アントニオ・ネグリ(1933-)とは、イタリアのマルクス主義思想家である。
概要
マルクス主義思想家で、テロ組織との関連で嫌疑をかけられ逮捕された経緯を持つ。活動家としても知られる。2008年に講演のため訪日を予定していたが、事実上入国拒否される。ジル・ドゥルーズやフェリックス・ガタリとも親交があり、思想的に強く影響を受けている。若い頃、バールーフ・デ・スピノザの神学政治論をテーマにした『野生のアノマリー』を出版している。これはスピノザを革命的な視点から読み直したもので、のちに「マルチチュード」の概念につながっていく。
『<帝国>』、『マルチチュード』
ネグリを有名にしたのが、2000年に出版したマイケル・ハートとの共著『<帝国>』である。この本は、2001年の9・11アメリカ同時多発テロ事件を予言するものだと受け取られ、世界的なベストセラーとなった。その続編として、2004年に『マルチチュード』を出し、グローバリゼーションの時代の左翼思想を展開している。
『帝国』は、現代世界の状況を「グローバリゼーション」にあると分析し、トータルに論じている。グローバリゼーションとともに進行している事態、アメリカを中心に再編されつつある政治の方向性を、左翼の観点から定式化している。
精神分析家で同じマルクス主義思想家のスラヴォイ・ジジェクはこの『<帝国>』を、疑問符付きで「現代の共産党宣言」と名付けた。今までの資本主義とは全く違った形態の資本主義が出現している。それにどう対抗するかを、ネグリはハートと共に呼びかけている。
ネグリとハートが現代における革命的な主体と考えたのは、従来の「プロレタリアート」ではなく、統一化されることのない複数の多様な「マルチチュード(多数性・群衆性)」である。この「マルチチュード」を基盤として、いかにしてグローバルな権力に対抗し、民主主義の可能性を開いていくか。こう問いかけるのが続編として書かれた『マルチチュード』である。
『マルチチュード』でネグリとハートは、現代世界における戦争状態を分析し、それがいかに民主主義を脅かすかを明らかにする。それを受けて彼らは「マルチチュード」に議論を移し、真の民主主義への提言を行なっていく。しかし、『マルチチュード』の最後が「愛」で終わる点は、評価が分かれる。
関連動画
関連商品
関連項目
- 2
- 0pt