社会的距離(social distance: ソーシャル・ディスタンス)とは、
- 社会学の用語。社会において「個人と個人」「個人と集団」「集団と集団」などの間での「親近感や親近性の程度」を言う。物理的な距離とは異なる。
- 公衆衛生学/感染制御学の用語。感染症の伝播を防ぐために、個々人の間でとられる距離。「社会距離」「対人距離」とも。この距離を取って感染症を制御しようとすること(social distancing: ソーシャル・ディスタンシング)については、「社会的隔離」「社会距離戦略」「社会的距離戦略」「社会的距離拡大」「社会的距離拡大戦略」「対人距離拡大」「対人距離の確保」などとも言う。
本記事では主に上記2.について記載する。
2.の概要
主にヒト-ヒト感染する感染症の蔓延を制御するために、個々人同士での距離を取ること。必要以上に他人と接触しないこと。
単純に物理的距離を取ることだけでなく、「他人と接近する機会を減らす」という頻度的な面も含んだ概念として語られることが多い。
感染症によって伝播の形式は異なるため、対象の感染症によって必要/適切とされる物理的距離や戦略の詳細は異なる。接触感染・飛沫感染・飛沫核感染(空気感染)のそれぞれの感染症で対策が同じであるはずはないのだ。
さらに、「感染症がその社会でどれだけ蔓延しているのか」によっても左右される。そのため「いつどの時点/地域でも適用できる、統一見解」というものを定めるのは難しい。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)において
以前から存在した言葉ではあるが、COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス感染症)の対策として2020年にこの言葉が使われる機会は激増した。2019年に始まり2020年には世界的大流行(パンデミック)状態となったこの疾患は、世界中で対策が模索されたからである。その対策の一つとして、科学者らによってこのソーシャル・ディスタンシングの有効性/重要性が叫ばれるようになった。
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世界中で、このソーシャル・ディスタンシングを推奨する様々な運動/標語/Twitterハッシュタグが考案・復権され、呼びかけられている。たとえば「3つの「密」」(「密閉・密集・密接を避けよう」という標語)・「#うちで過ごそう」・「#stayhome」(家にいよう)・「#IStayHomeFor」(家にいます、○○のために)・「Stay Home, Stay Safe」「#StayAtHomeAndStaySafe」(「家にいよう、安全でいよう」)・「Stay Home. Save Lives.」(家に居よう、それが人命を救う)・「Stay the Fuck at Home」(だから家にいろっつってんだろクソ野郎!)・「#PlayApartTogether」(一緒に離れて遊ぼう)・「#QuarantineBookClub」(隔離中読書クラブ)・「A reading nation is a leading nation」(「読書する国家こそが世界を指導する国家である」。以前からある標語が再注目されたもの)などなど。
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なお、このCOVID-19においても、「許容される物理的距離」「許容できる接触頻度」の双方において「必要・適切な基準」ははっきりと定めにくい。「物理的な距離」に絞っても、「物理的距離」「最低1メートル」「お互いに手を伸ばしても届かない範囲」「1.5メートル」「1~2メートル」「1.8メートル」「6フィート(1.83メートル)」「2メートル」などの様々な基準を様々な団体が示している。とりあえず「可能なら隣の人とは2メートル離れとけ」ということか。もちろん「2メートル開ければ絶対大丈夫」というものでもないが。
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ジョーク交じりの分かりやすい表現としては、WWF(世界自然保護基金)は公式Twitterで「ジャイアントパンダ一頭分」「オサガメ一頭分」「若いオスのホッキョクグマ一頭分」「キングペンギン2羽分」と表現している。いずれも約2m相当らしい。
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1.と2.の言い分け
ちなみに1.との言い分けのために、2.の意味で「社会的距離」と表現することが避けられることもある。
その場合、2.を指すためには前述の別の表現「社会距離」「対人距離」「社会的隔離」「社会距離戦略」「社会的距離戦略」「社会的距離拡大」「社会的距離を取る措置」「対人距離拡大」「対人距離の確保」……などといった多様な言葉が使用される。
だが実情として、2.の意味で「社会的距離」と表現される事も珍しいことではなくなってしまっている。
上記の1.は英語の「social distance」(ソーシャル・ディスタンス)によく対応し、2.は英語の「social distancing」(ソーシャル・ディスタンシング)によく対応する。例えばWikipedia英語版では「Social distance」の記事は概ね上記の1.の意味で記載されている一方、「Social distancing
」の記事は上記の2.の意味で記載されている(2020年3月29日現在)。そして双方には互いに「混同しないように」という注意書きも記載されている。
ただし「social distance」という単語が2.の意味で使用されることもあるし、英語のオンライン辞書の「Social Distance」の記事にも2.の意味が掲載されているものがある[1]。すなわち、日本語での「社会的距離」と同じく英語での「social disance」も厳密な使い分けがなされているわけではない。
さらに英語の「social distance」には1.や2.の意味の他に、「パーソナルスペース」の文脈においての距離の分類の一つとしての用法もある。
ちなみに、2.の意味で「social distancing」「social distance」と言うときの「social」は「社会」と言うより「社交」「対人」と表現した方がニュアンスが近いのでは?という意見もある。「社会的」「社会」と冠する語ではなく「対人距離」「対人距離拡大」「対人距離の確保」という表現が選択されることがある理由か。
関連リンク
関連項目
- 社会
- 距離
- 濃厚接触
- COVID-19 / SARS-CoV-2 / 新型コロナウイルス
- 新型コロナウイルス関連用語
- 3つの「密」
- 密です
- #うちで過ごそう
- うちで踊ろう
- Stay Home
- Stay the Fuck at Home
- なんと!世界公認 引きこもり!
- 8割おじさん
- プーチンのソーシャルディスタンス
脚注
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