核融合反応を起こしている。
しかしながら、そもそもこの負ミューオン自体が自然界に存在するような物質ではないため、これを生成するための装置・エネルギーが必要になるという欠点を持っている。
ミューオンはくっついた水素原子が核融合反応を起こすと放出されまた別の原子核とくっつくという循環を繰り返すが、ミューオン自体が一定の時間で自然崩壊して消えてしまうため、継続的に負ミューオンを与えてやらないと反応が継続しない。
現段階の技術ではミューオン1個につき最高でも150個程度の原子核を反応させるに留まっている。ミューオンの生成のためのエネルギーを差し引いた上でエネルギーを黒字にするためにはミューオン1個あたり500回は反応を起こしてもらわないと採算が取れないが、核融合反応によって生成されるヘリウムは原子核の電荷が水素よりも大きいため、水素よりミューオンとくっつきやすく、そして一旦くっつくとミューオンをまず放出する事がないため、ミューオンによる触媒効果の「限界」を作っているという問題が存在する。
物質による分類
理論上のものや可能性の話を入れると非常に多くのパターンが存在するが、キリが無いのでいくつか主流のものを記述する。
D-T反応
Dは重水素、Tは三重水素を表す。
それぞれ水素の同位体で、重水素は原子核が陽子1個・中性子1個、三重水素は陽子1個・中性子2個で構成される。
核融合反応の中で最も反応の条件が緩く、起き易いため、現在主流として研究されている反応である。
重水素 + 三重水素 = ヘリウム4 + 中性子 + エネルギー
この反応によって放出されるエネルギーは同じ質量のウランによる核分裂反応のおよそ4.5倍、石油を燃やして得られるエネルギーの8000万倍に達する。
ここで発生する中性子は、炉壁の「ブランケット」と呼ばれる領域で受け止め、各種反応によって減速させる。この時中性子の持つエネルギーはブランケット部の熱エネルギーになり、核融合炉ではこの熱によって発電を行う。
しかし、この中性子線により炉自体を放射化してしまうと言う問題が存在する。
また、原料となる三重水素が自然界には殆ど存在しない物質であり、材料を得るための施設が必要であるという欠点もある。
全く存在しない訳では無いが、あるとしても大気上層の宇宙に晒されているような部分で僅かに存在するだけなので、採取して使うなんて事はほぼ不可能である。
さらに、この三重水素はこれ自体が放射性物質であり、扱いが難しいという問題もある。(三重水素の半減期はとても短い(12年)ので、核分裂によって生じた放射性廃棄物に比べたらずっとマシではあるが。)
現在の核融合炉研究などに用いられる三重水素は重水炉と呼ばれる核分裂炉(冷却材の水が重水素からできた「重水」である)において、重水素と中性子の融合反応によって作られたものが主に用いられている。
将来の核融合炉では、以下のような反応で三重水素が生成されることが計画されている。
※ リチウム6:原子核が陽子3個+中性子3個で構成されるリチウム。リチウム7は中性子4個バージョン。
リチウム電池のアレ。自然界では92%以上がリチウム7として存在する。
1の反応は正のエネルギーを放出するため発電効率を上昇させ、2の反応は中性子によって次の三重水素生産の反応に連鎖する。そのためブランケット部での最適なリチウム6とリチウム7の構成割合の模索がなされている。
D-D反応
先述の通りDは重水素の事。重水素同士の2個を反応させる。
原始的な恒星の内部で初期に起こる反応である。
この2つの反応に付随して、生成された三重水素が先述のD-T反応を起こしたり、ヘリウム3が重水素と反応してヘリウム4と水素原子核(陽子)を精製したりする反応が僅かに起こる。
見ての通り三重水素を使わない点が最大のメリットである。
重水素は比率としては0.015%と僅かではあるが自然界に普通に存在し、そしてそもそも主な水素の存在形態である水自体が自然界に無尽蔵に近いほど存在するため、重水素もほぼ無尽蔵に得られる。
もう一つ、発生する中性子線の危険性が殆ど無い事が挙げられる。
中性子自体は発生するのだが、中性子に持たされるエネルギーがD-T反応の物と比べて非常に低いため危険性が低い。
付随するD-T反応では高エネルギーの中性子線は発生するが、全反応数の1/400以下の割合であるため、やはり反応数と同数の高エネルギー中性子線が発生するD-T反応に比べて危険度は少ない。
デメリットとしては、この反応で得られるエネルギーはD-T反応のおよそ1/5程度である上に反応を開始するのに要する温度はD-T反応の10倍近くに達するため、現段階ではとても実用化には及ばない技術として考えられている(反応自体は実験的には成功しているが)。
陽子-陽子連鎖反応
普通の水素(軽水素)=陽子同士が直接核融合反応を起こすもの。
現在の太陽など、黎明期を脱した若い恒星の内部で主に起こっている反応である。
この反応は次の3段階に分かれて起こる。
※ ニュートリノ=1の反応において陽子が1つ中性子へと変化しているため、その副産物として放出される物質。
