基本データ | |
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正式 名称 |
欧州連合 |
連合旗 | |
連合歌 | |
標語 |
(多様性における統一) |
加盟国 |
27ヶ国 |
公用語 |
24言語(当該欄を参照) |
面積 | 4,324,782km²(世界第7位) |
人口 | 約5億人(世界第3位) |
通貨 | ユーロ(EUR, €)ほか10通貨 |
欧州連合(European Union; EU)とは、欧州連合条約(EU条約)によって設立された欧州の地域統合体である。2020年1月31日のイギリスの離脱によって、加盟国の数は27となった。
概要
EUは、歴史的には1952年設立の「欧州石炭鉄鋼共同体」(ECSC)や1958年設立の「欧州経済共同体」(EEC)などを淵源とする地域統合体である。国際機関(international organization)の一種であるが、スープラナショナル(supranational)であるという点で、他の国際組織とは区別される。世界で最も先進的な地域統合体である。
所掌範囲は極めて広い。当初の「欧州石炭鉄鋼共同体」(ECSC)は石炭・鉄鋼の原料供給や生産などを統一化するための機構であり、「欧州経済共同体」(EEC)は共通農業政策の実施や関税同盟化による域内関税の撤廃、それから共通市場化によるヒト・モノ・サービス・カネの移動自由化を主たる目標とするものであった。その意味において、「経済共同体」とも呼ばれていた。しかし、現在のEUは、そのような枠にとどまらず、人権保護や共通外交政策、共通通貨政策(ユーロの採用)などの分野でも国家の枠を超えて活動する機構となっている。
価値観の共同体
EU条約第2条には、EUにおける「人の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配および少数者の権利を含む人権」への尊重が明記されている。新たにEUに加盟しようとする国に対しては、既存の加盟国と同じようにこれらを尊重することが加盟への前提条件として求められる(EU条約第49条第1項)。
機関
欧州議会
欧州議会(European Parliament)は、EUの市民(これを「EU市民」という。)による直接選挙によって選出された議員によって構成される欧州連合(EU)の機関である。現在の議員数は約750名である。
閣僚理事会とともにEU規則やEU指令を制定することが主な任務である(詳しくは下の「条約・法体系」の欄を参照)。
所在地はフランスのストラスブール。ただし、委員会はブリュッセルに、事務局はルクセンブルクに分かれている。
欧州理事会
欧州理事会(European Council)は、加盟国の元首または政府首班(首相など)によって構成される機関である。EUの方向性などを話し合う。「サミット」などと呼ばれることもある。年4回は開催されることになっている。以前は開催地が各国持ち回りであったが、加盟国の数が多くなってきたため、もっぱらブリュッセルで開催する方向に移行しつつある。
閣僚理事会
条約上の名称は「理事会(Council)」。ただし、これだと上述の欧州理事会や、EUとは別の「欧州評議会(the Council of Europe)」と区別が付けづらいことから、一般には「閣僚理事会」または「欧州連合(EU)理事会」と呼ばれている。各国の担当閣僚、例えば財政分野であれば財務大臣、農業分野であれば農業大臣が集まって、それぞれの分野について議論するとともに、欧州議会とともに関連するEU規則やEU指令を制定する。
欧州委員会
欧州委員会(European Commission)は、EUの政策を調整し、いわば行政を司っている機関である。各加盟国から1名ずつ選ばれた委員計28名が、いわば閣僚のように担当分野を持っている。その下に実際の事務機構がブリュッセルに存在しており、ここで勤務する公務員のことをEU官僚すなわち「ユーロクラート(Eurocrat)」と呼ぶ習わしがある。また、欧州委員会は欧州議会・閣僚理事会が制定するEU規則やEU指令の原案を作成する独占的な権限を有している。
欧州司法裁判所
欧州司法裁判所(European Court of Justice)は、EUの第一次法および第二次法を解釈し、その正しい実施を導くための機関である。最高裁判所に当たる「欧州連合司法裁判所」と、その下級審に当たる「欧州連合裁判所」、それから「特別裁判所」の3つから成る。ただし、現在のところ「特別裁判所」として実際に設置されているのは「欧州連合公務員裁判所」だけである。所在地はルクセンブルク。
欧州中央銀行
欧州中央銀行(European Central Bank; ECB)は、EUの単一通貨となるべきユーロのための中央銀行である。ユーロ圏における物価安定を史上目標とし、必要な金融政策・通貨政策を実施する。所在地はドイツの金融都市フランクフルト。
詳しくは「欧州中央銀行」の記事を参照されたい。
会計検査院
会計検査院(Court of Auditors)は、EUの会計を監査する機関である。ルクセンブルクに所在。
歴史
EUおよびその前身となる諸共同体に関する主な出来事を整理する。
年 | 主な出来事および新規加盟国 | 加盟国数 |
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1952年 | 「パリ条約」の発効により、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立。 原加盟国はイタリア、オランダ、ドイツ、フランス、ベルギーおよびルクセンブルク。 |
6ヶ国 |
1958年 | 「ローマ条約」の発効により、欧州経済共同体(EEC)および欧州原子力共同体(EAEC)が設立。(加盟国は上のECSCと共通。新規加盟国も同様の扱い) | |
1967年 | 「ブリュッセル条約」(別名「合併条約」)の発効により、ECSC、EECおよびEAECの機関が合併し、欧州諸共同体(ECs)と総称。 | |
