スターリング・サブマシンガン(Sterling submachine gun)とは、イギリスが第二次世界大戦中に設計し、戦後に運用した短機関銃である。
概要
スターリング・サブマシンガンは全長は480mm(ストック折りたたみ時)もしくは690mm(ストック展開時)。重量は約2.7kg。使用弾薬は9mmパラベラム弾で、左側面から差し込む水平式の34連箱形弾倉を備え、発射レートはステンガン(500rpm)より少しだけ高い550rpmだった。
設計と開発自体は第二次世界大戦中から開始されており、大戦末期には試作型の試験運用も行われたが、大戦中は量産性の高いステンガンの生産が優先されたため、制式採用は1953年にまでずれ込むこととなった。採用後は一般兵の他にSASなどにも配備され、フォークランド紛争などで使用された。
元々は1944年にイギリス軍が「重量2.7kg以下」「9mmパラべラム弾使用」「発射レート毎分500発以上」「およそ90m先の30cm四方のターゲットに対し、セミオートで5発撃って全弾命中する」を新型短機関銃の要求性能として発表。
これに応える形でスターリング社が前々から開発していたパチェット・サブマシンガンを提出する。イギリス軍はこの銃の性能の高さに気付き、トライアルのために120丁の生産を要求、そのうちの一部がマーケット・ガーデン作戦に投入されたが、結局は大戦中に採用されることは無かった。
終戦後も、大戦中に大量生産(400万丁以上)したステンガンが有り余っていたことから、イギリス軍は短機関銃の交換に積極的でなかったが、1947年にステンガンとの比較のために行われたトライアルでパチェット・サブマシンガンが非常に優秀な成績をおさめたため、1951年には制式採用することが決定された。
この後、改良が加えられてスターリング・サブマシンガンとなり、イギリス軍では1953年からステンガンを交換する形で配備が開始された。イギリス以外にもオーストラリアやカナダなど英連邦の各国に採用され、全部で40万丁ほどが生産されたと言われる。さすがに現在では大半が退役しているが、一部では現役であり、このためスターリング・サブマシンガンの部品生産は続けられている。
ちなみに、外装をSF風に仕立てたスターリング・サブマシンガンがスターウォーズのブラスターだったりする。
スターリング・サブマシンガンはボルトに付着した汚れを自動で排出する機構や、独立したピストルグリップ、弾倉を握ってもジャムを起こさない堅牢さ、着剣装置が標準装備など、ステンガンと比較すると性能的に非常に優れていた。
その一方で、ステンガンによく似た形状をしているが、これは形状を似せることで機種転換を容易にする意図や、可能な限りステンガンの生産設備を流用してコストを下げることを目的としていた。
このため、銃に対して関心の薄い人たちからはたびたびステンガンと間違われていたりする。スターリング・サブマシンガンとステンガンの見た目上の違いをあげれば以下の通りとなる。
- スターリング・サブマシンガンは独立したピストルグリップを備えるが、ステンガンはストック一体型のグリップである。
- スターリング・サブマシンガンの弾倉は湾曲しており、ステンガンの弾倉は直線型である[1]。
- スターリング・サブマシンガンのストックは基本折り畳めるが、ステンガンのストックは基本折り畳めない。
ステンガンは生産性が良い短機関銃、スターリング・サブマシンガンは性能が良い短機関銃と覚えておこう[2]。
バリエーションがいくつか存在し、イギリス軍向けのサプレッサーを搭載したスターリング-パチェットMk5や、7.62x51mmNATO弾を使用するスターリング7.62などが存在する。
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関連項目
脚注
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