概要
1960年代、高度経済成長に伴い急速に電化区間が拡大、上越線や中央本線といった内陸部の山岳地帯を走る主要路線でも電車による直通運転が可能となっていたが、それまで東海道本線などで急行列車に使用されていた153系ではモーター出力が不足しているだけでなく、勾配対策の抑速ブレーキも、寒冷地での使用を前提とした耐寒耐雪性能も無かった為、これらに対応する新型急行形車両を開発する必要があった。これらの条件を全て満たす新型急行形電車として作られたのが165系である。153系からの主な変更点として下記の点が上げられる。
基本編成はMcM'Tc(クモハ+モハ(パンタ付き)+クハ)の3両編成で、これは輸送量の小さい地方路線での運用を考慮した編成となっている。但し、元から需要が多い東海道本線では4両、8両基本編成等も存在した。
車種のバリエーションは非常に多く、モハ164形だけでも基本となる0番台の他に低屋根仕様の800番台、簡易運転台付きの500番台等が存在した。この他にも別形式に改造された物や、逆に別形式から165系になった物も存在した。また、ジョイフルトレインに改造された物も多数存在した。
また、派生系列として同車をベースに団体・修学旅行用とした167系や、信越本線横川~軽井沢間の碓氷峠越えの装備を持つ169系等がある。いずれも165系との混結が可能である。この他、153系の出力強化版として163系が計画されたが、諸事情によりサロ163形のみ製造されて終了した。 ここではこれらの系列の車両についても記載する。
主な運用
旧国鉄時代から民営化後に至るまで、普通、快速、急行、団体、臨時、修学旅行、夜行列車等、幅広い運用を持っていた。その為、全国の旧国鉄の直流電化区間の殆どの路線でその姿を見る事が出来た。最初にデビューした時は新潟地区に配備された。
60年代から70年代にかけては上越線、高崎線、信越本線、中央本線、東海道本線、山陽本線等、関東甲信越から中部、近畿、中国地方の主要路線で主に急行列車として153系と共に活躍していた。しかし、80年代以降は急行列車の運行本数は減少、地方ローカル線などで普通列車等に使用されたりしたが、113系や115系におされて余剰車が増え、交直流両用の制御車への改造や、一部では廃車が発生し始めた。
民営化後は、JR東日本・JR東海・JR西日本の三社に継承されたものの、既に老朽化が激しい事や、二つ扉とデッキ構造故の問題も多く、また後継の新型車両が開発された事もあって更に廃車が進んだ。それでも95年頃まで「東海」「富士川」等の急行運用についていたほか、大垣夜行ではメインを373系に譲った後も臨時夜行では21世紀に入るまで活躍していた。また、紀勢本線でも90年代後半まで新宮行き定期夜行列車(末期は紀伊田辺止まりの最終列車)に165系を使用していた。
その後2003年9月28日、最後まで残っていた新潟地区でのさよなら運転ををもって、JRグループから165系列は完全に運用を離脱した。
譲渡車
一部車両は他社への譲渡が行われており、165系が秩父鉄道と富士急行に、後述する派生系列の169系がしなの鉄道に移っている。
秩父鉄道には3両編成3本が譲渡され、前面スタイルの大改造などを行った上で1992年より秩父線内の急行「秩父路」として運転されていたが、老朽化のため2006年に6000系(元・西武新101系)にバトンタッチして引退、廃車となった。
しなの鉄道には派生系列の169系3両編成4本が譲渡された。2008年と2010年の期間限定で元の緑とオレンジの湘南色に戻され、長野県内でのイベント運転で活躍していた。内装こそ変わってしまったものの、外見は昔の面影を残した姿となって注目を集めた。しかし、老朽化が進んだため2013年春をもって廃車となった。
現在は富士急行で165系改造のジョイフルトレイン、パノラマエクスプレスアルプスを譲受した2000形が特急列車「フジサン特急」として走っている。だが、こちらも元小田急20000形(RSE車)の譲渡に伴い引退することが発表されており、165系最後の残党にも終焉が迫っている。
派生系列
169系
165系に碓氷峠通過対策を追加した形式。EF63との協調運転に対応。169系の付随車は153・165系の編入で賄われたため、製造されなかった。試作車は165系900番台として製造されており、後に169系に改番された。
しなの鉄道に譲渡されたもあり、2013年3月まで活躍していた(詳細は前述の主な運用を参照)。
167系
165系を基に、修学旅行の臨時列車としての使用に対応した接客設備に変更した形式。155・159系の後継となる。外観では扉の幅が狭いのが特徴。
民営化後、JR東日本に継承された編成は全てATS-Pが取り付けられたほか、編成によっては塗装変更やアコモ改造、前面強化改造、シールドビーム又は角形ライト化等の変更がなされた。また、大宮の鉄道博物館に、同形式の運転台付近のモックアップが展示されている。
163系
165系を基にした、平坦線区における出力アップ対応車のグループ。165系から抑速ブレーキを省略し、153系のモーター出力を165系と同じものとした系列として計画された。いわば113系の急行型バージョンである。
しかし、165系に1本化した方が幅広く使えるとして電動車は登場せず、モーターのないグリーン車のサロ163形が7両作られただけで終わってしまった。サロは165系ではなく153系の編成に組み込まれて活躍した。
ジョイフルトレイン
国鉄末期からJR化直後にかけて、一部の車両を対象に団体輸送向けのジョイフルトレインへの改造が実施された。
なのはな
