本項では2.を解説する。
バレンシアとは、スペイン東部のバレンシア州の州都である。
首都マドリッド、カタルーニャ州バルセロナに次ぐスペイン第3の都市である。人口80万。
スペイン語とバレンシア語の2つの言語を公用語としていて、各種看板は2言語で書かれる。
バレンシア語はカタルーニャ語に似ている。
バレンシア州旗はカタルーニャ州旗(サニェーラ)とよく似ていて、 カタルーニャ州旗の左に青い部分を加えるとバレンシア州旗になる。
バレンシアは地中海に面していて、典型的な地中海性気候になる。
海に面しているので少し湿度が高い。
スペイン内陸部の首都マドリッドで真夏に冷蔵庫から冷やした飲み物を取り出しても結露しないが、バレンシアで同じ事をすると結露する。
とはいえ、東京よりはずっと湿度が低く、夏でも過ごしやすい。
クーラーや扇風機無しでも十分にしのぐことができる。
夏の平均最高気温は29.6度になり、少し暑い。
冬の平均最高気温は16.1度、平均最低気温は7.0度で、日本の種子島とほぼ同じ。雪は降らない。
年中を通して雨が少ない。そのため水不足や山火事が話題になることが多い。
バレンシアには小規模なメーカーが集積する工業都市である。
米国の自動車メーカー・フォードがこの場所に自動車工場を建設し、現地の雇用に貢献している。
バレンシアは地中海第一の貨物取扱量を誇る巨大なバレンシア港を持っている。
地図で見てもわかるように、ジブラルタル海峡を越えて地中海に入ると一番先に現れる巨大港で、 地中海に入る船にとってはとりあえず寄っておきたい場所になっていて立地条件が非常に良い。
首都マドリッドの外港という位置でもあり、さらに立地条件が恵まれている。
バレンシア港があるおかげで、海運業界にとってはバレンシアこそが南ヨーロッパの中心となっている。
例えば米国からイタリアに荷物を船で送る場合、米国を発ってバレンシア港に来て、バレンシア港で荷物を降ろして、そして米国に帰ってしまう。
あとはバレンシア港を根拠地にする海運企業がイタリアに荷物を届ける。
こういう中継港をトランシップ港といい、しっかり利益が出る美味しい存在なのである。
バレンシアは「バレンシアオレンジ」で有名。
この品種は、ウィリアム・ウルフスキンというアメリカ・ミズーリ州出身の農家がアメリカ・カリフォルニア州サンタアナに移住してポルトガル原産の木を品種改良して作り、スペイン移民に「バレンシアのオレンジに似ているなあ」と言われたのが始まりであるとのこと。
カリフォルニアから世界中に広まっていき、現在は世界で最も多く栽培される果樹になっている。
バレンシアにも渡ってきて、市内のあちこちにバレンシアオレンジの畑が広がっている
バレンシアはスペイン最大の米作地で、市街地から15km離れたアルブフェラ湖の周辺に水田が多い。
ここでは9世紀から米を作り続けている。
湖の水量が多く、日本の水田とそっくりな水田が広がる。
湖の畔のエルパルマールが真のパエリア発祥地らしい。
パエリアがバレンシアの定番郷土料理。
パエリアは個別記事(→パエリア)でも説明されているように、鍋に米と海産物と野菜と肉を入れて炊き込んだ料理である。
二輪レースの最高峰であるMotoGPがバレンシア郊外のバレンシアサーキットで開催されるとき、MotoGP関係者にパエリアを振る舞うのが定番の光景になっている。記事1、記事2、記事3
「芸術科学都市」とは、トゥリア川がかつて流れていた場所に建設された施設群である。
白い骨組みの建物が青い池に囲まれていて、白と青のコントラストが印象的。
夜になるとイルミネーションが点灯して、とても綺麗な夜景になる。
ソフィア王妃芸術宮殿(オペラハウス・劇場)、 レミスフェリック(プラネタリウム、レザリアム)、 ルンブラクレ(植物庭園、彫刻庭園)、 フェリペ王子科学博物館(博物館)、 オセアノグラフィック(イルカショーも行われる水族館)、
が詰め込まれている。いずれもヨーロッパ最大級の大きさを誇っている。
13世紀にバレンシアにおいてレコンキスタ(キリスト教徒がイスラム教徒から領土を奪還すること)が成功した頃から建設が始まり、18世紀になって建設が終わった大聖堂。
そのため、ゴシック様式、ロマネスク様式、ルネサンス様式、バロック様式、ネオ・クラシック様式と様々な建築様式が混在している。
内部はこうなっていて、白い石の柱が太く大きい。
この大聖堂の隣に高さ51mのミゲレテの塔があり、207段の階段を上ると最上階まで登ることができる。
そこには14ヶの鐘がある。またビル17階建て分の高さなので眺めも素晴らしい。
この場所にラ・ロンハ・デ・ラ・セダがある。名前は「絹の取引所」という意味。
この場所はイスラム時代において宮殿だった。15世紀に絹の取引所として建てられた。
柱は螺旋状になっており、天井はこのようになっている。ヤシの木をイメージしているらしい。
