黒姫(Fate)とは (クロヒメとは) [単語記事]

黒姫(Fate)とは、スマホゲーム『Fate/Grand Order』に登場するサーヴァントの1騎である。

CV：黒木ほの香
イラスト：マシマサキ

概要

もし、主であるあなた様が、このような私でも良いと仰るのならば、私は最後まで、
あなたのお傍におりましょう。黒く冷たき蛇のように…あるいは、蛇を殺す刀のように。

2025年1月15日に実装された☆4恒常サーヴァント。クラスはセイバー。同時にイベント「育て！マイ・リトル・ドラゴン～鱗ある者たちの見る幻想～」の主要人物を務める。流れるような黒い長髪と、美しい容姿を持った大和撫子。

元ネタは長野県北部に伝わる昔話「黒姫伝説」で、室町時代後期から戦国時代初期にかけて信濃を支配した高梨家の姫君。また上水内郡信濃町にある黒姫山は彼女の名に由来する。実在した人物の可能性もあるが、『FGO』においては物語の登場人物という側面が色濃く表れている。ちなみに「黒姫伝説」はカルデアのライブラリにも登録されている模様。

「黒姫伝説」とは、岩倉池に住む大蛇(文献によっては竜)が美しき黒姫に恋をする、というのが物語の起点だが、その過程や結末はかなり枝分かれしており、確認出来るだけでも「水害を起こす竜を鎮めるため黒姫が生け贄になる」「黒姫が邪悪な蛇を退治する」「竜と相思相愛になって嫁ぐ」「宝刀を携えて蛇退治の旅に出る」といったものがある。伝承の複合体であるためか、黒姫自身も過去の記憶が殆ど思い出せなくなっていて、再臨時の台詞では「私は確かに黒姫。されど、何を成したかは曖昧なものにございます。蛇を殺したか…蛇に嫁いだか…偉業を成した英霊たちとは違う、あやふやな物語の姫…」と語る。右目に付けられた傷も何故付いたのか分からない模様。つまり、彼女がどのような過去を辿ってきたのかはプレイヤー自身の解釈に委ねられている。

第一再臨は大蛇退治の旅に出た伝承をベースとしており、大きな旅笠を持つ。かなり動きづらそうな格好だが戦闘には支障が無い様子。第二再臨は大蛇の退治に成功した伝承がベース。「怪しき蛇に求婚される事もない」と安堵しているところを見るに、自分に言い寄ってきた蛇を、かなり疎ましく思っているようだ。この形態では何故か現代風の黒セーラー服を着用し、蛇を退治した宝刀を携える。かけている眼鏡は視力矯正用ではなく右目の傷を隠すための伊達眼鏡。第三再臨は、これまでとは打って変わって蛇に嫁いだ、もしくは生け贄となった伝承がベースになり、振袖に蛇の鱗らしき装飾が施された花嫁衣装を着ると同時に、背景には蛇のようにも見える雲が浮かぶ。

余談だが、宝具「黒姫物語・髪流くろひめものがたりかみながし」の演出は退治版の伝承に由来し、プロフィールにも退治版が伝説の例として挙げられている。

人物像

武家の生まれだけあって品行方正。清姫や刑部姫よりずっと姫らしい。長野の生まれだからか蕎麦が大好物で、種火と合わせて食べようとしたり、特別な蕎麦が用意されている事を期待してイベントに赴こうとしたり、蕎麦の種類が増えた現代に驚くなど、筋金入りのようだ。彼女が振るう宝刀は祖先が源頼朝から拝領したものであり、そのためか匂いで源氏かどうか判別がつく。

また人の御髪おぐしを手入れするのを好み、カルデアに召喚されてからは、色んなサーヴァントの髪をお手入れするという、まるで理容師のような事をしている。絆レベルを上げると、我慢出来なくなって主人公の髪をもお手入れし始める。最初は刀で切ろうとしていたみたいだが。何気に今までいなかった床屋ポジション。一方で髪が傷むのを嫌う。

可愛い猿にも目が無いようで、柿を与えようとしたほど。彼女が猿を可愛がるようになったのは、旅の途上で橋の無い急流を渡らなければならなくなった時、現れた猿の群れが手と手を取り合って、自分たちで即席の橋を作ってくれた出来事がきっかけだと、バレンタインイベントで明かされた。

マスターたる主人公とは主従関係を結びつつも、成すべき者が一人しかいなかったがために、自分と同じように、身に合わない大任と重荷を背負わされた主人公に対して親近感を抱いており、無意識のうちに頭を撫でていた。まさかのお姉さん属性発揮である。またバレンタインイベでは、「私は蛇を愛する者ですが、蛇しか愛せないわけではない」と意味深長な言葉を投げかけている。

戦闘能力

戦闘においては大蛇を討伐した伝承がメインとなる。生け贄や嫁いだ伝承だと戦えないからね、しょうがないね。

姫の身でありながら冴えた剣術と身体能力を駆使し、父から授けられた宝刀を振るう。また黒姫の長髪は美しいだけでなく何かしらの特徴的な力が宿り、自分の髪を刀で切り落として、それらを炎や刀剣に変じたり、髪そのものを巨大な剣に見立てて切り裂く事も可能。魔術世界では自分の髪は最高の触媒となる設定があり、最大限に活かしているのだろう。ちなみに髪は切ってもいつの間にか元通りになる。

