クロード・レヴィ=ストロース(1908~2009)とは、構造主義に属する文化人類学者である。
概要
フランス国籍を持つユダヤ人の家に生まれた(出生地は一時的に滞在していたベルギーだが)。モーリス・メルロ=ポンティ、シモーヌ・ド・ボーヴォワールらと教育実習を同じくし、親睦を深めたというエピソードが残る。文化人類学者としてのみならず、哲学における構造主義を代表する存在として、その名を残している。
構造主義は当時流行していた現象学、実存主義といった私の意識を出発点とする思想と異なり、人間の行動は無意識的な構造によって支配されているというのが基盤にある。レヴィ=ストロースも実存主義に属するジャン=ポール・サルトルと人間主義論争を起こし、サルトルの構造主義を超・理性主義とする批判に対して実存主義をヨーロッパ中心主義であると批判している。
レヴィ=ストロースに影響を与えたのは言語学者フェルディナン・ド・ソシュールの音韻論である。人間が発せられた言葉を聞くとき、音そのものではなく対立関係、すなわち弁別的特性の組み合わせて聞き取り、それを構造化する、というものである。そこでレヴィ=ストロースはこれを民族学にも応用し、対立関係を基に構造分析を行っていった。
そしてレヴィ=ストロースの名前を最も高めたのが、その研究方法を親族構造の研究に応用したことである。近親相姦の禁止、すなわちインセスト・タブーはすべての民族に存在するにもかかわらず、その範囲は民族によって異なり、当時民族学の最大の謎だったのである。特に交叉イトコ婚が奨励される民族について謎だったのであるが、レヴィ=ストロースは遺伝学的には説明がつかないそれを、女性を社会的に交換していく規則で、無意識的な「構造」が存在すると唱えたのである。
それこそがカリエラ族の研究を通して見出した交換のシステムで、詳細は省くが限定交換のシステムと交叉イトコが父方と母方で区別されて一方がタブーになり一方が奨励される一般交換のシステムの両方が存在すると考えたのである。
こうしてレヴィ=ストロースは、ソシュールのシニフィエとシニフィアンの関係は恣意的なものであるという思想と同様、タブー事態に根拠はなく、構造の中にいる人々は構造を意識しない、という結論を、対立する関係を取り出し科学的に分析した結果、出した。さらに、これまで思想や哲学を支配してきた思考をヨーロッパ中心主義と批判し、「未開」とされてきた人々の思考スタイルを「野生の思考」としてとりだしたのである。プリコラージュな思想とヨーロッパ的な思想の間に価値の上下はなくその文化という全体の中で意味を持っているという文化相対主義は思想界に衝撃を与え、「主体」、「真理」といったものに疑問符をつける思想が登場する先鞭を打ったのであった。
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