陽電子=通常の電子と逆の電荷を持つ電子。ニュートリノと同じく中性子変換の副産物だが、
普通の電子とくっついてすぐ消える。
この反応が上記のD-T反応やD-D反応と大きく異なる点は、反応が進行するスピードが非常に緩やかであるという点である。
1の水素が重水素に変わる反応は、1つの反応が完了するのに平均して10億年もかかる。
軽水素は重水素よりもさらに自然界に大量に存在するため材料の入手性と言う点では申し分がなく、さらにD-D反応よりも放射線に関する危険性が少ない(と言うか、全くない)のだが、この通り反応の回転率が非常に悪いため、人間の尺度で測れる規模の融合炉では実用化は非常に困難というのが現状である。
pB反応
Bはホウ素の事。原子核が陽子5個と中性子5~6個からなる原子である。
(中性子5個のものをホウ素10、6個のものをホウ素11。自然界ではおよそ8割がホウ素11)
見ての通り自然界に存在する物質だけで反応が構成されるため非常にクリーンである。
ホウ素自体も水素ほど無尽蔵には存在しないもののそれでも入手性は悪くなく、実用化されれば非常に期待ができる。
が、D-D反応と同じく反応を開始するための条件が格段に厳しく、実用化のメドが全く立っていない技術である。
D-3He反応
こちらも放射性物質などを全く生じない反応である。
クリーンさに加えて、D-T反応の5~6倍程度と比較的条件が緩く、放出されるエネルギーが荷電粒子である陽子と言う形であるためエネルギー変換が非常に容易と言うメリットを持っている。
ここまでだといい事尽くめの夢のエネルギーに見えるが、原料であるヘリウム3が地球上に殆ど存在しないと言う大きな問題を抱えている。ヘリウム自体が現在既に枯渇が心配されている資源である上、ヘリウム3はその中の0.0001%程度である。
人工的にヘリウム3を生成する事は出来るが、主にリチウムに中性子線を当てて三重水素を精製し(D-T反応の下の方参照)、その三重水素がベータ崩壊を起こすのを待つという手法であるためかなり気が長い。
※ ベータ崩壊:ベータ崩壊とだけ言った場合、中性子が崩壊して陽子とその他に変化する現象の事。
陽子が1個増えるので水素がヘリウムに変わる。
なお三重水素におけるベータ崩壊は、12.5年かけて三重水素の全体数のうちの半分がヘリウム3に変わる程度の速度。
少し前にヘリウム3が月面に豊富に存在する事が明らかになり、主に中国とかがこれを最終目的とした月面探査計画を推し進めているが、月からヘリウム3を持って帰ってきて…と言うのは現段階では残念ながら絵空事と言っても過言ではないほど、実用レベルには遠い。
常温核融合
上記に列挙した各種核融合反応はいずれも、超高温・超高圧と言う条件下でのみ発生する現象である。
これに対し、室温程度の温度(特に指定が無い場合、1気圧程度の圧力下)で発生する核融合反応の事を一般的に「常温核融合(反応)」と言う。
1989年にある2人の学者によってこの現象が確認されたと発表されたのが始まり。
それまでは完全な絵空事であり物理的にあり得ないとされていたが、発表の直前に絶対零度近くの極低温でしか起こらないと思われていた超伝導が常温近い温度でも起こる(高温超伝導)事が発見されており、世の中がこの手の「既存の物理法則を覆す現象」に対するブーム的な物が起こっていた事もあり、一時的に大きな期待を寄せられ盛んに研究されることになった。
常温核融合は存在するか
結論から言うと、「存在する」。
マスメディアの報道の仕方などが原因で世間的には誤解が広まっている部分がある(後述)が、常温核融合反応そのものは既に実在が確認されている。
「手段による分類」の一番下、「ミューオン(触媒)核融合」が現在発見されている常温核融合の原理で、室温の空気中に普遍的に存在する水素原子でも、ミューオン触媒によって核融合反応を起こす事が分かっており、実際に観測もされている。
実用に耐える範囲では
実在は確認されているものの、反応の起こる頻度と規模は極めて小さい。
常温常圧下では水素の密度は(通常の核融合の際のプラズマ化した水素に比べて)極めて低いため、ミューオンが照射されたとしても水素原子(分子)に当たる確率が低い。水素に当たっても分子数個が核融合しただけ、など極小規模の反応で終わってしまう。
これでも観測するだけなら可能だが、実用に耐える範囲(エネルギー源として利用出来るとか、肉眼ではっきり見えるほどの規模とか)の常温核融合を起こそうと思うと、極めて難しい。
十分な規模で反応が起こるには水素がある程度以上密集している必要があり、水素を密集させるには高温か高圧が必要である。
超低温に冷却すれば液体化する等で別の意味で密度が高まるが、いずれにせよ常温常圧ではない。
このように、「現象そのものは確認されているが、実用レベルには程遠い」と言うのが事実であるが、マスメディアが常温核融合について報道する際、明確に区別しなかった(出来る記者がいなかった)ため、半ば混同されたような形で世に広まる事になる。
そのため、一部では常温核融合と言う概念そのものがオカルト扱いされていたりする。
核分裂との違い
放射線を出さないから安全?