宝具「黒姫物語・髪流」では自ら髪をバッサリ切り、その髪の束を触媒にして高梨家に伝わる宝刀の力を強化。そして「在るべき場所へ向かう」という因果に根差した追跡機能を発現。すなわち敵対者を刀で的確に刺し貫ける訳である。これは「蛇を倒す旅に出た時、神仏に祈りながら切った髪を川へ流し、進むべき道を乞うたところ、髪が川上へと遡上して行く先を教えた」「黒姫から刀と髪を託された白髪の翁が大蛇の住む池にこれらを放り込むと、蛇が刀を呑み込んで自滅した」という伝説の性質に由来したもの。

一方、手鏡を上空に投げて敵の頭上から光を降らせるエクストラアタックは、嫁いだ伝承にある、「竜から授かった手鏡を空に投げて嵐を止めた」出来事に由来する。嫁ぐ際に竜に乗って別の山へと移り住んだからか、大抵の乗り物や動物を人並み以上に乗りこなせる騎乗:Cのクラススキルも持つ。

水害を引き起こして町を呑み込もうとした竜を、高梨家と縁故があり、地獄谷の主でもある山神が焦熱を以って水を蒸発させ、最後は竜を追い払ったり、白髪の翁から導きを受けて見事大蛇の討伐に成功した事から、詳細こそ定かではないが、黒姫は何らかの神仏の加護を受けているとされ、戦闘でも山神の加護や地獄谷の焦熱を使用している。

☆4セイバーとしては比較的高ランクな魔力:Aを持っており、メドゥーサ(Fate)の石化能力を、目を逸らすだけで無効化出来る上、対魔力:Bもあるため大魔術や儀礼呪法等を以ってしても黒姫に傷を負わせるのは困難。一介の姫にも関わらず高い魔術防御を獲得しているのも、ひとえに神仏の加護のおかげであろう。ちなみに☆4セイバーで魔力:Aを持つのは黒姫で4人目。

サーヴァントとしての能力

ステータス

クラス：セイバー
身長／体重：157cm・45kg
出典：黒姫物語
地域：日本
属性：秩序・善　　副属性：地
実在の人物である可能性もあるが、サーヴァントの黒姫は物語の登場人物としての属性が強いため地属性
性別：女性
パラメータ

筋力：C 耐久：C 敏捷：B 魔力：A 幸運：C 宝具：B
スキル

山神の加護:B

あるバージョンの伝承では、怒った蛇が大水を用いて街を飲み込もうとしたが、土地の山神（地獄谷の主）が焦熱にてその水のほとんどを蒸発させて護ったとされる。また髪と剣で蛇を退治した場合も、白髪の翁の導きがあったとされる。それも人ならざるものであった可能性は高い。詳細は定かではないが、黒姫が何らかの神仏の加護を受けているのは確かである。

霊妙なる御髪:A

民たちを救うべく城を出たのち、黒姫は切った髪を川に流すことで向かうべき場所を知った。さらに出会った翁に渡したのも宝剣と髪であり、それらが蛇の撃退に結びついた。古来より女性の髪には霊的な力が宿るとされているが、特に黒姫の髪には特徴的な力があると考えられる。その髪は魔術的な干渉があれば（場合により、なくとも）様々な霊寵をもたらす可能性があり─── そして純粋に、美しい。
宝具
黒姫物語・髪流（くろひめものがたり・かみながし）
ランク：B / 種別：対人宝具 / レンジ：1～50 / 最大補足：１人

霊的な力を具えた髪を一気に切断し、その力を以て高梨家に伝わる宝剣の力をブーストする宝具。「蛇を倒す旅に出た際、『進む道をお教えください』と神仏に祈りながら髪を切って川に流したところ、不思議なことに髪が川を遡り、行く先を教えた」「池に髪と剣を投げ込むと蛇がそれを飲み込んで死んだ」という伝承に由来する性質を持つ。つまり髪と共に流された宝剣は、その刃の切れ味を強化されたうえで、「在るべき場所に必ず向かう」という因果に根ざしたホーミング的機能を発揮するようになる。
伝承強度的に比べるべくもないが、牛若丸の遮那王流離譚と似たタイプのエピソード宝具であり、『黒姫物語・六地獄焦熱』『黒姫物語・岩倉池の蛇』なども存在する。

ゲーム内性能

イベント「育て！マイ・リトル・ドラゴン～鱗ある者たちの見る幻想～」にて実装された恒常星４セイバー。カード編成はQQAAB。

「大蛇を退治した」あるいは「蛇に嫁いだ」という相反する伝承を併せ持つためか、彼女の宝具及びスキルは、敵の〔竜〕・〔蛇〕属性に対しては特攻を、味方の同属性にはバフを撒けるトンデモ性能を誇る。言わば無慈悲なドラゴンスレイヤーの面と、蛇のお嫁さんらしい内助の功が両立しているようなもの。したがって〔竜〕・〔蛇〕属性への特攻アタッカー兼火力サポーターが黒姫の主な役割となる。特攻対象のクラスはランサーが多く、出現する機会も比較的多いので、セイバーの黒姫が相性有利を取りやすいのも嬉しい。スキルも回避、タゲ取り、自身の宝具火力強化とシンプルかつ便利なものが揃っている。

