鵜沢美冬とは (ウザワミフユとは) [単語記事]

鵜沢美冬（うざわ　みふゆ）とは、ライトノベル『マリア様がみてる』及びそれを原作とするアニメの登場人物である。

概要

第5巻「ウァレンティーヌスの贈り物（前編）」から登場。元々リリアン幼稚舎に通っていたが、父の転勤で初等部に入る前にリリアンを離れ、高等部になって再び戻ってきた経歴を持つ。幼稚舎にいた頃、怪我したところを同級生だった小笠原祥子に助けられ、ハンカチをもらった思い出があり、祥子に憧れている。しかし、高等部で再会した時、祥子はその相手が美冬ということを覚えていなかった。

学校では目立たない存在で、姉妹も作らず平凡な日々を送っていたが、バレンタインの直前に祥子が温室で紅いカードを埋めるのを見て、イベントが始まる前に紅いカードを取ってしまう。しかし罪悪感で悶々としていたところを、カードを探していた福沢祐巳と出会う。当初は祐巳を嫉妬していたが、本来なら紅いカードがある場所を「ロサ・キネンシス」が咲いているから、という理由で必死に探す祐巳を見て敗北を悟る。その後、密かにカードを埋め戻し、祐巳が祥子や築山三奈子の付き添いでカードを無事発見し、祐巳が祥子とのデート権を獲得した。

美冬本人は今までの自分を変えるために髪を切り、その後も普通に学園生活を続け、三年間祥子と同じクラスだった。時は流れて、第35巻「ハローグッバイ」の卒業式で祐巳と再会し、コサージュを付けてもらう。祐巳にとっては、最後まで美冬の名前も知らない単なる上級生であったがその存在はしっかり覚えており、美冬にしてみれば長きにわたるわだかまりが完全に解けた瞬間である。単行本発行年数に直すと、なんと8年という長い月日が経っての出来事だった。

“福沢祐巳”になれなかったもう一人の祐巳

あとがきにも、ウィキペディアにも書いてある通り、鵜沢美冬名前をローマ字に直した「UZAWA MIFUYU」は、「FUKUZAWA YUMI」（福沢祐巳）のアナグラムであるが、「K」の一文字が足りず、祐巳にはあって美冬にはなかったものがあると説明している。それはすなわち、後一歩勇気が出せなかったことである。もし、美冬が「自分が紅いカードを先に取ってしまった」と祐巳に素直に白状していれば、祐巳の言葉を経て祥子とももう一歩進展した仲になっていたのではないだろうか？そのような意味で美冬は勿体ないことをしたと言えるだろう。

実は美冬は、山百合会メンバー以外で主役のエピソードを飾った人物である。後にマリみては、山百合会以外を舞台にした多数の短編が作られているが、その口火を切った功績は大きい。また、アニメ版では「白き花びら」のエピソードが後回しにされているため、アニメ一期第9話「紅いカード」は、初めて祐巳以外の視点で描かれた話となった。

そんな快挙を成し遂げたにもかかわらず、美冬の人気と言うより知名度は、祥子の記憶同様低い。彼女の性格が後ろ向きというのもあるが、何より地味で目立たないのである。美冬の同級生は、祥子・支倉令の他にも、嵐を巻き起こした新聞部部長・築山三奈子、誇り高きリリアンの歌姫・蟹名静、そして佐藤聖が最も愛した天使・久保栞と強烈な個性の面々ばかりであり、これに対抗しろと言う方が無謀であろう。

おまけに美冬は山百合会から名前を知られていないため、ほかの登場人物からは「背の低い生徒」などと言われており、なんと自分のエピソードである「紅いカード」以外、一度も名前を書かれたことが無いのである。また、同じバレンタインのゲストキャラだった田沼ちさとが準レギュラーに昇格したのに対し、美冬はその後何年も姿を見せない一発屋になってしまった。桂さんのようにネタキャラとして脚光を浴びることも無く、実は一番不遇なキャラなのかもしれない。

しかし、祥子は幼稚舎の頃の思い出の人物が美冬ということは忘れていたが、思い出自体はきちんと覚えていたことが、第28巻「クリスクロス」の祐巳との会話で判明した。美冬にとって、せめてもの救いだろう。また、原作の記述によると美冬は身長が140 cmと非常に背が低い（アニメさほど小柄でなかったが）。もし、細川可南子と姉妹になっていたら、身長差40cm以上の凸凹姉妹になっていただろう（美冬も祥子のストーキングを行っていた）。