サクランは既に少しアスランしている……ではなく、「アスランは既に少し錯乱している!」とは、アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第37話『雷鳴の闇』における、レイ・ザ・バレルのセリフ。
語呂がいいんだか悪いんだかわからない独特のリズム感が人気のセリフ。「少し既に」ではないので注意。
概要
ザフト・ジブラルタル基地にてギルバート・デュランダル議長からこれまでの任を称えられ、最新鋭機を受領したアスラン・ザラとシン・アスカ。だがアスランの心中では、デュランダルに対する不信感が渦巻いていた。
その後、ミーア・キャンベルと再会したアスランは、レイ・ザ・バレルとデュランダルがアスランを不穏分子と判断し、処分を検討していることを伝えられる。
――そうか、やはり駄目かな、アスランは
――んん…彼もまた戦士でしかないのにな。余計なことを考えすぎるんだ
それがせっかくの力を殺してしまっている
――はっ、それは厄介だね。罪状はある。あとは任せていいか?
アスランは遂にザフト脱走を決意する。立場に拘泥するミーアを残し、成り行きからメイリン・ホークの協力を得たアスランは、グフイグナイテッドを奪い逃亡を計る。しかしレイに発見され、あまつさえメイリンごと銃撃されたことで、アスランはやむなくメイリンをコクピットに同乗させる。
聞こえたなシン。ではそういうことだ
でもそんな……
こんなことで、議長とそれに賛同する人々の想いが無駄になったらどうする!
今ここでの裏切りなど許せるはずもない
覚悟を決めろシン!俺達で防ぐんだ!
スクランブルしたシンのデスティニーガンダムとレイのレジェンドガンダムはアスラン機を捕捉し、戦闘に入る。
何でこんなことになるんだよ!何であんたはっ!!
そんな手は通じない!見苦しいですよアスラン
やめろ!俺はこのまま殺されるつもりはない!聞けシン!
議長やレイの言うことは、確かに正しく心地よく聞こえるかもしれない!
だが彼等の言葉は、やがて世界の全てを殺す!俺はそれを…!
この間のフリーダム戦以来、シンとアスランの関係は過去最悪に冷え込んでいた。しかし、それでもシンにとってのアスランは仲間であり、敵ではない。ましてやアスランの事情もわからぬ中、一方的に撃墜することは出来なかった。
シン聞くな!
アスランは既に少し錯乱している!惑わされるなシン!
シン!どうしても討つというのなら
メイリンだけでも降ろさせろ!彼女は……
「敵」なんだ彼は。彼らは!
議長を「裏切り」、我らを「裏切り」、
その思いを「踏みにじろう」とする。それを許すのか?
お前は言ったろ?
そのためなら「どんな敵とでも戦う」と!
レイにとって、デュランダルは家族のような、もしくはそれ以上の存在であった。その彼の目指すべき世界の障害となるものは、全て排除すべきものなのである。ただでさえアスランは障害の一つであるアークエンジェル隊に肩入れしすぎており、実際に危うい場面も何度かあった。万が一、アスランがアークエンジェルと合流し、共闘されるのは何としても避けねばならない。
加えてシンがアスランに説得され(惑わされ)、デスティニーを撃墜されたり、最悪の場合アスランについて行ってしまうことも避けねばならない。シンとデスティニーはデュランダルの計画における大きな駒戦力であり、それを抜きにしたレイ個人の考えとしても、シンは大切な親友なのだ。
そしてレイの言葉は、立て続けに大切な人を失い、アスランとの関係悪化によって疲弊していたシンにとってはまさしく「正しく心地よく聞こえる」言葉だった。親友の言葉と、抱えたトラウマが、シンを心理的に盲目にさせる。
……くっそぉぉぉっ!
あんたが悪いんだ……
あんたが!あんたが裏切るからっ!!
……シン!!
その後
結果、シンはメイリンごとアスラン機を撃墜する。SEEDから覚めたシンは、レイの労りにもまともに答えられず、ただ涙するしかなかった。デスティニーとレジェンドの初陣としては、大変後味の悪いものになってしまった。
ジブラルタル基地帰投後、デュランダルへの報告の席で、レイとデュランダルは巧みにシンを懐柔する。しかしレイの思惑通りとはいかず、この件はシンの新たな心の傷となり、マユ・アスカの死と同じくらい夢に見てうなされるようになってしまう。そして最終局面においてその歪みは噴出し、再会したアスランに一喝されることになる。
――この、馬鹿野郎!
本当に錯乱していたのは誰だったのか
何故レイは「錯乱している」の前に「少し」と付け加えたのか。「自軍の兵士たちを張り倒し、データベースに侵入していたオペレーターと共にMSを奪って脱走した」アスランの行動は「少し」どころではないだろうに……。
アスランの口下手さが極まっている所も見どころといえる。「議長やレイの言うことは、確かに正しく心地よく聞こえるかもしれない!」はまだいいのだが「だが彼等の言葉は、やがて世界の全てを殺す!」という妙に壮大かつ具体性のない非難の言葉は、当時の視聴者からよく突っ込まれた。単に「彼らの言葉は嘘だ!」とか「俺は彼らに消されるかもしれないんだ!」などのシンプルな訴えでも良さそうなものだが、殺されかかっている状況でこのワードが出てきてしまうアスランのセンスたるや……。
伝える時間も余裕もない緊迫の状況下である以上仕方がないのだが、冷静に見てみると言葉回しのおかしさがジワジワ効いてくるシーンでもある。
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