バレンシアは暖かいのでヤシが生えている。特にバレンシア州エルチェにヤシの植物園があり、紀元前からヤシの木が植えられていて、現在では20万本のヤシが植えられている。
そういう土地柄なのでヤシの木は珍しくない。
宗教施設ではなく商業施設として建てられたものなので、とくにこだわりがない。
いろんなオブジェがあるが、マリア像があったり悪魔像があったり竜の像があったりと統一感がない。
かっこいいから作っときました、という感じ。
後述する火祭りにおいてはことごとく人形が燃やされる。
ところが一番出来映えのよい1体だけは燃やされず、この場所にある火祭り博物館に保管される。
ユーモアがあって面白い力作が展示されている。
1392年に建てられてからずっと他の城壁とともにバレンシア旧市街を守り続けてきた。
1865年に他の城壁は撤去されたが、この塔だけは壊されずに保存された。
火祭りとは現地語でファジェスといい、バレンシアで3月中旬に5日間にわたって開催される祭典である。
男女ともに民族衣装を着こなして参加するのが習わしとなっている。
男性の民族衣装はこんな感じ。 赤い腰巻きというのが一つの定番で、バンダナをして肩に布を掛ける。
女性の民族衣装はこんな感じ。 デカくてゴージャスなスカートは18世紀の宮廷衣装を元にしている。
爆竹や花火を一晩中鳴らして雰囲気を盛り上げる。
爆竹をいくつも入念に仕掛け、一斉に点火する。
高さ10mを越える巨大な手作りの人形(ファジャ)をいくつも広場や大通りに並べる。
2014年には日本スペイン交流400周年記念事業の一環として、招き猫やだるま、ドラえもんやとなりのトトロなどのファジャが製作された。検索するといかにも日本な人形が出る。
最終日の3月19日に人形が点火され、炎上して15分ほどで骨組みだけになる。
これを人形焼き(クレマ)という。
建物内部の可燃物への延焼を防ぐため建物にシートを掛け、消防車でシートに放水しながら着火される。
画像検索すると凄まじい風景が目に入ってくる。
石造建築ばかりのバレンシアだからこそ成立するお祭りで、木造建築の多い日本では絶対無理なイベントだろう。
バレンシア市街地から高速道路A-3で西へ35km移動すると、人口1万人のブニョールという村に着く。
ここでは毎年8月最終水曜日にトマトをぶつけあう「トマティーナ(トマト祭り)」が行われる。
トマトを満載したトラックが何台もやってきて、村役場の号砲とともにトマトが投げられる。
4万人ほどの観光客が詰めかけて地元民と一緒にトマトを投げ合い、みんな全身真っ赤になる。
バレンシアを代表するサッカークラブはバレンシアCFとレバンテUDである。
バレンシアCFはなかなかの強豪クラブでスペインの中でも観客動員数はトップクラス。
ニコニコ大百科にも個別記事あり(→バレンシアCF)
バレンシアCFの本拠地はこの場所にあるエスタディオ・デ・メスタージャである。
1923年に作られていて老朽化している。
この場所にノウ・メスタージャを建設する計画が進んでいたが資金難になり工事が中断している。
レバンテUDの本拠地はこの場所にあるエスタディオ・シウダ・デ・バレンシアである。
観客席がユニフォームと同じく青と赤に塗られている。
バレンシアCFとレバンテUDの対決はバレンシア・ダービーと呼ばれる。
バレンシアから60km離れたビジャレアル市にあるビジャレアルCFとバレンシアCFはライバル同士で、この2チームの対決もバレンシア・ダービーと呼ばれる。
バレンシア市街地から西に離れた郊外にバレンシアサーキットがあり、二輪レースの最高峰であるMotoGPが毎年11月に開催される。
大勢の観客が押し寄せて、大きな盛り上がりを見せる。
このサーキットは冬も暖かいので車両のテスト走行に最適であり、冬のテストにも多用される。
立派なサーキットがある、
モータースポーツへの理解があって「騒音が酷いからレースをするな」という声が少ない、
商工業の産業に恵まれて住民の所得水準も高くモータースポーツの出費に耐えうる、
そうした条件が重なり合い、バレンシア人たちはMotoGPにおいて躍進している。
バレンシア出身のMotoGPライダーの名を挙げると、ジャウメ・マシア、アロン・カネット、ホルヘ・ナヴァーロ、ニコラス・テロル、エクトル・バルベラ、ホルヘ・マルティネス、 リカルド・トルモとなる。
ホルヘ・マルチネス率いる名門プライベートチームの「Team Angel Nieto(旧称Team Aspar)」はバレンシアを本拠地としている。
Team AsparとバレンシアCFは、バレンシアブランドのイメージ強化を目的として2014年に提携したことがある。こちらが記事。
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最終更新:2024/12/27(金) 00:00
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