テロとは英語の「テロリズム」(Terrorism)を略した和製英語。
政治的な目的を達成するために暴力および暴力による脅迫を用いることを言う。
曖昧さ回避
概要
何らかの政治的な目的を達成するために、不法な暴力や脅迫を用いることを言う。通常、達成しようとする目的を同じくする集団・組織が主体となって行われる。経済的な利益や宗教的信念が目的に絡んでくることも少なくない。
政府関係者などの重要人物・軍関係者を狙うもの、警備の薄い一般人を狙うものがある。
個人による営利目的の犯罪や単純な殺意だけの無差別殺傷事件、国家が合法的な手続きに則って行う行動等は、通常「テロ」とは呼ばない。しかし国家機関が秘密裏にテロ行為を行ったりテロ組織を支援するケースは存在する。
テロリズムは語源(Terror:恐怖)の通り、暴力による恐怖を政治的な目的のために利用するため、大衆の間に恐怖感を植え付けることが最初の目的となる。爆発物の使用、要人の誘拐・暗殺、交通機関などインフラへの打撃、無差別殺傷などが典型的な手段である。核・生物・化学・放射線など大量破壊兵器の使用や、シンボリックな建物への攻撃は社会にパニックを惹起する上で効果的であり、地下鉄サリン事件や9.11アメリカ同時多発テロなど前例がある。
特性
テロを実行する側は攻撃の場所とタイミングについての主導権を持っており、しばしば国家レベルの支援を受けているなどさまざまな優位点を持っている。そのようなテロ行為およびテロ組織・テロリストには通常の治安犯罪に当たる警察力・国家間戦争を前提とした正規軍ともに対抗しきれない部分がある。そのため第二次大戦後、各国は対テロ任務を遂行するための専任の特殊部隊や体制、装備、戦術などを培ってきた。その過程でしばしば国家機関の側が暗殺などテロリスト側と同様の手法をとったケースもある。
民間人やその活動に紛れての攻撃や危険物設置・逃走も容易という点もテロリスト側の強みであり、テロが頻発する地域ではいつどこで何がどうなるか分からない…といった疑心暗鬼、精神攻撃を強いることができる。
近年
近年、世界のグローバル化が進むとともに国境を超える人間の移動も多くなり、情報をやり取りする方法も増えたため、中東のテロ組織がインターネットを通じて活発に情報を発信し、影響を受けた先進国の人間がテロに加担するといった事態も発生するようになった。また、戦争などによって故郷を追われた難民を装ってテロリストが入国するなどの事態も発生している。これらの結果、先進国への移民・難民問題は既存の問題に加えてテロという新しい要素も含むようになってしまい、より解決が難しくなっている。
犯行声明・要求
テロが政治的な目的を達成するために行うものである以上、テロの実施に前後してテロ組織は犯行声明を出し、政治的要求を行うか繰り返すのが常套手段である。あるいはハイジャックや立てこもり事件の際には、人質の解放と引き換えに政治的要求をすることがある。
この際に出される主な政治的な要求には、身代金、捕まっている指導者や仲間の解放、駐留軍の撤退などがある。
政府の対応
映画などを見た事がある方は何となくお察しがつくかもしれないが、要求される政府側は基本的にテロリストの要求を飲まない(解決や突入までの時間稼ぎとして飲むフリをすることはある)。
「人質を見捨てるのか?」「要求を飲むまで、さらなるテロが発生するのではないか?」と感じる方もいるかもしれない。しかし、要求を飲んでしまうと逆に「テロに屈する国」という印象を与えてしまい、さらなる政治要求を通すためのテロが誘発されてしまう。百歩譲って仮にそのテロ組織が満足して次のテロを諦めたとしても、模倣犯が現れる。結果的に多くの人間、特にそれを支払った国や企業の関係者が、テロリストによって命を危険に晒されてしまう。
その当時はどこの国も割と屈しがちだったが、1977年のダッカ日航機ハイジャック事件のように「一人の命は地球より重い」と言って犯人の要求を飲んで服役囚を解放してしまったことは現代では批判の対象となっている。
立てこもり・ハイジャックなどへの対応
もちろん政府側も全く手を打たないわけではなく、立てこもり・ハイジャックが発生したときには特殊部隊などによる人質救出作戦などが行われる。
テロ対策
テロを起こさせないための基本対策としては以下のようなものがある。
- 不審者・不審物の警戒。
- 入場者の身分証確認、所持品検査、金属探知機やX線透視を用いた検査。
- 爆発物などを検知する探知犬やセンサー等。
- 危険物、爆発物・爆薬などの原材料となる物品の販売制限。
- レンタカーなど、重車両などの貸し出しの制限。
- 車両による突入・突破などを物理的に不可能とする強固なバリケード、動線の強要。
