ラオ(Lao)とは、石黒監督版アニメでの扱いがやたら残念な上に原作でもぶっちゃけ不遇、という可哀想な扱いに定評のある「銀河英雄伝説」のキャラクターである。
CV.亀山助清(石黒監督版)、畠中祐(Die Neue These)。
ラオは「銀河英雄伝説」原作の同盟側人物の中でも、第一巻のアスターテ会戦から最終巻の和平成立まで一貫してヤン(→ユリアン)の配下として登場する唯一のキャラクターである。唯一なのである。そのユリアンだって艦隊に同行したのはイゼルローン着任からだし、アッテンボローなど二巻で名前がちょっと出たのが初登場なのに、ラオは最初から最後までいるのである。
にもかかわらず、彼の扱いはいろいろと悪い。
そもそも最初から最後までヤンの配下だったという事実に気付いていない人のほうが圧倒的に多い気がするとか、せっかくだから皆殺しの田中に殺されていたほうがまだ目立てたんじゃないかとかそういった残念さには事欠かないのだが、それにしても彼の扱いは残念なのである。
とにかく、これから彼の扱いが如何に残念か、羅列してみよう。
原作における初登場は前述のとおりアスターテ会戦。少佐の頃。
第2艦隊の幕僚チームの一員として、<パトロクロス>被弾時にヤンの呼びかけに応えた時である。この時<パトロクロス>の艦橋人員はほぼ全滅状態にあり、ラオ少佐は司令官代理であるヤンの副官役として、あるいは通信士官として、そして旗艦の戦闘指揮官としても活躍した。特に戦闘指揮官としては砲術長を臨時兼任し、「主砲斉射!目標至近!」というたいへん勇ましい命令も発している。
……のだが、石黒監督版OVAにおいてこれらの登場シーンは全てアッテンボロー少佐に持って行かれているのである。おのれアッテンボロー。余波を受けてアッテンボローはイゼルローン要塞攻略戦直前までに少佐から大佐にまで昇進してしまったりしているが、ラオが「最初から最後までヤンの配下だった唯一の人物」という僅かなアイデンティティを奪われてしまっていることに比べれば、はるかに些末事である。
前述したとおり、アスターテ会戦でのラオの登場シーンは無かったことにされてしまった。
では石黒監督版でラオがどこで登場したかというと、第21話「ドーリア星域会戦、そして……」である。
この回では原作では名前しか出てこなかったアッテンボロー分艦隊の戦闘シーンが大幅増量しており、ラオもこの時アッテンボローの幕僚・少佐として登場しているのである。 やったね出番だよ!実際にはその数話前から会議に顔だけは並べているのではあるが、台詞があったのも顔が全部映ったのもOVAではこれが最初である。一応原作ではヤンと同年配のはずなのだが、顔はちょっとくたびれ気味。
そういうわけで、OVAしか見ていない人は「ラオはアッテンボローの幕僚キャラなんだな」と思っておいでのことと思うが、そうではないのである。いつの間にかそういうポジションで固定されてしまっただけです。
ちなみに、このアッテンボローの戦闘シーンは原作ではフィッシャーが担当していた部分なのは言ってはいけない。
おのれアッテンボロー。
原作3巻冒頭でアッテンボロー分艦隊の主任参謀と明言されていることもあって、その後も石黒監督版OVAでアッテンボロー分艦隊の出番(というよりアッテンボロー分艦隊の旗艦艦橋のシーン)があるときはたいていラオの出番もあるのだが、殆どの場合は台詞無しの背景状態である。
一応「初陣」など、原作で台詞があったシーンでは喋っているのだが、とりあえず影は薄い。あと中佐に昇進してた。帝国軍艦隊が大将級司令官の参謀長まで細かく幕僚の名前が出ているのに対し、同盟側の艦隊には非常に名前ありの幕僚が乏しく、また艦橋の構造上、司令官以外が画面に入りにくいことから、結果的に司令官一人だけが喋っている状態のことが多いためかと思われる。羨ましいことである。
ラオにとって原作での久々の出番となったのは第8巻、回廊決戦である。
このときアッテンボロー分艦隊はアイゼナッハ艦隊の攻撃によって本隊と分断されかけており、ラオ大佐(いつの間にか昇進してた)は「声をうわずらせ」て敵中孤立の危険を訴えた。アッテンボローはむしろアイゼナッハ艦隊が包囲された格好になったと一笑に付したのだが、ここでそれに対するラオの反応の部分の本文を引用させていただこう。
ラオ大佐はうたがわしげな表情だった。彼はもともとさほど悲観的な性格の人間ではなかったが、ヤンやアッテンボローに幕僚としてつかえるうち、そのような属性がつちかわれたようである。
