欧州中央銀行(European Central Bank; ECB)とは、1998年に設立された欧州連合(EU)の中央銀行である。
概要
欧州中央銀行は、ドイツのフランクフルトに本店を構えるEUの機関の一つである(EU条約第13条第1項)。ユーロという単一通貨を管理するため、EUに加盟する28ヶ国の中央銀行とともに「欧州中央銀行制度(European System of Central Banks; ESCB)」というものが創設されているという点で、通常の国立銀行とは大きく異なっている。
欧州中央銀行には、次の3つの意思決定機関が設けられている。
- 役員会(Executive Board): 総裁、副総裁、役員4名の計6名で構成され、通貨政策を実施する(EU機能条約129条第1項ならびに定款第11条および第12条第1項)。
- 政策理事会(Governing Council): 役員会メンバー6名と、ユーロを導入しているEU加盟国(19ヶ国)の中央銀行総裁19名との計25名で構成され、ユーロに関する通貨政策の方針を定める(EU機能条約第129条第1項ならびに定款第10条および第12条第1項)。
- 一般理事会(General Council): 総裁、副総裁、全てのEU加盟国(28ヶ国)の中央銀行総裁28名との計30名で構成され、ユーロ未導入国にも関係する案件を扱う(EU機能条約第141条第1項および定款第44条)。
主要目的は、物価を安定させることである(EU機能条約第127条第1項および定款第2条)。具体的には、ユーロ圏において、中期的に「2%を下回るも2%に近い水準のインフレ率」(inflation rates at levels below, but close to, 2%)を維持することが目標となっている。ただし、国によってインフレ率には違いがあることから、このバランスを維持することは至難の業であると言わざるを得ない。
また、主要目的である物価の安定を害さない範囲で、EUの経済政策を支援する。この点は、物価の安定に加えて雇用についても責任を負っている米国の連邦準備制度理事会(FRB)とは異なっている。
ユーロを守護する中央銀行として、ユーロ紙幣の発券を許可する排他的権限を有している。(実際の発券は各国の中央銀行でも行われる。)また、政策金利の設定や公開市場操作、外国為替市場への介入などを通じた金融政策を実施している。
初代総裁はオランダ出身のウィム・ドイセンベルク。2003年11月には第2代総裁としてフランス出身のジャン=クロード・トリシェが就任。2011年11月、イタリア出身のマリオ・ドラギが第3代総裁に就任した。
関連項目
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