- 銃火器以上で武装した警備、狙撃要員、特殊部隊の配置。
- 重要人物の行動、宿泊部屋、移動ルートといった攻撃に有利な情報を与えない。
- 重要人物の滞在・宿泊する施設や部屋、飲食品等(毒殺)、車両等の警備・点検[1]。
- 警備要員・関係要員の身元検査。
- 制止、口頭による警告、銃口を向ける、威嚇射撃、射殺。
一部は通常犯罪とも共通するが、人手不足や装備不足、コストの問題から行えない場合もある。
いつどこでテロ攻撃を起こすかといった点においてはテロリスト側が主導権を持っている点が厄介であり、抑止力・早期警戒・情報収集・有利な情報を与えない・物理的に不可能にするといった方法を取るしかない。そのため、複数犯での実行、自爆テロなど生存や逃走を目的としていない場合は取れる選択肢が増え、非常に厄介。テロリストが必ずしもテロリストっぽい見た目で来るとは限らず、民間人も多ければ発見や返り討ちは容易ではない。
テロと気づいた時点で既にテロが実行中・実行された後の可能性が非常に高く、情報が錯綜し無防備に毒ガスや危険物のあるエリアに飛び込んでしまう可能性もある。
最終手段としてテロリストを射殺するという手段もあるが、射殺してしまうと犯人の知っている重要情報、黒幕や指示した人物、武器の出所などが失われてしまうといった欠点はある。また、殉教者として祭り上げられてしまうこともある。日本の場合、テロリストであっても射殺すれば各所から批判を受けるのが避けられない。1970年の瀬戸内シージャック事件など、犯人を射殺した隊員が面倒な団体に殺人罪で告訴され実名・顔写真付きで吊るし挙げられた例もあり、それ以来射殺は割と慎重になっている部分もある。(参考:瀬戸内シージャック事件 - Wikipedia)
特殊部隊の設置
テロへの恒常的な備えとして、対テロ用の特殊部隊を設置し、テロ発生時には出動させるというものがある。
主な対テロ部隊としては日本の「SAT」、アメリカの「デルタフォース」、イギリスの「SAS」、ドイツの「GSG-9」などがある。
これらの部隊では顔を覆面で隠すのが普通となっているが、これはテロ組織を相手するのにあたって隊員の個人情報を守る措置の一環である。個人情報が漏れた場合、隊員の家族まで危険にさらされてしまう。
日本のテロ対策と批判
近年の日本は、90年代のオウム真理教の一連のテロを最後として、大規模なテロは発生していない。また、銃規制も厳しく、銃器を使ったテロも起こしにくいと考えられている。サミットなどの重要なイベントの際には開催地に全国から警察官を呼び寄せ厳重な警備も敷いている。
しかし、むざむざと警護対象を暗殺されるという失態を犯した安倍晋三銃撃事件もあり、日本のテロ対策には批判が集まることがある。
一部のテロ訓練は無差別殺傷事件対策を兼ねてよく行われているが、「そんな都合の良い行動をする犯人は居ない」「とっくに逃げてる」「警察側が死んでる」「筋書き通りの出来レース」といったツッコミも珍しくない。
特に銃や武器・犯罪・ミリタリーに詳しくない方からぼくのかんがえた「××すればいいじゃないか」という意見もあるが、裏を返せば犯人側有利な側にも言えてしまうため万能ではないか、技術的には可能でもそれができれば苦労しない。
もっとも、ガチで武装した複数のテロリストに対して交番のおまわりさん1~2人でできる事は少ない。
重武装しづらい
海外などは空港・政府施設・軍事施設・各種重要施設などを武装した警察官がサブマシンガンやアサルトライフル丸出しで警備している場合も珍しくないが、日本でそれをすれば(テロが起きた後でもない限り)クレームを入れる人間は必ずいる。[2]など後手後手の前例主義になる可能性がある。
※厳密には装備として拳銃以外にも連射可能な火器もあるが、表立って装備されておらず厳重な保管庫や金庫に取り出しに行かねばならないなど即応性はない。(大勢の人質を取られたり、有利な位置に陣取られる、突破困難なバリケード等を構築されてしまう可能性もある)
民間人が狙われるもの
武装や防護のない一般人(ソフトターゲット)を狙ったテロにおいては上記の対策では手が回りづらく、警備が手薄な民間人やイベントを狙えば良いため完全に防ぎようがない。パニックとなった一般人が将棋倒しなどの雑踏事故になったり、閉所の混雑で身動きが取れない点を狙われる場合もある。
民間におけるテロ対策
映画の主人公のように武装した華麗に制圧するどころか、丸腰では武装した相手に民間人が逆襲できるチャンスはない。仮に武器となるものがあっても足がすくむ、腰が抜けてしまい戦うどころではなくなる、躊躇ってしまうのがむしろ普通である。俺なら勝てると自信があっても逃げてほしい。
