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この記事は第652回の今週のオススメ記事に選ばれました! よりニコニコできるような記事に編集していきましょう。 |
タイヤゴム残存(MotoGP)とは、MotoGPのマシンが履いているタイヤのゴムがサーキット路面に残存することをいう。
以下の3つが知られている。
MotoGPは排気量によって3つのクラスに分かれている。2016年以降において、使用するタイヤは次のようになっている。
| メーカー | タイヤの太さ | 路面に残すタイヤ痕の量 | |
| MotoGPクラス(1000ccの重量級) | ミシュラン | 太い | 多い |
| Moto2クラス(765ccの中量級) | ダンロップ | やや太い | やや多い |
| Moto3クラス(250ccの軽量級) | ダンロップ | 細い | 少ない |
Moto2クラスやMoto3クラスのマシンが走り回った後の路面には、べったりとダンロップタイヤのゴムが残存することになる。とくにMoto2クラスのマシンが走った後の路面には、ダンロップタイヤのゴムが多く残る。このことをダンロップタイヤゴム残存という。
MotoGPの土曜日午後以降の日程を表にすると、次のようになる。
| 土曜日 午後 | Moto3クラス予選 | 合計30分 |
| 土曜日 午後 | MotoGPクラスFP4 ※ | 30分 |
| 土曜日 午後 | MotoGPクラス予選 | 合計30分 |
| 土曜日 午後 | Moto2クラス予選 | 合計30分 |
※FP4は4番目の練習走行という意味。各チームがこの時間で予選や決勝に向けたマシン作りをする。
| 日曜日 午前 | Moto3クラスWU ※ | 20分 |
| 日曜日 午前 | Moto2クラスWU ※ | 20分 |
| 日曜日 午前 | MotoGPクラスWU ※ | 20分 |
| 日曜日 午前 | Moto3クラス決勝 | 45分ほど |
| 日曜日 午後 | Moto2クラス決勝 | 45分ほど |
| 日曜日 午前 | MotoGPクラス決勝 | 45分ほど |
※WUはウォームアップと読む。各チームが決勝に向けたマシンの最終調整を行う。
Moto2クラスの決勝で、ダンロップタイヤを履いたMoto2クラスのマシンが路面にダンロップタイヤのゴムを残していく。このダンロップタイヤゴムとMotoGPクラスのマシンの相性が非常に悪く、MotoGPクラスの走りに悪影響を与える。FP4で作り上げたMotoGPクラスのマシンが、決勝で今ひとつ速く走らなくなる。
MotoGPクラスのライダーが、土曜日の予選で速く走り、日曜日の決勝で遅く走り、日曜日の決勝の翌日に行われる月曜テストで速く走る、という現象がはっきりと観測されている(記事1
、記事2
)。
ダンロップタイヤの影響により、グリップが落ちて速く走れなくなり、ライダーによってはブレーキングポイントを変える必要も出てくる(記事
)。ただし、転倒を引き起こすほどのグリップ低下というわけではない。
なぜダンロップタイヤのゴムが路面に付着しているとミシュランタイヤを履いたMotoGPクラスのマシンが遅くなってしまうのか。その原因は全く不明である。
ミシュランタイヤの責任者であるピエロ・タラマッソ
が「Moto2クラスのダンロップタイヤは、(ミシュランタイヤに比べて)硬いコンパウンドである可能性がある」と語っている(記事
)。ダンロップのゴムが硬く、ミシュランのゴムが柔らかい、というのである。そのあたりに原因があるのかもしれないが、正確な原因は誰も把握できていない。
MotoGPクラスの関係者にとって、路面に付着したダンロップタイヤゴムは邪魔なものに感じられるので、「ダンロップのタイヤ痕は我々にとって頭の痛い問題だ」などという感じでニュースサイトに喋ることになる。
そのため、なにやらダンロップに問題があるかのようなイメージが増幅し、ダンロップの企業イメージに好ましくない影響を与えることになる。
実際のダンロップは、Moto2クラスやMoto3クラスの独占タイヤメーカーとしてとても有能な働きをしている。タイヤの品質が良質で、トレッド剥離などの事故も起こしていない。ただ単に、MotoGPクラスのマシンとダンロップタイヤゴムの相性が悪いだけである。
路面がヤスリのようにギザギザしていてタイヤに対する攻撃性が高いサーキットや、暑いサーキットだと、Moto2クラスのマシンが路面に残すタイヤ痕の量が増えるので、MotoGPクラスの関係者にとって悩みが大きくなる(記事
)。
ちなみに、一般的な傾向として、暑い地方のサーキット路面はギザギザしており、寒い地方のサーキット路面はツルツルしている。寒い地方のサーキットは厳寒期に路面へ水が入って路面が割れることのないように路面の目を細かくしてあり、そのため摩擦係数(ミュー)が低くてツルツルしている(青山博一さんの解説
)。
2012年はMoto2クラスがダンロップタイヤ、MotoGPクラスがブリヂストンだった。
