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公認心理師とは、保健医療・福祉・教育などの分野において、心理に関連した支援業務等を行う日本の国家資格。
「臨床心理士」等の既存資格があるためか「公認心理士」と書き間違えやすいが「公認心理師」である。略して「心理師」とも言う。
概要
2015年に「公認心理師法」が成立・公布され、2017年に同法が全面施行(2016年中から一部施行)。2018年に第1回の国家試験が実施され、2019年に入ってから第1回試験の合格者に登録証が交付された。すなわち2019年に第1陣が生まれたばかりの、かなり新しい国家資格である。
同法内での定義はこうある。
(定義)第2条 この法律において「公認心理師」とは、第28条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
(※公認心理師法 | e-Gov法令検索 より引用)
後述するように、民間資格であった「臨床心理士」などを大いに下敷きとした国家資格であり、受験資格に大学院修了程度以上を要求している事も臨床心理士資格から引き継いでいる。
医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、看護師などと同じく名称独占資格である。すなわち公認心理師資格を有していないものが「公認心理師」と名乗ることは公認心理師法で禁じられているほか、さらに「心理師」という略した名称も同じく公認心理師資格を有しているものしか使用することができない(「心理士」であれば制限はない)。
背景
日本には「公認心理師」制度がスタートするより以前から心理に関する業務を行う人々が必要とされており、例えば医療の現場における「心理療法士」や教育現場における「スクールカウンセラー」などが業務を行っていた。
しかしこれらの業務を行うための資格としては民間資格しかなかった(少し分野が重なる「精神保健福祉士」という国家資格はあったが、こちらの業務はソーシャルワークが主である)。その民間資格も乱立しており、玉石混淆の状態にあった。Wikipediaに「日本の心理学に関する資格一覧」などという記事が存在していることなどからもそれが見て取れる。
しかしそういった多数の民間資格の中でも、「臨床心理士」は公益財団法人である「日本臨床心理士資格認定協会」が認定しており、また資格試験への合格を求めておりその受験資格も指定大学院修了者もしくは医師免許取得者に限定して比較的厳密な認定を行っていたことから高い信頼性を有しており、医療機関等でも臨床心理士が多数活躍していた。他にも「臨床発達心理士」「学校心理士」などは、それぞれの職能団体が存在する程度にはメジャーなものであった。
しかし、それでも「臨床心理士」「臨床発達心理士」「学校心理士」等々は民間資格でしかないことから、「名称独占資格ではない。つまり、それぞれの資格試験に合格していない者が勝手に「〇〇心理士」を名乗ることを制限できない」「守秘義務が法で課されていない」などと言った問題点が存在していた。保険医療における診療報酬の規定においても、「臨床心理技術者」と表現されており「〇〇心理士」とは明記されていなかった。
こういった背景から、「こういった民間資格としての心理士を国家資格化した「医療心理師」制度を創設するべきではないか」といった議論がなされていた。そしてその議論の中で「公認心理師」という名称となり(「医療にのみ限定するべきではない」という観点からか?)、制度が整えられたのである。
公認心理士制度が誕生して以後の診療報酬改定においては、精神科医療行為の診療報酬を規定した項目の文面中に「公認心理師」の名称も登場してきており、今後の精神科医療の場での公認心理師の存在感は増していくと思われる。
二つの職能団体
公認心理師の職能団体、たとえば医師における「日本医師会」のようなものは2021年3月7日現在、「日本公認心理師協会」と「公認心理師の会」(五十音順)の2つが併存している。
どちらかがオフィシャルなものでどちらかがアンオフィシャルなものか?と思われるかもしれないが、2023年4月に日本公認心理師協会が公益社団法人としての認可を取得[1]するまでは双方ともに「一般社団法人」でありその点では並んでいる状態だった。
また双方がそれなりの団体(例えば、前者は「日本心理臨床学会」や「日本臨床心理士会」、後者は「日本心理学会」に後援された「公認心理師養成大学教員連絡協議会」)との協力関係にあり、片方がいい加減な怪しい団体というわけでもないようだ。なぜ統一されずに2つ結成されてしまうことになったのかについては、調べてもよくわからなかった。
とは言え、「職能団体が二つあってどちらもそれなりに真面目な団体」と言うこの状況は、公認心理師となった人々にとって混乱の元にはなっているようだ。いずれ統一されるのかもしれない。
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関連項目
脚注
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