長くて読みづらい方は「周囲をよく見る、ヤベー奴や物がいたら逃げる」と覚えておくと良いだろう。
- 「自分だけは大丈夫」と思わない。他人事としない。
- 周囲を定期的に確認し、不審者や行動、不審物といった兆候を疑う、発見する。
- 通報する。可能な限り正しい情報を伝えればベスト。
- 逃げる、姿勢を低くする、脅威や危険地域から遠ざかる。
- 頑丈な物陰に隠れる、姿を隠す。(狙われない、流れ弾や爆発物の威力を減衰させる)
- 予防的な対策として、海外旅行などは治安・情勢を調べておく。
歩きスマホをしていれば異常を発見するのが遅れるのは言うまでもないし、のんきにテロ現場を動画撮影していれば流れ弾や爆発・有毒ガスなどに巻き込まれる可能性が高まるだけであるでメリットがない。
もちろんテロ対策が役に立つ事態が来ないまま「お前考えすぎw」「厨二病乙」と爆笑されるなど、何も起きないのが一番である。
とはいえ対策の一部はひったくりや強盗・強姦・無差別殺傷事件といった犯罪対策にも流用できるため全く無意味ではないし、殺された側からすれば凶器と死因の違いくらいでテロも無差別事件も関係ない。自分には関係ないとテロ対策を笑っていたら、テロ以外の犯罪で死にましたという最高につまらないジョークになる可能性もある。
銃の所持が認められる国であっても、(法務執行機関以外は)大都市などは銃の携帯が制限されている場合が多く、銃が普及している時点で強力な火器を持っている危険性が上がるなど個人で有効に反撃できるかといえば微妙。
日本のテロ
幕末には尊王攘夷などを目的とした要人暗殺のテロが多発した。大老井伊直弼が暗殺された桜田門外の変などが典型的な例である。
太平洋戦争後には日本赤軍や連合赤軍など過激派左翼が暴力革命の一環として多数のテロを起こした。特に60年代から70年代にかけてはよど号ハイジャック事件、あさま山荘事件など有名なテロ事件が発生した。
90年代に入るとオウム真理教によるテロが多数発生し、特に化学兵器を用いた地下鉄サリン事件などは世界からも注目を集めた。
しかし、昭和後期から平成の時代において暴力行為を伴うテロは民衆の支持を得ることは難しく、少なくとも明らかに暴力を伴うようなテロ行為は近年ではめったに発生しなくなった。
2000年代に入るとイスラム過激派の国際的テロ組織アルカイダなどの脅威が伝えられ、日本でも警戒が強まっている。2016年現在、日本本土ではイスラム過激派のテロは確認されていないが、中東に旅行していた日本人が現地武装勢力に誘拐・殺害されてテロ被害にあってしまうという事例は複数存在している。また、2016年7月にはバングラデシュで飲食店が襲撃されテロリストが立てこもった事件で7人の日本人が殺害されるというテロも起こった。
スラングとして
「テロ」という語はネタとして、人騒がせな行為や過激な表現行為への形容として(しばしば自嘲的にも)用いられることがあり、ニコニコ動画にもそれ関連の動画がいくつか見つかる。
その他、直接的な暴力を用いるわけではないが、多くの人々に危害・損害をあたえるような行為を非難の意味をこめて「テロ」と呼ぶケースも少なくない。しかしこういったスラングの乱用は、しばしば議論に曖昧さや偏った印象を与え、言葉の重みを損なうこともあるため、使いすぎには注意。
(例)バイトテロなど
テロを描いた作品
主人公、主人公サイドがテロリストの作品
- アカメが斬る!
- 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
- 機動戦士ガンダムSEED
- 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
- 機動戦士ガンダム00
- コードギアス 反逆のルルーシュ
- 残響のテロル
- 新機動戦記ガンダムW
- 沈黙の艦隊
- 東のエデン
- ファイナルファンタジーVII
- 未来日記
テロとの戦いを描いた作品
- 機動戦士ガンダム0083
- 機動戦士ガンダムUC
- 鉄のラインバレル
- 劇場版名探偵コナン
- 攻殻機動隊シリーズ
- PSYCHO-PASS サイコパス
- 東京ESP
- 鋼の錬金術師
- 輪るピングドラム
- メタルギアソリッドシリーズ
- るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
- フルメタルパニック!
- 砂の薔薇
関連動画
関連生放送
関連項目
実際のテロ |
組織・関連種類 |
脚注
- 13
- 0pt
- ページ番号: 4266949
- リビジョン番号: 3256861
- 編集内容についての説明/コメント: