デイヴィッド・ウィリアム・モイーズ(David Wiliam Moyes, 1963年4月25日 -)とはスコットランド・グラスゴー出身の元サッカー選手で、現在は監督として活動している。
2002年から2013年までイングランド・プレミアリーグのエヴァートンFCの監督を務めており、限られた予算でエヴァートンで達成した実績などに対してアレックス・ファーガソン、アーセン・ヴェンゲル、ケニー・ダルグリッシュなどから賞賛を得た。
モイーズは、現役時代、センターバックとして540試合以上に出場し、キャリアを開始したスコティッシュ・プレミアリーグのセルティックFCではリーグ優勝を経験している。その後はイングランドとスコットランドのクラブを渡り歩き、プレストン・ノースエンドFCで現役を引退。1998年に同クラブの監督に就任した。
フットボールリーグ・ディヴィジョン2(実質イングランド3部)で降格の危機に瀕していたチームをガリー・ピーターズより引継ぎ指揮を取った。彼はキャリアの大半を選手としてよりも指導者として費やしており、22歳の時にコーチングランセンスを取得している。1997-98シーズンは降格を免れ、1999-2000シーズンにはディヴィジョン2で優勝し、監督として初のタイトル獲得と共にクラブをディヴィジョン1昇格へと導いた。昇格初年度にはリーグ4位、プレミアリーグへの昇格プレーオフ進出など結果を残している。
2002年3月に、ウォルター・スミスの後任として、プレミアリーグエヴァートンの監督に就任。
2002-03シーズンは、モイーズが始めてフルシーズン指揮を執ったシーズンであり、監督たちの投票で選ばれる年間最優秀監督に選ばれた。2003-04シーズンには、成績が思うように振るわず、クラブ史上最低の勝点39で17位でシーズンを終了し、降格を免れただけで終わってしまったシーズンとなってしまった。その後も、トマシュ・ラジンスキ、トビアス・リンデロート、ウェイン・ルーニーなどがクラブを去った。ルーニーの自叔伝から抜粋し、モイーズがルーニーにクラブから出て行くように主張し、メディアに情報を漏らしていたと明らかにしていたが、モイーズはルーニーが謝罪し、賠償金を支払うことに同意する示談が成立するまで、名誉毀損であると訴え続けたなどの事件があった。しかし、そんな混乱の中、エヴァートンはシーズン開幕前の予想を覆す快進撃を続け、4位でシーズンを終え、モイーズは2度目となる年間最優秀監督賞を受賞した。
その後の2009-10シーズンも、年間最優秀監督に選出され、元マンチェスター・ユナイテッド監督のアレックス・ファーガソンの後任候補と度々、噂されていた。
2008-09シーズンには、2009年1月19日に行われたFAカップ準決勝で、マンチェスター・ユナイテッドと対戦し、PK戦の末、下し1995年以来となる決勝に導いたが、決勝で、チェルシーに1-2で敗れた。
2013年5月9日、サー・アレックス・ファーガソンの後任として、マンチェスター・ユナイテッドFCの監督に就任する事が発表された。契約期間は6年。
就任後初のタイトルマッチとなったコミュニティ・シールドではウィガン・アスレティック(2部)を下し、監督としてはプレストンでの3部優勝以来のタイトルを獲得。
しかしその勢いを維持する事はできず、リーグ戦では開幕6試合で3敗を喫するなど過去24年間で最悪のスタートを切った。その後もチームの不調は尾に尾を引いてメディアやサポーターからはバッシングが相次ぎ、大型契約の就任1年目にして解任を求める声が上がる事態に至っている。
2014年を迎えてもユナイテッドの低迷とモイーズへの強烈な風当たりは留まる所を知らない。ニコニコ動画においてユナイテッドの試合やハイライト動画を見ると彼へのバッシングや嘲笑、ネタにするようなコメントが目立つ。しかし、このような動きは国内に留まらず、海外のネット上でも彼をネタにするコラ画像が多数出回り、Twitterでは#MoyesOutなるハッシュタグが誕生するなど散々な扱いを受けている。
「何もここまで叩かなくても・・・」「まだ1年目だしこれから」「結果を出せない選手にも問題がある」といった擁護の意見も少なからず見られる中、何故ここまでモイーズユナイテッドは非難を浴びているのか。その要点を以下にまとめる。
~ 単調な戦術 ~
彼はエヴァートン時代から前方に大きく蹴り出す、クロスボールを多用するといったダイレクトな戦術を好む監督として有名であり、マンチェスター・ユナイテッド就任後もそのスタイルを継続しているが、戦果はイマイチである。また、空中戦に特化している攻撃選手が不在にも関わらずひたすらクロスを上げ続けるという非効率的な戦い方は、リーグ最高峰の選手であるオランダ代表FWロビン・ファン・ペルシー、イングランド代表FWウェイン・ルーニーを生かし切れていないという声も多い。
クロスの本数が70本を超えながら勝利を掴めなかったフラム戦後、リーグ最下位に沈む対戦相手の監督からは「守りやすい」と一刀両断された。
~ 偏向的な選手起用 ~
一貫したクロス信望のスタイルに加えて偏向的な選手起用も目立ち、サイドハーフではイングランド代表MFアシュリー・ヤング、エクアドル代表MFアントニオ・バレンシアのように縦に強いドリブラーを並べる事が多い。
ここまでは単に監督の好みの問題で済む話であるが、結果が伴っていないにも関わらず固定されたメンバーを起用し続け、その傍らファーガソン体制時に一定の活躍を見せたメキシコ代表FWハビエル・エルナンデス、日本代表MF香川真司らの起用を頑なに見送り続けているため、ワールドカップを控えた各国のファンのみならず現地のサポーターやメディアからも懐疑的な声が上がっている。
一方で冬の移籍市場では、ライバルチームのチェルシーFCからスペイン代表MFフアン・マタをクラブレコードの移籍金で獲得し立て直しを図るも、上記の戦術にマッチしていない事もあって移籍金に見合った力を発揮しているとは言い難い。また、兼ねてから補強ポイントに挙げられたディフェンスラインは手付かずであり、リーグ戦後半に突入してもなお不安定な試合が続いている。
~ 不名誉な記録 ~
「赤い悪魔」として世界に名を轟かせる名門クラブであるマンチェスター・ユナイテッドで数々の栄光と記録を作り上げてきた前任者のサー・アレックス・ファーガソン。その後任ともあって期待や求められる結果もそこらのクラブとは比較にならない中で、デイヴィッド・モイーズは就任後わずか半年で幾つかの不名誉な記録を達成している。英公共放送局BBC、米スポーツ専門チャンネルESPNらが掲載したものが、次の通り。
・リーグ戦でストーク・シティに1984年以来の敗北
・スウォンジー・シティに本拠地で初めての敗北
・ニューカッスル・ユナイテッドに1972年以来の敗北
・古巣エヴァートンに1992年以来の敗北
・ウェストブロミッジ・アルビオンに1978年以来の敗北
・ストーク・シティにリーグ戦では1984年以来の敗北
・欧州カップ戦にてギリシャのチームにクラブ史上初の敗北(オリンピアコス戦)
・12年ぶりのホームゲーム連敗
・13年ぶりの公式戦3連敗
・リーグ戦24試合消化時点でプレミアリーグ創設以降最低成績をマーク
リーグ連覇はおろか来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得すら危ぶまれるマンチェスター・ユナイテッドの2013-14シーズン。
チームの大黒柱ルーニーとの契約を2019年まで延長し、さらにシーズン終了後の大型補強を宣言したモイーズ陣営であるが、その運命やいかに。
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最終更新:2024/05/31(金) 04:00
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