悪ノ娘とは、悪ノPことmothyが鏡音リンを用いて制作したリンオリジナル曲である。
概要
投稿日は2008年4月6日。
栄華を極める一方で圧政で民を苦しめた暴君王女が恋をし、戦を起こし、処刑されるまでの生涯を歌った歌であり、歌自体が一つの物語となっている。
暴君王女による歌は鏡音リンが担当。PV等でも彼女を王女として見立てている。作中では他にも(自分と)顔の似ている召使、青い人や緑の女、赤き鎧の女剣士など他のVOCALOIDを彷彿とさせるキャラクターが多数登場する。
投稿された動画について
ニコニコ動画への投稿に先立ちPIAPROで楽曲を公開し、イラストを集めたという経緯がある。後に悪ノP作品全般で関わりを持つことになる壱加氏とはここで出会った。動画の作成は悪ノPが担当している。
動画中では王女が言う「さあ、跪きなさい」のセリフから、oyz(←跪いてる人の様子)の弾幕がよく貼られている。また、公開された当初は登場人物の名前は語られることはなかったが、王女の愛馬のみジョセフィーヌという名前である明かされていた。この点と、2007年末から発生していた「クリプトン最大の誤算」のネタを合わせて「ジョセフィーヌ=ロードローラー」と言う派生ネタも登場している。
歌詞
Lyrics | 悪ノP(mothy) |
Music | 悪ノP(mothy) |
Illustration | 壱加 |
Vocal | 鏡音リン |
「オーホッホッホッホ。さあ、ひざまずきなさい!」
むかしむかしあるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨するは
齢十四の王女様
絢爛豪華な調度品
顔のよく似た召使
愛馬の名前はジョセフィーヌ
全てが全て彼女のもの
お金が足りなくなったなら
愚民どもから搾りとれ
私に逆らう者たちは
粛清してしまえ
「さあ、ひざまずきなさい!」
悪の華 可憐に咲く
鮮やかな彩りで
周りの哀れな雑草は
嗚呼 養分となり朽ちていく
暴君王女が恋するは
海の向こうの青い人
だけども彼は隣国の
緑の女にひとめぼれ
嫉妬に狂った王女様
ある日大臣を呼び出して
静かな声で言いました
「緑の国を滅ぼしなさい」
幾多の家が焼き払われ
幾多の命が消えていく
苦しむ人々の嘆きは
王女には届かない
「あら、おやつの時間だわ」
悪の華 可憐に咲く
狂おしい彩りで
とても美しい花なのに
嗚呼 棘が多すぎて触れない
悪の王女を倒すべく
ついに人々は立ち上がる
烏合の彼らを率いるは
赤き鎧の女剣士
つもりにつもったその怒り
国全体を包み込んだ
長年の戦で疲れた
兵士たちなど敵ではない
ついに王宮は囲まれて
家臣たちも逃げ出した
可愛く可憐な王女様
ついに捕らえられた
「この 無礼者!」
悪の華 可憐に咲く
悲しげな彩りで
彼女のための楽園は
嗚呼 もろくもはかなく崩れてく
むかしむかしあるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨してた
齢十四の王女様
処刑の時間は午後三時
教会の鐘が鳴る時間
王女と呼ばれたその人は
一人牢屋で何を思う
ついにその時はやってきて
終わりを告げる鐘が鳴る
民衆などには目もくれず
彼女はこういった
「あら、おやつの時間だわ」
悪の華 可憐に散る
鮮やかな彩りで
のちの人々はこう語る
嗚呼 彼女は正に悪ノ娘
関連動画
ヒットした要因
最大の要因は、この作品が持つストーリー性と裏表からなるシリーズ性にある。
投稿された直後の3週間は再生数が伸びず、週刊VOCALOIDランキングではランキングの対象外となってしまった。ちなみに日刊VOCALOIDランキング#62(2008/4/12)においては、集計対象の期限日にランクイン。その後の鏡音新曲ランキング#2にもランクインしており、この2つのランキングでその姿を確認することができる。両方のランキングを見る限り、日刊のランクインによりある程度の注目を集めたことがわかるが、概ね作品発表から1週間で2000再生/200マイリスト程度であったことが確認できる。
