多砲塔戦車単語

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多砲塔戦車とは、第一次世界大戦の後から第二次世界大戦の前(いわゆる戦間期)に世界で作られた「1つの台に2つ以上の""を持つ戦車」のことである。

NbFz(ドイツ)対T-35(ソビエト)

M3中戦車ルノーB1など「1つの台に2つ以上の""をもつ戦車」はこれに含まれない。

概要

第一次世界大戦で初めて登場した新兵器の一つとして挙げられるものに戦車がある。これは兵力の消耗が非常にしい塹壕での戦いを打開するために、強力な弾を通さない装甲、そしてキャタピラによる優れた踏破力をもって塹壕を突破することを的として開発されたものである。多砲塔戦車はこの概念をさらに拡大発展させたもので、複数の戦車による連携や歩兵支援を受けることなく単独にて塹壕突破を行うものとして開発が進められた。

特徴は何と言っても文字通りに「複数のを持つこと」に他ならない。これは対戦車戦闘機関銃座への攻撃を的とした大口を搭載する「」とは別に、薄する歩兵を掃討するための機小口径火を搭載した「副」を設けることであらゆる方角からの敵に対応しようという構想であった。

問題点

君たちは、なぜ戦車の中に百貨店など作ろうとするのかね?

1940年
ヨシフ・スターリン

戦車の新たなジャンルを築き上げるとして大きな期待を寄せられた多砲塔戦車だが、いざ完成してみればたちまち多くの欠点が明らかになった。

機動力の低下
多くのを搭載するということは、その分だけ重量が増すということになる。
重量が増せば当然ながら速度は低下し、橋梁通過における制限にも抵触する恐れがある。
防御力の低下
増加した重量の中で機動力を補うには足回りやエンジンの改良が必要だったが当時の技術ではまだ困難なものであり、最終手段である「装甲の軽量化」を取らざるを得なかった。
例えばソ連T-28の最大装甲厚は35mmで、防御に難ありと言われたドイツIV号戦車Dと同様である。
体の大
を載せればそれを駆動するための設備や戦闘室も必要になり、そういったものを詰め込むには体そのものを大化せざるを得ない。
化するということは被弾率が上がる、つまり「的が大きくなる」といっても過言ではない。
戦闘力の低下
多方向の敵に対応するというコンセプトでありながら、それぞれのが持つ射界はごく限られていた。
例えば左側面から敵が来ても右側面のでは反対側のが邪魔となって射撃ができない。さらに戦闘によって破壊された場合は、全に死となって対応できず手も足も出なくなる。
揮系統の混乱
にそれぞれ乗員を配置すれば、それらに示を出す長の揮は非常に煩雑なものとなる。
それぞれの方角向や撃のタイミングを一つ一つ伝達せねばならず、それが一刻を争う戦場においてはたちまち混乱を招くことになる。
整備性の悪化
化したとはいえ、それは装備を付けるための最小限のものであり居住間はごく限られていたものであった。これは戦闘に支障が出ると同時に修理なども難しいものとした。
また多くの種類の弾薬が必要となるため、補給も簡単には行えなかった。
生産価格の高騰
大きな体に複数の設備を取り付ければ、そのために必要となる費用もかさむ。
1929年には「世界恐慌」が発生し、実用性の低さもあり本ジャンルの存在価値に疑問のがあがった。

結末

このように体規模の割に実戦運用に難があるため、5か年計画で工業分野が発展しつつあったソ連以外では本格的な量産は行われなかった。

ただし戦争中のプロパガンダにおいてはその巨体を利用した民の士気高揚に一役買うこととなった。特にドイツでは工場の中に配置していかにも量産しているかのように思わせて、連合軍側を欺くことに成功している。

多砲塔戦車一覧

イギリス

Mk.III戦車(A6)
ヴィッカース社で製作された車両。多砲塔戦車の中でも最も速い、最高速度48km/hの快足を誇る。
試作2両と増加試作3両の合計5両のみ生産だったが、その後「巡航戦車Mk.I」に発展することになる。
A1E1インディペンデント戦車
ヴィッカース社で製作された車両で、その後の多砲塔戦車の流行につながった。この時ソ連が購入を打診していたものの、イギリス政府はこれ拒否した。
軟鋼製試作1両の完成をもって開発は中止された。
巡航戦車Mk.I(A9)
機動力を重視したジャンルである「巡航戦車」の最初期の車両。多以外の特徴として、世界初の「動力旋回」の搭載があげられる。足回りの構造はバレンタイン歩兵戦車にも採用された。
125両が完成し初期ヨーロッパ戦線および北アフリカ戦線に投入された。

ソビエト

T-28中戦車
T-35と同時期に製作された車両。設計はイギリスのMk.III戦車が参考になっている。多砲塔戦車というジャンルにおいては世界最多である503両が生産された。
詳しくは当該記事参照。
T-35重戦車
インディペンデント戦車の購入に失敗したため、その外見のみを模して自で独自に組み上げた車両
多くの戦闘を経験するも、ドイツ軍電撃戦フィンランド軍の巧みな戦術には太刀打ちできなかった。
詳しくは当該記事参照。
SMK重戦車
T-35の後継車両として製作された。SMKとは本が製造された「第100キーロフ工場」の顕名称の元となっているセルゲイミローノヴィッチ・キーロフSergei Mironovich Kirov)のイニシャルである。
1両のみが生産されたが、後に本を小化しつつ装甲を強化し単化した「KV戦車」へと発展する。
T-100戦車
SMK重戦車と競作になっていた車両。設計は全く異なるが外見はSMKによく似ている。
SMKから発展したKV戦車の採用の見込みが立ったため、試作車両2両のみの生産に終わった。