他のサポーターから火力支援を受けずとも、「山神の加護」の宝具威力バフだけで特攻対象に高い火力を出せる上、「黒姫物語・髪流」は必中＋防御無視を持つ事からギミックに対処しやすく、Arts攻撃耐性低下もあるのでキャストリアシステム等で宝具を連打すれば、敵が可哀想になるくらいの大ダメージをぶち込める。つまり高HPの〔竜〕・〔蛇〕属性が出現する高難易度クエストでは、ほぼ確実に出番がある。本当に恒常の性能か？宝具で3ターンの間、敵に〔竜〕属性を付与するゲオルギウス(Fate)と組ませると、特攻対象を大きく広げられるため相性抜群。

ただし、黒姫の特攻火力や支援能力は、〔竜〕・〔蛇〕属性あってこそのものであり、敵味方にそれらの属性がいない場合は性能を最大限に引き出せなくなるのが難点。また同じセイバーのシグルド(Fate)やジークフリート(Fate)が主な競合相手となる（一方で竜や蛇にもバフを撒けるのが黒姫の強み）。

キャラクター性能

HP	（Lv1/Lv80/Lv100） 1899/11873/14396
ATK	（Lv1/Lv80/Lv100） 1622/9735/11787
COST	12
コマンドカード	Quick/Quick/Arts/Arts/Buster
所持属性	サーヴァント、地属性、秩序属性、善属性、人型、女性騎乗、ヒト科

スキル

保有スキル
山神の加護:B (CT8→6)	自身に回避状態を付与(2回・3T) ＆毎ターンスター獲得状態を付与[Lv.](3T・5→15個) ＆宝具威力をアップ[Lv.](3T) ＋自身を除く味方全体の〔蛇・竜〕の宝具威力をアップ[Lv.](3T)
霊妙なる御髪:A (CT8→6)	自身のQuickカード性能をアップ[Lv.](3T) ＆Artsカード性能をアップ[Lv.](3T) ＆クリティカル威力をアップ[Lv.](3T) ＋自身を除く味方全体の〔蛇・竜〕のクリティカル威力をアップ[Lv.](3T)
黄金律(蛇＆体):B (CT8→6)	自身に〔蛇・竜〕に対するターゲット集中状態を付与(3T) ＆弱体無効状態を付与(1回・3T) ＆毎ターンHP回復状態を付与[Lv.](3T・500→1000) ＆NPを増やす[Lv.](20→30％) ＆フィールドにいる〔蛇・竜〕の対象の数に応じて自身のNPを増やす(10×ｎ％)
クラススキル
対魔力:B	自身の弱体耐性をアップ
騎乗:C	自身のQuickカードの性能を少しアップ
アペンドスキル3
対ライダー攻撃適性

宝具

黒姫物語・髪流（くろひめものがたり・かみながし）
カード種別：Arts	ランク：B
自身に必中状態を付与(1T) ＆防御無視状態を付与(1T) ＋敵単体に超強力な〔蛇・竜〕特攻攻撃[Lv.]＜OCで特攻威力アップ＞＆Arts攻撃耐性をダウン(3T)

余談

2025年1月11日のカルデア・サテライト・ステーションにて、黒姫の実装が発表された時、彼女は第二再臨の姿をしていた。黒髪ロングに黒セーラー服、日本刀、眼鏡という2000年代の伝奇アニメを彷彿させる王道を征くスタイルに、多くのマスターが興奮し、関心を持ったとか。
　
黒姫の愛称は「くろひー」……と思いきや、既にその愛称は黒髭ことエドワード・ティーチ(Fate)に使われていたため、黒髭は「汚い方のくろひー」「身長2mの方のくろひー」といった具合に呼ばれてしまった。
　
黒姫の父親である高梨政盛は、上杉謙信、すなわち長尾景虎(Fate)の曽祖父にあたり、若干遠いとはいえ親戚関係。そのためか黒姫が景虎に言及する台詞がある。上水内郡は、新潟県との県境に面した長野県北部に位置するので距離的にも近い。
　
古代の日本では、水害が起きると「龍神が暴れた」と解釈される事が多く、実際、竜や蛇の地名が付くところは水害が起こりやすい地域である。あの八岐大蛇も元を辿れば洪水や河川の氾濫が原型だという。長野県は川の多さから水害が大変起こりやすかったため、黒姫伝説に登場する竜もしくは蛇も水害を基にしているのは間違いない。竜が山神に撃退されたり、狩人と化した黒姫にスレイされたり、または竜に嫁いで怒りを鎮めてもらう結末は、当時の人々が如何に水害を畏れていたのかを物語っていると言えよう。