概要の項でも書いたとおり、既に実用化が行われている核分裂反応炉と違って「放射線を出さない」と言うイメージが多い。
しかし実際は、少なくとも現在研究の主流であるD-T反応は高速中性子を放出するため放射線は出る。ただし、中性子は十分に厚い壁により遮蔽が可能であるので、放射線の漏洩リスクは低い。
「放射性廃棄物を出さない」という言われ方をする事もあるが、これもD-T反応の項にある通り、直接的な残りカスと言う形でないだけで、放射化された廃棄物は出る。
実用融合炉では放射化しにくい材料を用いた炉設計がなされるとされる。
もちろんD-T反応で無い核融合反応、例えばpB反応やD-3He反応を使った核融合炉が実現すれば、文字通り放射能を持つ物質を全く生じないでエネルギーを取り出す事が出来るため全くの嘘ではないが、少なくとも現段階では絵空事である。
臨界事故を起こさない
臨界事故についての詳細は核分裂を参照。
核融合反応は少なくとも地球上の自然現象ではあり得ない高温高圧が必要であり、偶発的な事故によって反応が始まると言った事が原理上あり得ない。
核分裂に比べ、現段階で明確に存在するメリットと言える。
炉心溶融が無い
メルトダウンとも言う。
炉心溶融についての詳細は同じく核分裂を参照。
炉心溶融には冷却機能の異常によるものと反応の暴走によるものの2つがあるが、核融合においては原理上どちらのパターンも起き得ない。
核分裂と違って反応によって生まれるエネルギーと反応を開始するために必要なエネルギーが違うため、制御を誤ったとしてもその時点で反応が停止してしまうだけであり、連鎖反応による暴走を起こす事が無い。
また何らかの理由で温度が上昇したとしても、保持するエネルギーの総量自体が低いため炉壁を溶かしきる反応は起き得ない。
燃料が安価に手に入る
海水からの重水素精製、リチウムでの三重水素生産はすでに実用段階だが、現状はコストが高い。核融合炉が十分に普及し、需要が拡大すれば燃料費の低下が見込まれる。
どちらにしろ、D-T反応の項にあるとおり、現在目されている核融合炉の燃料は人工的に精製しないと手に入らない。
Vocaloid曲「炉心融解」との関連性
題名の曲では、「核融合炉にさ飛び込んでみたいと思う 真っ青な光包まれて綺麗」というサビ部分があるが、前々項目の通り炉心熔融が起きない。
炉心熔融が起きない事に関して指摘があり、作者はこの曲の解説で、
という趣旨の発言をしている。
神の火
小説などでは、核融合や核分裂を「神の火」と例える事が多々ある。
これは「人間の手にあまるもの」と言うニュアンスが最も強いが、核融合については、古来より太陽を神またはその化身として見る宗教的風習が世界各地に存在し、そしてその太陽が光り輝く原理こそが核融合だと言う理由もある。
例えばパール・バック著の小説「Command the Morning/神の火を制御せよ -原爆をつくった人びと-」。
これは第二次世界大戦中、アメリカが原爆を開発したマンハッタン計画を題材にした小説であり、その邦題に神の火と言う意訳が用いられている。砂漠の砂が緑色のガラスに変化するほどの超絶的な威力に苦悩し、実際に投下しないように奔走する開発者たちの半生を描いている。
他にも、高村薫著の小説「神の火」がある。
原子力発電所の技術者として日本に潜り込んだ、ソビエトの日本人スパイの足跡。
策略と裏切りの果てに、「神の火」をその手で解き放つために原子力発電所を襲撃する。
関連項目にもある、東方Projectの登場キャラクター・霊烏路空は、八咫烏と言う神の使いを取り込んでいる。
八咫烏とは中国や日本の神話において太陽の化身、または太陽の神の使いとされる存在である。
霊烏路空は八咫烏を取り込んだ事により、八咫烏が司る太陽の力=神の火=核融合を操る力を手に入れたという設定がある。
フィクションにおける核融合
