北海道南西沖地震(ほっかいどうなんせいおきじしん)とは、平成5年(1993年)7月12日(月)午後10時17分に、
北海道奥尻島北西沖の日本海を震源として発生したマグニチュード7.8の大地震である。
大津波により大きな被害をもたらし、気象庁により「平成5年(1993年)北海道南西沖地震」と命名されている。
概要
地名は全て当時のものである。
- 平成5年(1993年)7月12日22時17分発生
- 震源:北海道奥尻島北西約70kmの日本海(北緯42度46.9分、東経139度10.8分)
※震源域は東西約200km、南北約100km - 深さ:34km
- 規模:マグニチュード7.8
- 推定最大震度:6(北海道奥尻町) ※地震計がなかったため町職員による推定
確定最大震度:5(北海道小樽市、寿都町、江差町、青森県深浦町) - 津波:最大16.8m(奥尻町初松前地区)
※北海道・東北の日本海沿岸に大津波警報。
北海道・東北の太平洋沿岸に津波警報。
翌日0時12分には新潟県から福井県の日本海沿岸にも津波警報。
オホーツク海沿岸、中国地方の日本海沿岸、九州の西海岸に津波注意報。 - 最大余震 平成5年(1993年)8月8日4時42分発生
マグニチュード6.5、奥尻町で震度5 江差町で十数cmの津波観測
※北海道の日本海沿岸に津波注意報。
震源域はユーラシアプレートと北アメリカプレートのプレート境界。日本海側で近年発生した地震としては最大規模である。
津波や土砂災害により、奥尻島や北海道・青森の日本海沿岸で230人の死者・行方不明者を出した。
同年1月の釧路沖地震(M7.5)、翌年10月の北海道東方沖地震(M8.2)、12月の三陸はるか沖地震(M7.6)、そして95年1月の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災=M7.3)など、このころ頻発した大規模地震がその後の地震・津波対策に大きな影響を与えた。
地震発生後5分後の22時22分、北海道日本海沿岸に「大津波の津波警報」(いわゆる大津波警報)を発令。(東北の日本海沿岸にも22時25分発令)。22時24分にはNHKの北海道ローカルで津波警報発令が報道される。(NHK首都圏は政見放送中で、22時27分の緊急警報放送までは字幕スーパー対応)しかし地震発生後2~3分で、震源域に含まれる奥尻島の西側に津波の第一波が来襲。奥尻島は回りこんできた津波や北海道から反射してきた津波など、あらゆる方向から1時間で10回以上の大きな津波に襲われた。また、北海道南西部の日本海沿岸にも最短5分で津波が到達し、大きな被害をもたらした。
地震当時、奥尻島にはNHKのスタッフ5名が番組制作のため入っており、地震直後ただちに取材を開始。翌朝5時前にはNHKのヘリが撮影した燃え盛る現地映像のVTRが放送された。
津波の高さは奥尻島で最大16.8m、遡上高は30m以上と推定。奥尻島は83年の日本海中部地震で4.5mの津波に遭遇しており、防潮堤などの対策はとっていたが、防ぎきれる規模ではなかった。北海道南西部の沿岸でも広範囲で5m~8mの津波が押し寄せたとされる。(いずれも検潮所で測定可能な値を大きく超えており、正確な高さは不明)本州でも秋田県能代で72cm、石川県輪島で97cm、ロシア・ナホトカでも5cmの津波を観測した。
その後
- 気象庁は津波予報の迅速化を進めており、80年代は地震発生から15~20分程度要した津波予報が、本地震では地震から5分後に発令、同7分後に発表と大幅に迅速化された。しかしそれでも奥尻島をはじめとする北海道南西部が警報発令前やほぼ同時に大津波に襲われたことで、津波予報の限界を認識しつつも、さらなる津波予報の迅速化が図られることとなった。現在は緊急地震速報のデータも利用し、最短1分程度で津波予報が発令されたケースもある。
- 当時の大津波警報は「高いところで3m以上」の1段階で、当時の津波予報は気象庁の発表した文面をそのまま読み上げていた。そのため、本地震でも津波は3m以上ではなく3m程度との誤解を呼び、3mなら堤防があるから大丈夫と思いこんで避難をせず、被害を受けたケースもあった。堤防が高くなり、より大きな津波を防げるようになったものの、逆に堤防を越える津波が来た場合に避難が遅れ被害が拡大するケースが出たことで、より細かい津波予報が求められるようになった。その後、大津波警報は3m、4m、6m、8m、10m以上の5段階に細分化された。また津波の高さだけでなく「場所によっては予想より高い津波が襲う」「津波は第1波よりも第2波以降が高くなることもある」「津波は何回も襲う」といった文言が追加された。これらは現在津波警報の時に読みあげられる。
- しかし、予報の迅速化は精度とトレードオフの関係にある。2011年の東北地方太平洋沖地震では大津波が押し寄せると言う予報自体は迅速であったものの、精度(予想される津波の高さ)は岩手県・福島県では当初3mと予報され、25分後に6m、更にその14分後に10m以上へ予報が修正され、避難行動にも影響を与えるなど、津波予報の難しさを改めて浮き彫りにした。
- 最大震度を観測したとみられる奥尻島(奥尻町)に地震計がないなど観測体制の課題も浮上した。奥尻町は独自に地震計と津波警報発令の態勢を整えたが、加えて1年半後に阪神淡路大震災が起こったことから、気象庁も各市町村への地震計の設置を進め、震度6以上の大きな揺れを確実に観測できる体制作りを整えた。
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関連項目
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