伝説巨神イデオンとは、1980年~1981年放映の日本サンライズ制作テレビロボットアニメである。
富野由悠季(当時富野喜幸)監督作品で代表作の一つ。テレビアニメ版は東京12チャンネル(現:テレビ東京)ほかで放送されたが、玩具の売上が不調だったため途中で打ち切られてしまう。しかし、なんとしてでも物語を本来の形で完結させたいという製作側の思いが通じ、1982年に総集編的な「接触編」、打ち切られ放映できなかった部分を映像化した「発動編」の二つが映画として同時公開された。
後年、富野監督が語ったところによると「またこういう(アニメの)仕事しかやらせてもらえないのかと思いつつ、だったらガンダム以上の物を作って黙らせてやる」「ロボットアニメ全てが夢やロマンを売るなんて思うなよ」という思いをぶつけて作ったということである。また、「こんな凄まじいアニメはあってはいけないと思う」と同時に「狂気の沙汰の作品で、ある意味ではとてもよく出来ている」と自身の仕事に対して滅多に満足だったといわない監督にしては珍しく満足いく出来だったとしている。(ただし後述の皆殺しに関しては意訳すると禁じ手をやってしまったという忸怩たる思いが多少はあった模様。)
俗に言う黒富野の最高峰の一つに上げられることが多い。
富野監督は1979年に「機動戦士ガンダム」(以下ガンダム)製作翌年、「伝説巨神イデオン」(以下イデオン)の製作に取り掛かる。
ガンダムでは「新しい人類(ニュータイプ)の存在によって人類は変われるのか」というテーマのもと終盤では主人公たちが次々死んでいく絶望的なプロットであったが、監督周りのスタッフの強い説得により結局救いのあるEDに変更し、テーマ的には展開を収束させず本放送は終了となる。
それが監督には消化不良であり,その後ガンダムで決着し得なかったテーマをイデオン劇場版(発動編)に引き継がせ、完結させる。
イデオンにおいて、監督は「結局人類は分かり合うことはできない」結末を選択し、イデの力を発動させ物語が完全な「終わり」へ向かう。
結果として発動篇は、富野監督が2010年現在までの長い仕事歴において、自身の満足いく作品に挙げる数少ない作品の一つとなった。
この悲劇的エンディングがその後,その名を轟かせる「皆殺しの富野」としてアニメ界を席巻し、後発のアニメ作品に強い影響を及ぼすことになる(新世紀エヴァンゲリオンなど)。
一方、後に制作された『逆襲のシャア』では、同じく人類への絶望の象徴としてアクシズの落下が描かれるものの、サイコフレーム(サイコミュ)による洗脳という少々強引な手段を用いて、敵・味方に別れていた人類がわずかながらも団結してそれを受け止めようとするという、今作とは真逆の監督の答えが描かれた。
また、イデオンというタイトルはイデオロギー(主義)に由来していると言われている。イデオンが作製された当時(1980年代)は冷戦によって核戦争による世界的な破滅が危惧されており、その原因となっているのがイデオロギーの対立であったため冷戦時のイデオロギーというものは極悪の象徴であった。本作のイデオンはやはりそのような立ち位置にあるためイデオン=イデオロギーであるという一説がある。
イデオンの特異なデザインと設定はいろいろといわくつきである。
放映当時としてもあまりかっこいいとは言えないイデオンは、おもちゃ会社側の企画先行でデザインされたものであり、この時点では普通サイズの車や飛行機が合体ロボになるという至極穏当な内容であったらしい。コンセプトとしては後の勇者シリーズなどとも近く、着眼点自体はそう悪くない内容と言えるだろう。が、いかんせんあの垢抜けないデザインである。
しかも富野の元に話が来た時点でデザインを変えられないところまで企画が進んでいたのか、とにかくどうにかしてこのロボットで作品を作ってくれということになった。とはいえなにせ主役メカ自体がとてもヒットしそうにないデザインと言わざるを得ず、アニメ制作側としては無茶ぶりもいいところだったわけである。
だが富野由悠季という男が恐ろしいのは、ここで逆転ホームランを打ちに行くことにある。
富野が参加した時点で主役メカのデザインは決まっていたものの、その他の設定や世界観については決まっておらず、アニメ制作側の裁量に任されることになった(これは当時としては一般的なやり方である)。ここで富野はこれは車や飛行機ではなく、たまたま車っぽい何か、飛行機っぽいなにかだとし、形を変えなきゃどんな大きさでもいいんだろ?と人間用の乗り物サイズから100mの巨神に変えて、メカの端に人が乗り込む小さなドアをつけてしまった。そして曰く「これは第六文明人の遺跡です」
TVシリーズ第一話にはベスが「これが遺跡?」と笑い転げるシーンがあるが、どう考えてもツッコミどころしかないイデオンのデザインに対して、どんなに理不尽でもこれは遺跡なのだという作品の基本的なスタンスを提示しているわけである。そしてその理不尽に説得力を与えるため、イデオンがいかに理不尽な存在か逆に強調するという演出方針がとられ、アニメ史上稀に見る問題作が生まれることになったのだった。
一応富野由悠季としては「こんなのもん売れるわけねーだろ」というのをぐっとこらえて、どうにか商品として成立するようにテコ入れしたのであって、単に好き勝手やったわけではない・・・はずである。
イデオン本編内にて使用されたBGMは「ドラゴンクエスト」でおなじみのすぎやまこういちの作曲で、その劇場版サントラは廃盤となってしまい高値(約1万4千円)でオークションなどに出品されていた。その後2009年8月に4枚組の「伝説巨神イデオン 総音楽集」がキングレコードより発売され、この動きは終息しつつある。
(TV版ED「コスモスに君を」は上記remix3の動画を見てください)
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最終更新:2025/02/16(日) 22:00
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