車内を畳敷きに変更したお座敷車両で、1985年に千葉の幕張電車区へ配置された。愛称は千葉県の県花である菜の花に由来している。1998年に後継車の485系「ニューなのはな」に置き換えられ廃車となった。
パノラマエクスプレス アルプス
JR化直前の1987年3月、中央本線と大糸線の車窓を楽しめる展望車両として改造された。
制御車は前面展望構造としたため、車体を丸ごと更新[?要確認]。このため制御電動車同士が顔を突き合わせる編成形態となった(Tsc-M's-Msc+Msc-M's-Tsc)。性能面では183系との併結を考慮されている模様。
2001年の廃車後は富士急行に譲渡され、現在は2000系「フジサン特急」として活躍中。
シャトル・マイハマ→アルファ
JR東日本が1990年に改造。TDLへの観光客輸送目的で改装され、座席配置の変更や便所の削減といった変更が目立つ。晩年は新潟地区へ移って、「アルファ」として運用された。McM'Tcの3連1本を改造。改番はされていない。
ゆうゆう東海
JR東海が改造。外観では前面の貫通扉が封鎖されたのが目立つ。番号は700番台に改番。各1両改造。
形式一覧
新製形式
165系
クモハ165 | 制御電動車(Mc)(モハ165+運転台)。 165系の短編成での運用を可能とした形式である。141両製造。 123~冷房準備、126~冷房搭載。 |
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モハ165 | 制御装置を搭載する中間電動車(M)。21両製造。18~冷房搭載。 | |
モハ164 | 補助電源・空気圧縮機・集電装置を搭載する中間電動車(M')。 クモハ165・モハ165と組まれて使用される。0番台は84両製造。81~冷房設置。 |
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500番台 | 153系への増結用に簡易運転台を設置したグループ。 このグループのみデッキと便所の位置が入れ替わっている。14両製造。 |
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800番台 | トンネル断面が小さい路線での使用を考慮して、パンタグラフ部分の屋根を低くしたタイプ。 64両製造。846~冷房準備、849~冷房設置。 |
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クハ165 | 制御車(Tc)。206両製造。156~冷房準備、191~冷房設置。 | |
サロ165 | 一等→グリーン車の付随車(Ts)。134両製造。29のみ冷房準備、30から冷房設置。 | |
サハシ165 | ビュッフェを設置した付随車(Tb)。12両製造。 | |
サハ165 | 補助電源を搭載する付随車(T)。11両製造。 | |
サハ164 | 売店を設置する付随車(Tk)。2両製造。 |
派生系列
169系 | クモハ169 | 制御電動車(Mc)。 |
モハ168 | 中間電動車(M')。モハ164-800番台同様、小断面トンネルに対応。 | |
クハ169 | 制御車(Tc)。 | |
165系 (900番台) |
クモハ165→169 | 制御電動車(Mc)。 |
モハ164→168 | 中間電動車(M')。小断面トンネルに対応する。 | |
クハ165→169 | 制御車(Tc)。 | |
167系 | モハ167 | 中間電動車(M)。15両製造。 |
モハ166 | 中間電動車(M')。15両製造。モハ164-800番台同様、小断面トンネルに対応。 | |
クハ167 | 制御車(Tc)。22両製造。 | |
163系 | サロ163 | グリーン車の付随車(Ts)。7両製造。 |
改造形式
系列内での改造のほか、基本設計が共通の153系からの編入が多い(運転上の制約はあるものの、無改造での混成も可能)。
165系 | クハ164(Tc) | クハ153 0番台を改造。低運転台車という異色の存在。8両改造。 |
サハシ165 -50番台(Tb) |
サハシ153を改造。5両改造。 | |
サハ165(T) -100番台 |
モハ164・169を電装解除。5両改造。 | |
クヤ165(Tzc) | サハシ153を改造した教習車。 車内には教習用に床下機器が積まれている。1両改造。 |
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169系 | サロ169(Ts) | サロ165を編入。19両改造。 |
サハシ169(Tb) | サハシ153を改造。10両改造。 |
ジョイフルトレイン
なのはな / パノラマエクスプレス アルプス
各形式4両が改造され、通常は同仕様の3連を2本併結して運用された。
クモロ165(Msc) | クモハ165から改造。 |
モロ164-800番台(M's) | モハ164-800番台を改造。そのまま800番台を名乗った。 |
クロ165(Tsc) | クハ165を改造。連番ではあるが、改造内容の違いにより両者の形態は大きく異なる。 |
ゆうゆう東海
クモハ165-700番台(Mc) | |
モハ164-700番台(M') | 種車は800番台。イベント用の音響装置としてボディソニックシステムが採用された。 |
クハ165-700番台(Tc) |
関連動画
既にJRからは消滅した形式であり、ニコニコ動画に上がっている動画もかなり古い時代に撮影された物が多い。
関連商品
関連項目
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