ドイツ

Nb.Fz.中戦車
ドイツ軍開発された車両。「Nb.Fz.(Neubaufahrzeug、ノイバウファールツォイク)」とは「新式車両」という意味である。ラインメタル社製とクルップ社製で形状やの配置が異なる。
5両が生産され、このうち増加試作の3両は戦車不足のため独ソ戦初期まで前線に赴いた。
ラーテ
陸上巡洋艦 P1000」の秘匿名称で開発された車両にはシャルンホルスト巡洋戦艦の「28cm SK L/54.5」を改造したものを、副ヤークトティーガーと同様の「12.8cm KwK 44」を搭載するという驚動地の発想に驚かされる車両である。
詳しくは当該記事参照。

日本

九一式重戦車
八九式中戦車との競作に敗れた試製1号戦車を改良し「試製2号戦車」として完成
後に中国ソ連での戦いにおいて本は有用でないことが明らかとなったため、1両のみの生産に終わった。
九五式重戦車
九一式重戦車の改良砲兵装が強化された他に、装甲の増圧も行われた。本日本本土や満州で行われた各種実用試験においても満足な評価を得られたため、制式採用されたが、機動戦を重視した大陸での戦いでは有用性は低いとみなされ、4両生産されたところで中止になってしまった。
オイ車
1942年三菱重工開発が開始された車両。「オイ」の名は「(イ号=イロハのイで1号)」に由来する。用途は対戦車兵器ではなく、重トーチカ群の突破用兵器であった。
最大装甲が150mm(なんと、全周及び体前面の厚さ)と、日本軍のみならず世界の多砲塔戦車とべても破格の重装甲であり、搭載150mm級の巨であった。1943年体の試作のみが完成した。
詳しくは当該記事参照。

フランス

FCM 2C重戦車
フランス開発された車両で、またの名を「シャール2C」という。開発了は第1次世界大戦末期で、多砲塔戦車の先祖と言えるものである。
10両が生産され第2次世界大戦から実戦に投入されるも、列車輸送中にドイツ空軍の攻撃を受けてほとんどが大破してしまった。

フィクションにおける多砲塔戦車

余談

先述のスターリンの「百貨店」発言だが、この百貨店は便宜的に訳されたもので実際はモスクワにある帝政ロシア時代に「ミュールとメリリズ」と呼ばれた店舗をしていた。これは現在の「中央百貨店ツム」である。

この百貨店首都モスクワの北およそ1kmのところにある。
南西には劇場が並び、東には連邦保安局がある。最寄モスクワ地下鉄の「クズネスキーモス」である。

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多砲塔戦車

83 ななしのよっしん
2021/08/11(水) 19:54:10 ID: YwyVEWVlN0
以外の方法で示を出すにしても…
重量制限を考慮すると、を二つ乗せる分、当然各の口径も小さいものにせざるを得ないよね
それだと敵MBT相手にしたとき相手の装甲抜けず一方的にやられるって事態が起きそうだ
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84 ななしのよっしん
2021/12/23(木) 21:45:19 ID: ffDnEq3/wz
多砲塔戦車揮問題だけど設計にもよるんじゃないかな。少なくともT-35揮はかなり難があったそうだけど。
装甲列車やさきがけみたいな河川装甲艇も一般的にが複数あるけど揮にはたして支障を来たしたのだろうか。

>>83
と多は別の概念では。世間で多の代表扱いされているT-35が多かつ多なので混同されがちだけど、多王道インペンデントみたいな単一の火力と複数の対人火力だと思う。
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85 ななしのよっしん
2022/01/16(日) 09:38:57 ID: 2Ju3UgCLm8
戦車の中に百貨店ができれば、前線で補給部隊が必要なくなっていいと思うの!
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86 ななしのよっしん
2022/01/28(金) 03:22:51 ID: ZM/34xPQlo
>>84
とすると一部のIFV(ブラッドレーとか89式とか)に付いてる眼なんかは、多コンセプトの現代的な解法のひとつと言えるかもしれんね
そこからもう一歩進んでもっと制圧力が欲しいとなった場合、多IFVみたいな兵器に実用性がある局面もあるかもしれない
例えば30mm、副12.7mm、みたいな感じで
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87 ななしのよっしん
2022/02/16(水) 13:15:26 ID: LOIwvklEl1
>そこからもう一歩進んでもっと制圧力が欲しいとなった場合
そうなったらナグマホンになってまう
>>sm28381120exit_nicovideo
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88 ななしのよっしん
2022/06/11(土) 21:12:26 ID: 6svE38qMUI
松本零士がよく描く多戦車(連装とか三連装)は実際にあったのかな?
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89 ななしのよっしん
2022/06/12(日) 00:38:22 ID: jCincLuzUO
6連装のM50オントスとか連装の60式自走無反動砲VT-1ってのはいる。ただ一般的なイメージ戦車ではなく駆逐戦車に近い。
一般的な戦車で連装ならST-2っていう戦車が設計図だけある……らしい
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90 ななしのよっしん
2022/07/04(月) 15:23:24 ID: q71fNbX902
キューポラM3中戦車多砲塔戦車にならないの?
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91 ななしのよっしん
2023/03/07(火) 23:16:26 ID: MaCs8OTnrD
今となっては社内からの遠隔操作大口機関銃載せてるタイプも増えてきてるし実質的に多砲塔戦車が復権してると言える
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92 ななしのよっしん
2024/03/10(日) 10:51:31 ID: Cubz5wNcF5
>>88
マーモン・ヘリントンの輸出用戦車FIAT3000に連装タイプがあったはず。
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