そのままの規模で留まるかと思いきや、2008年4月29日に悪ノPが『悪ノ娘』の裏視点を歌った『悪ノ召使』を発表したことで流れが変わる。同じく物語形式で歌われた『悪ノ召使』には『悪ノ娘』では隠されていた真実が語られており、その意外な真相と悲しい結末に多くのユーザーが涙した。このようなアンサーソング形式で投稿された作品の前例として『ココロ』『ココロ・キセキ』の例が挙げられるが、同一作者による投稿という点において『悪ノ娘』・『悪ノ召使』は特異であったといえる。
『悪ノ召使』の投稿により2作品とも再生数が伸び、『悪ノ娘』は週刊VOCALOIDランキングでのランクインは#31(5月6日発表)で、順位は5位を記録した。(このとき『悪ノ召使』は初登場3位だった。)
『悪ノ娘』と『悪ノ召使』は2つ(表裏)で1つの作品、「悪ノシリーズ」として見られるようになり、かなりの数のPV・歌ってみた作品・自己解釈作品が投稿された。これらはタグ「悪ノ派生リンク」によってまとめられている。また、悪ノP自身も、後続の『リグレットメッセージ』『Re_Birthday』『白ノ娘』『トワイライトプランク』などの作品群によって、「悪ノシリーズ世界観」の拡張とも観考えることのできる試みを継続している。
よく調教されたVOCALOIDが再生数を伸ばす中、詩のストーリー性で再生数を伸ばした稀有な作品でもあり、この功績はVOCALOID作品の別の可能性を見出したとも言える。
週刊VOCALOIDランキング順位推移
act2版
既存の鏡音リン・レン楽曲がact2の発売をきっかけに改めてact2を用いた動画の公開を行う中、 この曲もact2を用いた作品が2008年7月28日に公開された。
同時に発表された『悪ノ召使』act2版は動画内で不評のコメントが散見されたが、 この『悪ノ娘』はそれほど問題視されなかった。(なお、他の鏡音楽曲と同じく、初代とact2のどちらがよいかの議論は続いている)
全体的に聞き取りやすくなり、発音も力強くなっただけでなく、ところどころで流暢になり、特に「この無礼者!」のセリフは絶賛されている。
他メディアへの進出
舞台化
何件もの演劇化のオファーがあったが、悪ノP自身が演出や楽曲提供を行うことは殆ど無かった。規模が大きかった公演としては次に記す 「悪ノ娘~凄艶のジェミニ~」が挙げられる。他の主な企画として、ユーザーが集まり結成した 「劇団ブリオッシュ」による「~悪ノ×××~」(2008年11月立ち上げ/2010年4月11日公演・赤羽会館)が挙げられる。
悪ノ娘~凄艶のジェミニ~
2010年1月27日から31日に渡ってX-QUESTによって「悪ノ娘」、「悪ノ召使」、 「リグレットメッセージ」を原作とする舞台「悪ノ娘~凄艶のジェミニ~」が上演された。 東京芸術劇場にて上演され、昼夜合わせて計9回の公演となった。声の出演として下田麻美がキャストで参加している。
この公演には悪ノP(mothy)は楽曲「トワイライトプランク」を劇中歌として提供しており、この楽曲を含んだサウンドトラック「悪ノ娘~凄艶のジェミニ~ ボーカル&サウンドトラック」にも収録されている。
シナリオに関しては、悪ノPの方からある程度の設定やプロットは提供しているが演出・脚本は企画者側が担当し、ある程度のオリジナルの要素を含んでいる。 イメージイラスト担当が壱加が参加している他、制作協力としてクリプトン・フューチャー・メディア社が参加しているなどかなり公式に近い企画となった。
小説化
現在PHP研究所からシリーズ「悪ノ娘ノベルシリーズ」が発刊されている。このシリーズでは悪ノPが自ら筆を取り楽曲中では触れられなかった部分を中心に独自の世界観を展開している。