そういうわけで、ラオはいつのまにやら苦労人属性まで持つはめになってしまったのである。そりゃまぁ「うちの艦隊の一番の得意技は逃げるふりだ」とか言ってる(OVA第80話)司令官だものなぁ……おのれアッテンボロー。
その後は(たぶん)台詞つきでは登場していない。シヴァ星域会戦あたりでアッテンボローが顔をすくめてみせた相手として地の文に記述があるくらいである。そして最終幕、第10巻落日篇第九章「黄金獅子旗に光なし」において、彼の扱いの悪さを決定づける、アッテンボローの衝撃的な一言が放たれたのであった。太字化は編集者による。
「軍務はどうするんです」
「スーン・スールにまかせる。あいつはおれより独創性はないが、責任感は一・六倍ほどあるからな。ラオにてつだわせよう」
大佐のラオが、少佐のスーン・スールの補佐につけられるのである。扱いの悪さ極まれり。おのれアッテンボロー。石黒監督版だけではなく、原作内でも扱いが残念であることを露呈させる一言であった。ホント、ご苦労さまです。
そんな彼だが、彼にもリベンジの機会が訪れた。
アスターテ会戦を中心に再構成した映画「新たなる戦いの序曲」の製作である。
今度こそ第2艦隊の幕僚として、ヤンの副官役として、かっこいい戦闘指揮官代理として出番があるはず!
……と思われた。しかし、現実は厳しかった。
またしても、またしてもアッテンボローが彼の出番を持っていったのである。
幸い指揮を引き継いだヤンの隣に立っているくらいの役目は与えられたし台詞もあったが、やはり出番は削られてしまった。おのれアッテンボロー。
このままだとOVAでの彼の扱いの悪さを嘆くだけの記事になってしまうので言っておくが、アッテンボローの出番増量もあってラオの出番自体は原作に比べて大きく増加している。アスターテ会戦を除けば、台詞も増えているくらいである。
だからOVAはなにも悪くない。
アッテンボローの原作初登場が重要キャラのわりに遅かったのをどうにかしないといけなかったし、先発する「わが征くは星の大海」にアッテンボローを出しているのだから、あそこでアッテンボローを出すという選択はむしろ当然である。
ただ、結果的にラオのアイデンティティが消失し、地味度が上がってしまっただけのことである。それだけだってば。
2018年スタートのアニメ、「銀河英雄伝説 Die Neue These」では、かねてより「登場が早い方から声優を発表する」と報じられていた。そして3月1日、ついにラインハルト、キルヒアイス、ヤンの主要三名に次ぐ声優発表が行われたとき、そこに居並ぶファーレンハイト、シュターデン、パエッタ、ラップといったアスターテ会戦組のキャラクターの中に、「ラオ :畠中祐」が含まれていたのである!
かくして、いよいよ原作通りアスターテ会戦からの登場となったラオ。声優も出演時基準で10歳分も若返り、見た目もちゃんとヤンと同年代っぽい若手に。アッテンボローもアスターテでは登場せず、役目を奪われることもなくなった。みたかアッテンボロー!
なお、「悪運が強いと自認する楽天家」というキャラ付けが追加された結果、やがてヤン艦隊で揉まれたあげく悲観的傾向の持ち主になるのが確定してしまい可哀想度がちょっと増しちゃったのは内緒だ。
掲示板
32 ななしのよっしん
2021/11/13(土) 11:25:37 ID: MjUXznI4s/
石黒版の本伝を見終わったけどさ、ラオって……誰?
いや本当にすまないが、顔が思い浮かばない。
33 ななしのよっしん
2023/01/20(金) 07:43:38 ID: lMdAOKhLKV
34 ななしのよっしん
2024/01/06(土) 22:38:49 ID: 4mFxPrfVCz
原作最初の戦いであるアスターテ会戦から最後の戦いであるシヴァ星域会戦まで参加したのはラインハルト、メルカッツ、そしてラオの3人。そしてその中で生き延びたのはラオ一人である。
…こう書けば凄そうなのにな
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最終更新:2024/04/25(木) 23:00
最終更新:2024/04/25(木) 23:00
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