見上げてごらん夜の星をとは (ミアゲテゴランヨルノホシヲとは) [単語記事]

見上げてごらん夜の星をとは、日本の楽曲である。

概要

作詞は『上を向いて歩こう』ほか数々の作品の詞を描いてきた永六輔。
作曲は『ゲゲゲの鬼太郎』や『徹子の部屋』のテーマソング、後に『それいけ!アンパンマン』の楽曲も手がける事となるいずみたく。

元々は1960年に上演された同名のミュージカルで歌唱された劇中曲であり、当時としては珍しかった日本語楽曲によるミュージカル演劇という意味で、和製ミュージカルの草分け的存在でもあった。
その初演は大阪フェスティバルホールにて行われ、主演した伊藤素道とリリオ・リズムエアーズという男声ボーカルグループが歌唱していた。

1960年代当時の日本はまだ高校や大学への進学率は低く、貧しい国であり、集団就職によって地方から都会に出て、定時制の学校に通いながら働く若者が多かったことから、演劇のテーマは定時制高校に通う様々な青春像が題材となっていた。これは作詞を担当した永六輔の経験によるものが大きいという。その主題歌となった本楽曲も、夜学に通う若き人々を励ますための作品となった。

伊藤のものはミュージカルだったこともあり、レコード化はされていないが、大阪での公演を観ていた坂本九は本作を大変気に入り「自分にも演らせてほしい」と永に嘆願し、1963年に坂本九と九重佑三子の主演で再演され、さらに同年には坂本の歌唱版がレコード化され、同年には松竹にて映画化もされる。こうして、発表された坂本九のレコードは大ヒットし、楽曲も世に浸透し、21世紀を迎えた現在もプロ、アマ、歌入り、インスト問わず多数のカバーバージョンが誕生している名曲として認知されるに至る。

本作で作曲のいずみは63年のレコード大賞作曲賞を受賞、さらに坂本も第14回NHK紅白歌合戦に本楽曲で出場し、1969年の第20回でも本作を歌唱した。また、1985年 8月12日、NHK放送センター内にある505スタジオで収録されたラジオ特番『歌謡スペシャル秋一番!坂本九』ではアンコール前最終楽曲『懐しきlove-song』の一つ前として歌唱しており、これが文字通りライブ収録された坂本九最後の歌声の一つとなっている。（セットリストのオーラスは『明日があるさ』だが、これはオンエアされなかった）

坂本が日本航空123便墜落事故で不慮の死を遂げた後に放送された1985年 8月21日の『夜のヒットスタジオ』では森進一が坂本への追悼の意を込めて当初の予定に無かった本作を歌唱し、多くの視聴者の涙を誘った。

坂本九及びいずみたくの墓には本作の歌詞が一部刻まれている。

2011年の東日本大震災の際には、サントリーによって『上を向いて歩こう』と共に本作を様々な人物が歌唱するロング CMが制作されたほか、ラジオ局を中心にこの曲に多数のリクエストが殺到、改めて人々を勇気付ける楽曲として認知されるに至る。
このエピソードは後年のアニメでもアレンジされて使用されており、2020年 6月20日放映の『波よ聞いてくれ』第12話（最終回）において北海道で大地震が起きたことでブラックアウトが生じた場面で挿入歌として坂本のオリジナルバージョンが2分間そのままの音源で流された。当時は新型コロナウイルスによるStay Home推奨の時期と重なっていたこともあって、多くの視聴者がこの演出に感動を覚えたという。