漫画・ゲーム・アニメ等にも、何らかの動力源として核融合の概念が登場する作品が多々ある。
機動戦士ガンダム
- 「宇宙世紀」におけるガンダム(初代、Z、ZZなど)
宇宙世紀に登場する兵器は、小型車両やガンタンクのような旧式を除いて、殆どのモビルスーツが核融合炉を搭載している。この場合の核融合炉とは現実の核融合炉とは少々異なり、上記で言うところの「D-3He反応」を利用したものである。
先述の通りD-3He反応は燃料の調達に大きな難がある方式であるが、宇宙世紀では宇宙の航行技術が発達しているため、木星まで行ってヘリウム3を採取しているという設定になっている。(注:この設定が作られた当時は、月にもヘリウム3が多量に存在する事は判明していなかった)
炉の方式はトカマク式ではなく、作中ではミノフスキー粒子を使った「ミノフスキー=イヨネスコ型熱核反応炉」と呼ばれる方式の炉である。(もちろん架空の設定です)
ミノフスキー粒子 … きわめて強い電荷を持ち、質量が殆ど無い粒子。一定の濃度になると電磁作用によって規則正しく整列する性質を持ち、その整列によって構成されたミノフスキー粒子の「壁」はレーダーの電波はおろか核融合のプラズマさえも遮断する。
- 「アフターコロニー」「アフターウォー」におけるガンダム(ガンダムW、ガンダムX)
明確な描写が何も無いが、技術レベルや出力の規模などを考えると恐らく宇宙世紀のMSと同じく核融合を使っているものと思われる。 -
「コズミック・イラ」におけるガンダム(SEEDシリーズ)
- C.E.71
殆どの兵器がバッテリーで稼動しており、ごく一部の特殊なMSのみプルトニウムを使った核分裂炉で稼動している。戦艦レベルではレーザー核融合で動くものもある。なお、核分裂エネルギーで動くMSは例外なくニュートロンジャマーキャンセラーを装備している。
注:ニュートロンジャマーキャンセラーは、ニュートロンジャマーの核分裂阻害効果を無効化するシステムである。 - C.E.73
核エンジンとデュートリオンエンジンのハイブリッドで動作する「ハイパーデュートリオンエンジン」が登場するが、こういった機体にはやっぱりニュートロンジャマーキャンセラーが装備されているので、核分裂エンジンであることは間違いないだろう。
このハイパーデュートリオンエンジンは最新鋭のシステムのようで、これを搭載するのはザフト軍のデスティニーガンダム及びレジェンドガンダム、そしてクライン派のストライクフリーダムガンダム及びインフィニットジャスティスガンダムのみである。
- C.E.71
- 「正暦」におけるガンダム(ターンA)
発掘兵器のうち、「カプル」や「ボルジャーノン」などの宇宙世紀に登場したモビルスーツについては、宇宙世紀のもの同様に「ミノフスキー=イヨネスコ型熱核反応炉」を搭載している。
それ以外のモビルスーツ、例えばターンAガンダムについては「DHGCP」と呼ばれる、縮退炉の一種が搭載されているが、その他の兵器は特に設定が無い。過去の文明が一度全て砂に帰っているという点を考えると、正暦で開発された兵器は核融合炉ではなくバッテリーなどで動いているものと推測される。
東方Project
登場キャラクターの一人、霊烏路空が「核融合を操る程度の能力」を持っている。
古来より「神の火」と呼ばれてきた太陽の力、すなわち核融合の力を、天を司る力を持つ神・八坂神奈子によって与えられた。
どの反応を用いているかは分からないが、付随する諸問題は神様パワーで何とかしていると思われる。
詳しくは霊烏路空を参照。
関連項目
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読み:カクユウゴウ
初版作成日: 08/08/17 00:30 ◆ 最終更新日: 12/05/16 23:54
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