SDメモリーカードとは、記録媒体の一つである。
運転免許に関連する、無事故・無違反証明書については「SDカード」の記事を参照のこと。
概要
SDメモリーカードは1999年に松下(現パナソニック)・SanDisk・東芝が設立したSD Groupが開発したフラッシュメモリタイプの記憶媒体である。
現在はSD Associationという関連団体がSDメモリーカードの設計・開発を行っている。
サイズの規格
SDメモリーカードは、物理的な大きさにより以下の3種類に分類される。
フルサイズSDカードは開発当初から存在する規格で、主にカメラをはじめとした機器が採用している。
唯一、このサイズのSDカードのみ単体で誤消去防止スイッチが搭載されている。
このスイッチを「LOCK」側にスライドさせておくことで、誤ってデータを削除してしまう事故を防ぐことができる。ただし、このスイッチは機器側で物理的に検出する仕様のため、機器側が対応していない場合はスイッチの位置に関係なく書き込み・消去ができてしまうほか、ロックピンの欠落などの要因で書き込み・消去ができなくなってしまうことがある。
miniSDカードは2003年に発表され、小型な機器、特に携帯電話に使用することを目的とした規格。
フルサイズSDカード用の機器に使用する場合、別途変換アダプタが必要になる。
後述するmicroSDカードの登場により、miniSDカードは普及することなく衰退してしまった。現在では、SD Associationのパンフレットにも一切記載されていない、過去の規格となっている。
SDHCをはじめとした高容量規格に対応する前に衰退してしまったため、最大容量は2GB[1]止まり。
microSDカードは2006年に発表された。miniSDカードよりさらに小型な規格で、現在では多くの機器が記録媒体にmicroSDカードを採用している。
miniSDカードと同様、変換アダプタを使用することでフルサイズSDカードの機器にも使用可能。
容量の規格
SDメモリーカードは容量によって以下の4種類に分かれている。
名称 | カードの容量 | 標準ファイルシステム | SD規格バージョン |
SD (SDSC) | ~2GB | FAT (FAT12/FAT16) | 1.0 |
SDHC | ~32GB | FAT32 | 2.0 |
SDXC | ~2TB | exFAT | 3.0 |
SDUC | ~128TB | exFAT | 7.0 |
SD規格(以下、区別のためSDSCと表記)は、最大容量が2GBで標準ファイルシステムはFAT12/FAT16。
この時はSDメモリーカード内のCSD(カード固有データ)レジスタで設定できる容量の値が2GBまで[2]であったため、データ量の増大につれて容量不足が課題となってきた。
そこで、CSDレジスタの構造を変更してカード容量の上限を32GB[3]まで拡大したSDHC規格が登場した。
構造変更の関係で下位互換はなく、従来の機器ではSDHC規格のカードを使用できない。
ただし、物理的・電気的には互換があったため、ファームウェア・ドライバ・OSの更新などで使用可能になった機器も存在する。
標準ファイルシステムはFAT32。そのため、1ファイルあたり最大4GBまでの制限が存在する(exFAT等、別のファイルシステムでフォーマットすることで回避は可能だが、機器側がサポートしないことが多い)。
SDHC規格の登場後、さらなるデータ量の増大に伴い32GBでも容量不足が課題となってきた。
そこで、2009年にSDHC規格の容量不足に対応するため、新たにSDXC規格が登場した。
SDSC→SDHCのような大幅な変更が無かった[4]ため、SDXC規格のカードをFAT32でフォーマットすればSDHC規格のみ対応の機器でも使うことが出来る場合がある。
標準ファイルシステムはexFAT。SDHC規格で存在した、1ファイルあたりの容量制限も実質なくなった。SDXC規格の最大容量は2TB。2023年にはキオクシア株式会社が上限2TBの製品を量産開始予定。
2018年6月、2TBを超える大容量のSDメモリーカードの規格としてSDUC規格が登場した。
最大容量は驚異の128TB[5]。ファイルシステムはSDXCから引き続きexFATを採用している。
2025年にウエスタンデジタル(SanDisk)が4TBのSDUCカードを発売予定で、規格策定から7年の時を経て、ついにSDUCカードが市場に現れる見込みである。
速度の規格
SDスピードクラス
SDSC時代は速度表記を規格として定義していなかったため、表記が各社ごとにバラバラで表記自体が存在しないことも多かった。しかし、写真や動画を撮影する際に転送速度が遅いカードを使用すると転送が間に合わなくなり、撮影に支障が出る可能性があった。