1973年 | アイルランド、イギリスおよびデンマークが新規加盟。 | 9ヶ国 |
1981年 | ギリシャが新規加盟。 | 10ヶ国 |
1986年 | スペインおよびポルトガルが新規加盟。 | 12ヶ国 |
1990年 | ドイツ統一により、旧東ドイツの領域もECsに編入。 | |
1993年 | 「マーストリヒト条約」の発効により、ECsを包含しつつ、更に高次な地域統合体として欧州連合(EU)が設立。EECは欧州共同体(EC)と改称。 | |
1994年 | 欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国との間で欧州経済領域(EEA)を設立。 | |
1995年 | オーストリア、スウェーデンおよびフィンランドが新規加盟。 | 15ヶ国 |
2002年 | 「パリ条約」の期限満了によりECSCが廃止され、その機能はECに移管。 | |
2004年 | エストニア、キプロス、スロバキア、スロベニア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、マルタ、ラトビアおよびリトアニアが新規加盟。 | 25ヶ国 |
2007年 | ブルガリアおよびルーマニアが新規加盟。 | 27ヶ国 |
2009年 | 「リスボン条約」の発効により、EUとECとの二重構造が解消され、EUに一本化。ただし、EAECは存続。 また、欧州理事会の常設が決まり、初代議長(いわゆるEU大統領)にはベルギーのヘルマン・ファン・ロンパウ前首相が就任。 |
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2013年 | クロアチアが新規加盟(7月1日)。 | 28ヶ国 |
2014年 | 欧州理事会2代議長にポーランドのドナルド・トゥスク前首相が就任。 | |
2016年 | イギリスの国民投票でEU離脱派が勝利(6月23日)。この結果により、数年後のイギリスのEU離脱が決まった。 | |
2020年 | イギリスがEU離脱(イギリス時間1月31日/ベルギー時間2月1日0時)。 | 27ヶ国 |
条約・法体系
EUは独自の法体系を有している。大きく分けると、国家間の条約として締結された「第一次法」と、第一次法に基づいてEUの諸機関が制定する「第二次法」とに分けられる。
- 第一次法
- 第二次法
EU条約・EU機能条約の一部規定や規則・決定は、各国の国内法とは無関係にEU市民に直接適用される。このスープラナショナル(supranational)な点が他の国際機関とは決定的に異なっており、EUの一大特色を成している。
欧州連合の公用語
欧州連合(EU)には27もの加盟国が集まっているため、言語の面でも多様性が見られる。なんと24もの言語が「公用語」に指定されており、欧州連合(EU)の法令などはこれら24言語に翻訳されているというのだから驚きである。ただし、欧州連合(EU)の諸機関(上の「機関」の項を参照)では、通常は英語やフランス語が、それから場合によってはドイツ語などが主に使われている。
以下、24の公用語を紹介する。「言語名」の欄が太字になっている言語は、ニコニコ大百科に記事があるので、詳しくはそちらを参照してほしい。(エストニア語、ラトビア語、リトアニア語、クロアチア語またはマルタ語に詳しい方による記事の追加を希望!)
今後の拡大
EU条約第49条に基づき、欧州に立地し、かつ、「価値観の共同体」が共有すべき価値観を尊重する国は、EUへの新規加盟を申請することができる。現在、次のような加盟候補国や潜在的な加盟候補国が存在する。
- モンテネグロ(加盟交渉中)
- トルコ(条件付きで加盟交渉中)
- セルビア(2014年1月に加盟交渉開始)
- 北マケドニア(2020年に加盟交渉開始)
- アルバニア(2020年に加盟交渉開始)
- ウクライナ(2022年6月に加盟候補国入り)
- モルドバ(2022年6月に加盟候補国入り)
- ボスニア・ヘルツェゴビナ(加盟候補国入りの準備段階)
- コソボ(加盟候補国入りの準備段階)
- ジョージア(2022年3月に加盟申請)
また、スイスおよびノルウェーについては、EUに加盟する気になれば短期間で加盟に漕ぎ着けられると考えられるが、国民投票でEU加盟に否定的な結果が出たため、いずれも加盟していない状況である。
アイスランドは2009年に加盟申請を行い、加盟交渉を進めていたが、政権交代によって2013年6月に中断、2015年3月に中止した。
なお、欧州の東端を巡っては議論があり、例えばベラルーシ、そしてロシアの扱いについては不明である。
ウクライナについても長らく不明だったが、2022年にロシアによるウクライナ侵攻があったことから、自国を守るために即時加盟を申請した。EU側は加盟には時間がかかるとしながらも歓迎しているが、ロシア側の反発は必至であり実際に加盟が実現するかは不透明である。
ただ、このウクライナの加盟申請によって、他国でも加盟を進める動きがあるようで、長年加盟交渉中であるトルコからはウクライナと同タイミングで加盟できるように声が挙がっているほか、ウクライナと同様にロシアに接しているジョージア、ウクライナに接しているモルドバもEUに加盟申請を出している。
ウクライナ、モルドバについては2022年6月にEUの全会一致で加盟候補国入りを果たした。
イギリス、EU離脱へ
拡大を続けてきたEUだが、それに冷や水を浴びせかけるような出来事が2016年6月に起こった。
EU主要国であるイギリスにおいて国民投票でEU離脱派がEU残留派を僅差で破り、イギリスがEUを離脱(ブレグジット)する流れが決まってしまったのである。
その後、イギリス内部の混乱と、EUとの折衝に時間がかかったが、2020年1月31日(イギリス時間)/2月1日(欧州会議のあるベルギー時間)に正式にイギリスはEUから離脱した。
関連動画
関連項目
脚注
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