ブリヂストンタイヤにとってもダンロップタイヤゴムは厄介なものだったようで、2012年9月に行われたサンマリノGPのあとに、アンドレア・ドヴィツィオーゾが次のように話していた。
マルコ・ルッキネリ:コースに問題があったと思いますか?多くのライダーが予選よりレースでペースが遅くなっていました
アンドレア・ドヴィツィオーゾ:たぶんコースの問題だと思う セーフティコミッションでも議題になったんだ ほとんどのライダーがミサノではレースになるとペースが落ちることを疑問視してね 誰もその理由を説明できなかったんだけど ひとつだけ信用できそうな推測があったんだ "ダンロップのタイヤ痕がレースまでに路面に張り付くことでグリップが落ちるんだ"ってね 土曜までは普通にグリップがあるのにレースになったらそれが完全に消えるんだ ただ全員がそう言ってるわけでもなく問題ないライダーもいるんだけどね-モトGP PRESS VOL.07
より引用-
2018年のヤマハワークスは不振に喘いでいて、2017年6月25日の第8戦オランダGPで優勝した後、25連敗して、2018年10月28日の第17戦オーストラリアGPでやっと久々に優勝する、という状況だった。
2018年8月12日の第11戦オーストリアGPでヤマハ勢が不振に終わった後、ヤマハ首脳が突如記者会見を開き、「ライダーに対して申し訳なく思う」という声明を発したほどである(動画
、記事1
、記事2
)。
そのさなかに、ヤマハワークスに所属するヴァレンティーノ・ロッシやマーヴェリック・ヴィニャーレスがダンロップタイヤゴムの影響を口にしていた(記事1
、記事2
)。
2018年5月には、ヤマハワークスに所属するラモン・フォルカダが、ダンロップタイヤゴムの影響を指摘した。「日曜日の決勝レースはMoto2クラス決勝の直後なので路面にミシュランタイヤのラバーが十分に乗っておらず、それによりヤマハは苦戦する。日曜日のレースの翌日にテストが行われるときがあるが、そのときのヤマハは速い。日曜の最後に行われるMotoGPクラス決勝のあとでミシュランタイヤのゴムが十分に残っているからだ」と語っている(記事
)。
ライダーたちも、ぽつりぽつりとダンロップタイヤゴムの影響を口にする。
2020年フランスGPはF1と同日開催になったため、日曜の決勝がMoto3クラス~MotoGPクラス~Moto2クラスの順番になった。これについてマーヴェリック・ヴィニャーレスは歓迎の意を示していた(記事1
、記事2
)。
ホルヘ・ロレンソは、ブリヂストン時代からダンロップタイヤゴムの影響が存在していた、と語っている(記事
)。
ジャック・ミラーは、「日曜日の決勝において、最初の5~6周のグリップが厳しい」と語っている(記事
)。また、「日曜日決勝の最初は、ダンロップタイヤゴムのせいでグリップが悪い。ゆえに序盤はマッピングを弱いものにして、タイヤの温存に努める」と語っている(記事
)。
ブラッド・ビンダーは「ダンロップタイヤゴムのせいでブレーキングポイントを変えなければならないほどだ」と語っている(記事
)。
中上貴晶(記事
)、ポル・エスパルガロ(記事
)、カル・クラッチロー(記事
)も、ダンロップタイヤゴムの影響を認める発言をしている。
ダンロップタイヤゴムの影響に対しては、いくつかの対策が考えられる。
もっとも確実な対策は、Moto2クラスにワンメイクでタイヤを供給するメーカーとMotoGPクラスにワンメイクでタイヤを供給するメーカーを同一のものにすることである。
ミシュランがMoto2クラス・MotoGPクラスを兼任するか、ダンロップがMoto2クラス・MotoGPクラスを兼任するか、のどちらかである。
現実的にはこの解決策を採用するのは難しい。タイヤメーカーはドルナから金をもらわず、自腹で参戦している。
名物記者のマット・オクスリーは、タイヤメーカーがMotoGPクラスへ参戦するときの経費を1000万ポンドから1500万ポンドと見積もっている(記事
)。記事が書かれた当時のレートは1ポンド150円程度なので、15億円~22億5千万円ということになる。
マット・オクスリーの推測が正しいとすると、「タイヤメーカーがMoto2クラスへ参戦するときの経費」も、馬鹿にならないような大きな額であることを察することができる。
このため、タイヤメーカーに対して気軽に「Moto2クラスとMotoGPクラスを兼任しませんか」と言い出せるものではない。
手軽で実現しやすい対策は、日曜日の決勝の開催順をMoto3クラス~MotoGPクラス~Moto2クラスにするというものである。
Moto3クラスもダンロップタイヤを履いているのだが、Moto2クラスほどはタイヤが太くなく、エンジンパワーも強くなく、路面に残すタイヤ痕の量も多くない。
土曜日の日程と日曜日の日程を「Moto3クラス~MotoGPクラス~Moto2クラス」に揃えてしまえば、土曜日に作り上げたマシンが日曜日にも完璧に通用するであろう。
もう1つの手軽で実現しやすい対策は、土曜日の予選の開催順をMoto2クラス~MotoGPクラス~Moto3クラスにするというものである。