そこで、SDHC規格では統一された基準で転送速度を表記することを義務付けた。それがSDスピードクラスである。
SDスピードクラスはクラスと最低転送速度を下記のように定めている。
クラス | 最低転送速度 |
Class 2 | 2MB/s |
Class 4 | 4MB/s |
Class 6 | 6MB/s |
Class 10 | 10MB/s |
ただし、Class 10については後発のため、使用する機器によっては表記の速度が出ない可能性がある。
UHSスピードクラス
さらに、SDHC/SDXCには物理的な仕組みで速度向上を図ったUHSインタフェース規格(UHS I/F規格)が存在する。
UHS I/F規格にはUHS-I・UHS-II・UHS-IIIの3種類が存在し、それぞれ最大転送速度が異なる。
機器・カードの双方がこの規格に対応している場合、対応するUHS I/F規格のモードで転送が行われる。機器・カードとも下位互換があるが、転送速度は遅い方の規格になる。
UHSスピードクラスは、これらUHS規格に準拠したメモリーカードの最低転送速度を定めたもの。
クラス | 最低転送速度 |
UHSスピードクラス1 | 10MB/s |
UHSスピードクラス3 | 30MB/s |
ビデオスピードクラス
UHSスピードクラスは30MB/sまでしか定義されていないため、高画質な動画を撮影する場合などは、さらに高速な転送速度を要求されることがある。
こうして新たに設定された規格がビデオスピードクラスであり、従来のSDスピードクラス(Class 6~)とUHSスピードクラスを網羅し、最大で90MB/sの転送速度までカバーしている。
ビデオスピードクラスも最低転送速度を保証するものであり、一覧は下記の通り。
クラス | 最低転送速度 |
V6 | 6MB/s |
V10 | 10MB/s |
V30 | 30MB/s |
V60 | 60MB/s |
V90 | 90MB/s |
上記3規格をまとめるとこんな感じになる
SDメモリーカードの公式サイトにも書いてあるが、以下の通りである。
速度(MB/s) | スピードクラス | UHSスピードクラス | ビデオスピードクラス |
---|---|---|---|
90 | V90 | ||
60 | V60 | ||
30 | UHSスピードクラス3 | V30 | |
10 | Class 10 | UHSスピードクラス1 | V10 |
6 | Class 6 | V6 | |
4 | Class 4 | ||
2 | Class 2 |
ただし、当然だがClass 10とUHSスピードクラス1の機種同士など、異なるスピードクラスの機種を接続した場合、想定通りのパフォーマンスを得られないことがある。
SD Express
SD Expressは、2018年発表のSD規格バージョン7.0で先述のSDUCとともに策定された規格。
PCIe Gen3.0とNVMeプロトコルの採用で最大985MB/sの高速転送を可能とする。
また、2020年発表のSD規格バージョン8.0では、PCIe Gen3.0を2レーン もしくは PCIe Gen4.0を1レーン用いた最大1970MB/sの転送と、PCIe Gen4.0を2レーン用いた最大3940MB/sの転送が策定されている。
関連項目
脚注
- *正確には2[GiB]だが便宜上、脚注を除き本文では単位を'GB'としている。
- *CSDレジスタで設定できる最大値が、クラスタ数:4096,1クラスタのブロック数:512,ブロックサイズ:2048 であるため、最大値は4096×512×2048=4[GiB]となり、理論上はSDSCカードでも4[GiB]まで拡張できるが、規格上では2[GiB]を上限としている。
- *SDHC規格ではクラスタ数だけで容量が決定する。CSDレジスタ上ではクラスタ数の領域に22bit分を確保していたがSDHC規格では00FF5Fh(65375)を最大値としていたため、最大容量は約32[GiB]となる。
- *先述の脚注の通り、CSDレジスタ上は22bit確保していた分を解放し、最大値が3FFEFFh(4194047)となり、最大容量がおよそ2048[GiB]となった。
- *CSDレジスタ上のクラスタ数領域が22bitから28bitに拡張され、最大値がFFFFFFFh(268435455)になったことで最大容量は128[TiB]になった。
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