肖像権とは、人物の姿や形が持ちうる権利のこと。
概要
肖像権という言葉は一人歩きしがちであるが、日本の法律に肖像権という権利を規定した文章は存在しない。ゆえに刑法において肖像権侵害という罪で裁かれたり、罰則が与えられることはない。肖像権ではないが、類似する事例で該当する可能性があるのは名誉棄損罪、わいせつ物頒布罪、迷惑条例違反あたりである。
民事上では個人の肖像の扱いは、判例により人格権、および財産権のひとつとして保護されるべきものとされている。一般的に肖像権という言葉が使われた場合、このどちらかに該当する権利のことを言っているのかな?と想像するのが自然である。
この記事では以降、人格権と財産権について分類して説明する。
人格権
写真や映像を撮影したこと、あるいは撮影されたものが公開されたことによる損害が発生した場合、人格権のうち、プライバシーの侵害などに該当する場合がある。
ただしこれは多くの人が肖像権という言葉からイメージする、ただ「写真に撮られたくない権利」のような強力な力を持った権利ではなく、実質的な損害が発生した場合にその行為に対して人権の侵害を指摘するものである。
例えば、撮影された写真や映像が誹謗中傷を与える目的で公開され、それにより人格を否定されたとか、そのような実害が発生した場合に人格権の侵害が認められる。
自宅などのプライベートな空間での写真や映像が無断で撮影・公開された場合も、プライバシー権の侵害行為と考えられる。逆に、駅や道端、多数の人が集まるイベント会場など、公共に開かれた場所での一般的な撮影行為はプライバシーの侵害には該当しない。
財産権(パブリシティ権)
芸能人や有名人など、その人物の氏名や肖像そのものに商業的な価値がある場合、そこに財産的価値があると見なされ、財産権により保護される。この「有名人の氏名・肖像を財産的に利用する権利」をパブリシティ権と言う。
例えばアイドルの写真を無断で販売していた場合や、無断で配布していた場合などがパブリシティ権の侵害となる。インターネット上に無断で掲載しても侵害になる。
侵害が認められれば損害賠償や画像の取り下げを要求できる。俗に言う肖像権のイメージに近いのはこちらのほうだが、芸能人などの有名人しか該当しないことに注意。
権利の適応例
街頭で写真を撮影していて、写り込む人に許可を取らないと権利侵害になる?
前述したとおり、公共の場所やイベント会場などで、特に撮影禁止ともされていない場所での一般的な撮影行為はプライバシー侵害にはなりません。本人が拒否しているのにしつこく追い回して撮影したとか、スカートの中を覗きこんで撮影した等の場合は迷惑禁止条例等に該当する可能性があります。いずれにしろ、撮影行為そのものが人格権の侵害となっているわけではありません。
個人が特定できるレベルの撮影でも、公共の場ではあまり問題になりません。例えばTV局が台風中継の時に街行く人を撮影したり、高校野球中継で観客の中からかわいい子をアップで撮影しても問題にはなりません。
政治家には肖像権が無いと聞きましたが?
政治家などの公人は、公私に関わらずあらゆる情報が国民の政治的意思決定の判断材料になり得るため、パブリシティー権、プライバシー権は一般的な国民よりも制限されます。例えば不倫現場を撮影し公開しても、報道の自由が優先されます。
他人が写り込んだ写真をインターネットに公開してはいけない?
写っている人が芸能人などパブリシティ権を持つ人物であった場合はこれの侵害にあたります。パブリシティ権を持たない一般的な人物の場合、公共の場所で撮影されたものであればプライバシーの侵害にはなりませんが、無用なトラブルを避けるためにも一言許可を取れるのならば取っておいたほうが良いでしょう。このあたりは権利の問題ではなく、マナーの問題と言えます。
自宅でPCの壁紙にするなど、個人で楽しむぶんには芸能人であっても問題ありません。
関連項目
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