土曜日の日程と日曜日の日程を「Moto2クラス~MotoGPクラス」に揃えてしまう。
MotoGPクラスの各ライダー・各チームにとってMoto2クラスの後に走るのは嫌なのだが、「土曜日に作り上げたマシンが日曜日にも同じように機能する」ということだけは期待できる。
2018年9月、ヤマハワークスを代表するリン・ジャーヴィス
は、土曜日の日程を「Moto2クラス~MotoGPクラス~Moto3クラス」にするか、日曜日の日程を「Moto3クラス~MotoGPクラス~Moto2クラス」にするようにMotoGP運営へ提案するつもりだと発言した(記事1
、記事2
)。
2016年以降のMotoGPクラスには、ミシュランがタイヤを独占供給している。
MotoGPクラスのマシンが走り回った後の路面には、べったりとミシュランタイヤのゴムが残存することになる。このことをミシュランタイヤゴム残存という。
ダンロップタイヤを履いたMoto2クラスのマシンにとって、路面のミシュランタイヤゴムはタイムを向上させてくれる。
なぜミシュランのタイヤ痕があるとダンロップを履いたMoto2クラスのマシンが速く走れるようになるのかは、例によって、全く原因不明である。
土曜日において、MotoGPクラスのライダーがFP4と予選を走って路面にミシュランタイヤのタイヤ痕を大量に残した後、Moto2クラスの予選が行われる。
2018年までのMoto2クラス予選は、まだQ1・Q2の制度が導入されておらず、30人ほどのライダーが45分間走り続けてその45分の間に最も速いタイムを出したライダーがポールポジションを得ていた。
2018年は、予選の開始の直後にミシュランタイヤの残存ゴムによって好タイムを出し、その好タイムを誰も更新できないまま予選が終わるということがあった。
ダンロップタイヤを履いたMoto2クラスマシンが走ることによって、ミシュランのタイヤ痕がどんどん削れて消えていく。予選の開始の直後にミシュランタイヤゴムの助けで誰かが最速タイムを叩き出し、そのすぐ後には路面のミシュランタイヤのゴムが完全に消えてしまう。
ニュースサイトでも「ミシュランタイヤによってMoto2クラス予選の最初のほうに好タイムが出る」という指摘が相次いでいた(記事1
、記事2
、記事3
、記事4
)。
G+のMoto2クラス解説者の上田昇さんも2018年オーストラリアGP予選の残り41分頃に、「多くのMoto2クラス関係者から聞いたのだが、ミシュランタイヤの助けにより最初の数周だけではあるが速いラップタイムを刻むことができるようだ」と解説していた。
Moto2クラスの最初でポールポジションライダーが決まってしまう、というのは興行的にもあまり望ましくない。このことは、2018年の最中に、MotoGP運営のドルナによって問題視された。
MotoGP運営は、2019年からMoto2クラスにもQ1・Q2の予選方式を導入した(記事
)。
この方式なら、「ミシュランタイヤの助けでポールポジションが決まる」という事態にはならず、Q1グループからQ2グループへ進出する事が可能になるだけである。
2009年から2015年までのMotoGPクラスには、ブリヂストンがタイヤを独占供給していた。
MotoGPクラスのマシンが走り回った後の路面には、べったりとブリヂストンタイヤのゴムが残存することになる。このことをブリヂストンタイヤゴム残存という。
ブリヂストンタイヤゴム残存は、2009年から2015年まで、全く話題にならなかった。
掲示板
36 ななしのよっしん
2020/12/16(水) 20:05:17 ID: 9sZBgyWLEz
暑い地方のサーキットのアスファルトには、ダンロップのタイヤカスが今なお素粒子レベルで残存している…?
37 ななしのよっしん
2020/12/17(木) 21:44:21 ID: aafmYrCrDU
すげー見やすくなってる
一般的なタイヤ痕問題なんて二輪に限らず四輪にもあるだろうから証言集めて射程を広げたらいいんでは
38 ななしのよっしん
2020/12/18(金) 21:23:14 ID: h6WrLYtIsr
今更だけど編集おつかれさま、大分見やすくなったわ
>>37
この記事作った編集者さんはMoto中心の人だから、四輪もってなると難しいんじゃないかなぁ。あと既に記事が長めなんで、射程広めるっていうなら別記事作った方が良さそう
それと編集者さんがこの記事を作ったのって多分「GPクラスの人が度々話題に出すから」だと思うんだよね
四輪のレースでもそういう話題が何度も挙がっているんなら、一考の余地ありかもしれんけど…その辺詳しい編集者さんが果たしているんだろうか
(>>24にあったけど四輪にもタイヤ痕の影響あるって分かったらその内実装されそうだなぁw)
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/05(金) 22:00
最終更新:2025/12/05(金) 22:00
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