第1巻「黄のクロアテュール」から始まり「緑のヴィーゲンリート」、「赤のプラエルディウム」、「青のプレファッチオ」と続いている。 また、「ヴィーゲンリート」と「プラエルディウム」の間で「悪ノ間奏曲」と題してシリーズの世界観やイメージイラスト等を収蔵したガイドブックが発刊された。
作品にはクリプトン・フューチャー・メディア社やインターネット社から発売されている各種VOCALOID関連製品をモチーフにしたキャラクターが登場する。 これは、「悪ノ娘」の初期構想で各キャラクターを登場させていたことを受けたものであると考えられる。そのため各権利者名が「作品協力」という形で巻末に記載されている。
黄のクロアテュール
2010年8月10日にPHP研究所から「悪ノ娘ノベルシリーズ」1作品目として発売された。表紙・挿絵のイラストを担当しているのは壱加。他に憂、ゆのみがそれぞれ口絵・ピンナップを提供している。 初回特典として悪ノPへのインタビューや登場人物の設定画などが含まれている「悪ノ解説書」が付属した。
物語は各登場人物の1人称視点(主にアレン(召使)とジェルメイヌ(赤の騎士))で進行していく。 時間軸としては王女リリアンヌの14歳の誕生日から始まり、ルシフェニアでの革命までの様子が記されている。ニコニコ動画にアップされている動画では「悪ノ娘」、「悪ノ召使」に相当する部分である。
記事→「悪ノ娘 黄のクロアテュール」
緑のヴィーゲンリート
2011年2月25日にPHP研究所から「悪ノ娘ノベルシリーズ」2作品目として発売された。表紙・挿絵のイラストを担当しているのは鈴ノ助。他に壱加、なぎみそ、憂、かる、ゆーりん@北乃友利、吉田ドンドリアンがそれぞれ口絵を提供している。 初回特典には壱加のイラストを交えたキャラ紹介やオリジナル漫画「悪ノ娘 白のノヴェレッテ」(原作:悪ノP、漫画:CAFFEIN)を収録した小冊子「悪ノ日記」が付属した。
ストーリーは「黄のクロアテュール」同様、各登場人物の1人称視点で進行していく。動画「悪ノ娘」の中で登場した緑の髪の少女ミカエラの誕生の秘密から、動画「白ノ娘」で登場した白の髪の少女クラリスとの出会いやその後2人が時代の流れに翻弄されていく様子を主に描いた作品。 ニコニコ動画で公開されている動画では「白ノ娘」に相当する部分である。また、小説シリーズ内で初めて「大罪の悪魔」や「大罪の器」、「魔導師『エルルカ・クロックワーカー』」と言った「七つの大罪シリーズ」のキーワードが作中に出現した。
赤のプラエルディウム
2011年12月23日にPHP研究所から「悪ノ娘ノベルシリーズ」3作品目として発売された。表紙・挿絵のイラストを担当しているのはゆーりん@北乃友利。その他に壱加、憂、たま、吉田ドンドリアン、ざいん、りょーの、村上ゆいちがそれぞれ口絵を提供している。 初回特典として設定画や作品の解説が収録された小冊子「悪ノ手記」が付属した。
作品の舞台としては前2作から5年が経過した世界から始まる。物語は主にユキナ=フリージスというルシフェニア地方の各地を旅する少女とマーロン国王カイル=マーロンの視点で進んでいく。
青のプレファッチオ
2012年3月23日にPHP研究所から「悪ノ娘ノベルシリーズ」4作品目として発売された。表紙のイラストはゆーりん@北乃友利が、挿絵は壱加が担当をしている。その他に初、吉田ドンドリアン、電鬼、オサム、憂、ばたこ、GANらがそれぞれ口絵を提供している。
作品の舞台としては前3作では訪れることがなかったマーロン国が中心となる。前作に引き続き物語は主にユキナ=フリージスとカイル=マーロンの視点で進んでいく。
PV
関連項目
- VOCALOIDオリジナル曲の一覧
- VOCALOID殿堂入り
- 鏡音リン
- 悪ノ派生リンク
- 悪ノP(mothy)
- 悪ノ召使
七つの大罪シリーズ - 悪ノ王国~Evils Kingdom~
- EXIT TUNES PRESENTS Vocalolegend feat.初音ミク
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