遜色急行とは、本来急行列車に使用することを想定しない格下の車両で運行される急行列車を指す俗称である。対義語は乗り得列車。この記事では遜色準急についても触れている。
概要
遜色急行という言葉が最初に使われたのは鉄道友の会誌『railfan』1978年8月号と言われている。1960年代から70年代にかけては準急・急行列車が多数設定され、それを全て賄える程急行・準急型車両がなかったため、それらより格下の近郊型車両や一般形車両を使用した定期列車が設定された。更に繁忙期になると帰省ラッシュ時の臨時列車に戦前生まれの経年車や、居住性と乗り心地が劣る剛体化客車、更にクロスシートですら無いロングシート改造車まで駆り出された。
だが、それら格下の車両を充当しても料金はしっかりと徴収していたので、遜色ある列車という意味でこう呼ばれるようになった。
発生の要因に以下の理由が挙げられる。
主な遜色急行・準急・特急
- 準急しれとこ・くなしり・らうす
釧網本線・標津線系で運転されていた準急列車。らうすが運転を開始した1962年10月から1年ほど普通列車と共通運用の戦前型機械式気動車キハ05型を使用していた。車体・座席幅が狭く背ずりも低いうえにその間隔も大正時代の木造客車レベルという有様だが、トイレは備えていたので長距離運用には何とか耐えられる物だった。なお、キハ05型撤退後も一般列車用のキハ21形が使われることがあった。 - 急行いなわしろ
只見線他で運行されていた急行列車。会津線・只見線へ乗り入れる列車には単行運転できるキハ52形、キハ53形を使用していた。急行への充当を考えてキハ52-128だけは首都圏色への塗替えを免れ、国鉄民営化後もそのままで残ったという逸話がある。 - 急行ときわ
常磐線で運行されていた急行列車。本来451・453系を使うべきところだが、これらの車両の製造が追いつかないのと冷房改造で車両不足になり、1968年10月から1978年10月まで定期列車1往復と臨時列車に近郊型の401・403系を使用していた。空気バネ台車の急行型車両に対してコイルばねの近郊型車両、デッキもなければ騒音も酷く、更に非冷房の確率も高かったときわは遜色急行の悪評を広めた列車となった。 - 急行なすの・日光
東北本線・日光線で運行されていた急行列車。本来は165系が使われるところだが、1968年10月から1976年まで下り列車1本が115系で運行されていた。このうち日光はわずか半年だけであるが本来の急行型車両である165系、特急型並の接客設備を持つ157系、そして遜色急行の115系が共存する大変珍しい事例であった。 - 急行あかぎ・ゆけむり
高崎線・上越線系で運行されていた急行列車。これも本来は165系を使うところだが、なすの・日光同様下り1本だけが115系で運行されていた。期間もなすの・日光と同じ。 - 急行かいじ・かわぐち
中央本線系で運行されていた急行列車。1968年10月から1978年10月まで1往復が115系での運行だった。1970年10月からの2年間はグリーン車(サロ165-14)を組み込んでおり、165系で唯一スカ色を纏った車両として知られている。なお115系は当時70系電車が残っていた中央本線では別格の車両で、位置づけは比較的上の方だったとか。 - 急行天竜
篠ノ井線・中央本線・飯田線で運行されていた急行列車。1978年5月から5ヶ月ほど下り1本だけ115系が使用されていた。80系から165系への置換え過程で車両が足りなくなったための暫定措置。ただし115系の中でも1000番台が使われていたのでシートピッチが広く、ボックスシートに関しては165系と同レベルの居住性だった。なお80系が使われていた頃も初期車が入ることも多く、冷房改造済み車の増えた165系が使われる列車に比べると遜色があった。 - 急行能登路
七尾線電化後、415系800番台を使用する列車が誕生。シートピッチは広くなったものの、座席幅が狭い上に3ドアデッキレス、ロングシートも存在する。なお、準急時代から能登路は格下の車両が使われることが多く、急行になってもキハ55・キハ26が使われていた。 - 急行つやま
2003年10月から廃止までキハ40系で運行。JRで最後まで残った遜色急行であり、JR最後の昼行急行だった。なお急行へのキハ40系使用に際して、両開きドア・デッキなしのキハ47を使用しないなどの配慮はされていたが、座席のグレードアップなどは行われず、地元では「ぼったくり急行」とも呼ばれた。なお、つやまと同じ区間を走る快速ことぶきは車両はつやまと同等、停車駅はつやまより1駅多いだけで、所要時間的には大差がなかったということをここに記す。 - 急行ゆのか・ぎんなん
1968年10月から1972年3月までゆのかでは1往復が、ぎんなんでは下り1本が421・423系で運行されていた。 - 急行秩父路
秩父鉄道で運行されている急行列車。通常時は専用車両でありクロスシートを装備する6000系が使われるが、非常時にはロングシートの5000系・7000系・7500系で代走する。 - フジサン特急
富士急行で運行されている特急列車。通常時は専用車両の8000系が使われるが、検査などで運用を離脱すると一般車の1000形・1200形・5000形・6000系で代走する。代走時でも特急料金はしっかり徴収される。 - 特急いさぶろう・しんぺい
元々は指定席メインの普通列車用として改造された車両ゆえ、座席の大半が近郊型と同じシートピッチの固定クロスシート(ボックスシート)で、自由席エリアはロングシートである。JRの特急列車で窓向き以外のロングシートを備える有料特急列車は前代未聞である。
遜色急行か議論が分かれる列車
- 急行えりも
1985年3月から翌年10月までキハ40系を使用していた。ただ接客設備面では座席の幅が少し狭く洗面所がないぐらいで、それ以外はむしろ急行形のはずのキハ27を上回っていた。 - 急行かすが
1999年12月から列車廃止までキハ75系を使用していた。ただし走行性能では特急型のキハ85系と同レベルで、居住性に関してもデッキなし・3ドアで吊革ありという点が難点になるものの、車端部・扉横を除いて転換クロスシートなので車内設備のレベルは往年の急行型を上回った。
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関連項目
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