机上の空論とは、実現性が薄い、あるいは理論上・頭の中だけの考えの事である。
概要
単純に「空論」だけでも現実に即していない理論のことを指す。似た言葉に「紙上談兵」「空中楼閣」などがある。
なお空中楼閣というのは蜃気楼のことで、地に足がついていないということ。砂上の楼閣と混同しないように注意。
例えば、「共産主義」などは、理論としては成立しているものの、実現するまでに至った社会は存在せず、今のところは机上の空論である。(将来的に実現する可能性がゼロというわけではないが)
実際に実現していない、証明できていない理論という意味では、仮説や思考実験などもこれにあたる。
仮説と思考実験
科学においては、しばしば仮説が立てられたり、思考実験が行われたりする。
仮説というのは、実際の現象に対して「仮にこのようになっていれば筋が通る」という説のことである。これは机上の空論とは言わない。なぜなら、実験や計算によって確認することが仮説の目的だからである。
科学においては、立てた仮説を崩すための実験を行なっていく。ひとつでも仮説と食い違う方法があれば、仮説には間違いがあるということである。そして、どんな実験でも間違いが見つからなかった仮説は、「おそらく現状の科学の範囲では十分正しい」というお墨付きを与えられ、理論に格上げされる。
(このことからもわかるように、自分の仮説が正しいと主張し、否定するデータを認めないのは疑似科学である)
では思考実験のほうはどうか。これは仮説とは逆で、既にある理論や他の仮説を基に、「その理論を適用すれば、このような状況ではこういうことが起こるだろう」という理論上の実験で、理屈だけのものを現実を通して表現することで、理解しやすくする意味がある。
例としては、「どんな文章も有限通りの文字の並びのひとつであるため、ランダムにタイプライターを叩く猿が無限時間の間タイプし続ければ、必ずあらゆる作品が出力されることになる」という「無限の猿定理」がある。
これは、無限時間というものの特殊性を示したもので、時間を無限とすると、どんな確率の低い事象でも、0でない限りは絶対に無限回起こるということを示している。
カオス理論上はどんな小さな変化から大きな結果の違いが導き出されるか予測できない、という「バタフライ効果」も思考実験のひとつ。
また哲学においては、実際に実験などが行えないため、しばしば思考実験が行われる。
「船の、ひとつひとつの老朽化した部品を順番に交換してゆき、最終的に最初の部品がひとつも残らない状態になったとき、その船は最初の船と同じ船であると言えるか(自己同一性はどこからくるか)」という「テセウスの船」や、「白黒のみの環境で色について完璧に学んだ人間が、生まれて初めて外に出たときになにかを学ぶのか(知識や理論とは別にクオリアが実在するのか)」という「マリーの部屋」などが有名。
しかし、哲学上の思考実験は議論のために行われる、あくまで理論の一部であり、そういう意味では机上の空論であると言っても間違いではない。(最初から実現させる気がないので痛くも痒くもないだろうが)
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