クロスオーバーSUV(Crossover Utility Vehicle)とは、自動車のボディタイプの一種である。クロスオーバー車とも。略称はCUVまたはXUV。悪路走行を考慮しているかどうかは車種によって異なる。
概要
舗装道での使用を主眼とした、モノコックボディのSUV。クロカン車ことクロスカントリーSUVやピックアップトラックベースの(狭義の)SUVが悪路走行や重量物牽引を考慮したラダーフレームを持つのに対し、一般的な乗用車と同様の車体構造を持つSUVを指す。
「クロスオーバー」とは「異なる要素の掛け合わせ」といった意味であるが、クロスオーバーSUVは、SUVに乗用車−大抵はステーションワゴンまたはハッチバック(トールワゴンを含む)、稀にセダンやクーペ–の要素を掛け合わせたものである。
モノコックボディは補強無しに悪路で使用すると骨格が歪んでしまう。しかし、岩場を走行したり、車体をぶつけたりしない限りは問題にはならない。足回りは四輪独立懸架またはフロントストラット+リアトーションビーム...要は普通の乗用車と同じ形式である。
普通のハッチバックやステーションワゴンの車高を上げてSUV用の大径タイヤを履かせただけ...といったモデルがある一方、ある程度の不整地や悪路の走行を前提に、4WD機構に関しては副変速機などを持つ本格的なものを積んでいるモデルもある。
クロスオーバーSUVは、車体の高さのため乗る時に背を屈める必要がない、目線が高いので視界が良い、室内が広いなどの機能的なメリットに加え、豪華さなどの付加価値を演出しやすいことが受けて各メーカーがこぞって手がけ、廉価モデルから高級モデルまで揃っている。2010年代に入ってからはセダンやステーションワゴンを押しのけ、乗用車のスタンダードとなった。
背の低い乗用車と比べてのデメリットとしては、重心が高いためコーナリング時のロールが大きくドライバビリティが悪い、車重の大きさから事故での衝突時に相手に与える損害が大きい、タイヤがSUV仕様の大径なので維持費がやや高い、タイヤの大きさのため小回りが効きづらい...などが挙げられるだろうか。また、大型SUVは車高が高くなりすぎ、死角が増えたり乗降性の悪化を招くことがある。
クロスオーバーSUVは空気抵抗と車重が大きいため、「燃費が悪くエコではない」とみなされる一方で、背の高さを生かして床下にバッテリーを敷き詰めることができるので、大量のバッテリーを搭載する必要がある電気自動車やプラグインハイブリッド車とは相性が良い。電気自動車を手がける自動車メーカーの多くはSUVタイプを主力としている。
起源
この手の車種の起源は、定義によって様々ありえるが、オフロード車とワゴンを掛け合わせるという発想は、1946年のWillys Jeep Station Wagonあたりにさかのぼるだろうか。
クロスカントリー志向のモノコックボディのワゴン...という意味で言えば、1972年東北電力の要請で開発された富士重工業の「レオーネエステートバン4WD」あたりが元祖であろう。当時の4WD車はジープやランドクルーザーのような幌付きのトラックタイプの自動車しかなく、冬は寒く騒音や振動も激しく大変な忍耐を要求されるものであった。冬の林道を巡回するのに適した車として、一定の快適性を有する乗用車ベースの4WD車への需要が見出されたのである。またフィアット・124ベースでロシアの悪路を走行するために改設計が施されたラーダ・ニーヴァなどもそういった実用志向のクロスオーバー車である。
「クロスオーバーSUV」というジャンルの確立する直接の契機となったのは1984年に「本格4×4スポーツワゴン」をうたい文句に発売されたジープ・チェロキーXJである。XJチェロキーはフルタイムまたはパートタイムの4WD機構を有し、高い悪路走破性を備えつつも、都会的なスタイルと手ごろな価格が受けて世界的に大ヒット。FRのグレードも設定された。
関連静画
関連項目
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