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インフォデミック(infodemic)とは、「根拠のない情報の広範囲にわたる拡散、それに伴う社会の混乱」を指す言葉である。特に感染症に関する情報について使われることが多い。
概要
information(インフォメーション/情報)と、epidemic(エピデミック/疾病の流行)を組み合わせた造語。
2003年のSARS流行期にはこの言葉が存在しており(参考)、2009年に新型インフルエンザが流行した際、英語圏で「infodemic」の使用例がTwitterで多くみられた(参考)。2020年2月初頭には、新型コロナウイルスの流行を受け、世界保健機関(WHO)がこの言葉を使用し、日本にもこの言葉が広まった。
事例
感染症についての根拠のない情報の拡散は、インフォデミックという言葉が生まれる前からある。例えば、19世紀初めに種痘(天然痘の予防接種)が普及していった時期には、「接種すると牛になる」という噂が一部で広まったとされている。また、WHOのシルビー・ブリアン氏によると、黄熱病の流行の際にも「接種するとビールが1週間飲めなくなる」という噂が広まり、接種する人が減ったとされている(参考)。
2020年のコロナウイルスの流行期には、WHOによって以下の情報が根拠がない、または誤りとされた(参考)。
- 「新型コロナウイルスの予防・治療薬がある」(※現時点では開発段階)
- 「抗生物質を飲めばコロナウイルスは治る」
- 「老人(または子供)に感染しやすい」(※老人の死亡率は高いが、感染しやすいわけではない)
- 「ごま油を肌に塗るとコロナウイルスが防げる」
- 「ニンニクがコロナウイルスの予防に効果がある」
- 「口内洗浄液がコロナウイルスの感染予防になる」
- 「生理食塩水で鼻を洗浄することがコロナウイルスの感染予防になる」
- 「肺炎用ワクチンがコロナウイルスに効く」
- 「犬や猫などのペットに感染する」(発表当時にエビデンスは全く無かったが、他の感染症を防ぐため、ペットに触った後は手を石鹸で洗っておく必要はあるとしている。なお、3月初頭に香港政府によって犬への感染確認が発表された(参考)が、どちらにしろ対応はこれまでと変わらない。触れた後の手洗いが重要である)
- 「中国から届いた荷物からコロナウイルスに感染する」
また、「マスクがコロナウイルスの予防になる」という情報についても、WHOのシルビー・ブリアン氏は「必ずしもマスクの着用は感染予防にはならない。他にも対策を講じないと十分ではない」としつつ「ウイルスに感染した人は、流行を広げないためにマスクをすべきだ」とした(参考)。他の対策として、石鹸を使った手洗いや、肘で咳を押さえるといった複数の方法がWHOから挙がっている(参考)。
ただし、上記のマスクに関する方針に関しては2020年6月に、「マスク自体でウイルスを防ぐわけではなく他の感染予防対策も必要だが、健康な人であっても感染が広がっている地域の公共の場でのマスク着用を推奨する」という形に変更されている(参考)。
関連項目
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