こんなのって こんなのってないよ――っ!! 単語

コンナノッテコンナノッテナイヨーーッ

2.7千文字の記事

こんなのって こんなのってないよ――っ!!とは、CLAMP原作漫画魔法騎士レイアース”の登場人物 獅堂台詞である。

※この記事は魔法騎士レイアースの重要なネタバレを含みます。

概要

異世界セフィーロ』のエメロード魔法で、東京タワーからセフィーロへ召喚された獅堂龍咲海鳳凰の三人。セフィーロは心の強さ、すなわち思いや願いが力に直結する世界エメロードは『平和』や『秩序』を祈る『柱』としてセフィーロを支えてきたが、突如どこかへと姿を消してしまった。セフィーロは闘争と混乱で溢れ、さらに魔物まで出現するようになっていた。

たちが東京へ戻るには『伝説魔法騎士』として、エメロードの「セフィーロを救って」という願いをえるしかない。エメロードを攫ったとされる神官 ザガートからエメロードを救い出すため、三人は互いを助け合ったり、セフィーロの住民と交流したり、時にはエメロードの導きに救われたりしながら、魔法騎士として成長していく―。

三体のロボ魔神』の力をい、ついにザガートを倒した三人。だが、彼女たちの前に立ちはだかったのは、救いをめてきたエメロードその人だった。変して殺意をむき出しにするエメロードに驚く三人に、これまで彼女たちを導いてきた優しいエメロード相を語る。

『柱』たるエメロードは、常にセフィーロの『平和』『秩序』を祈らなければならない。しかし彼女はザガートにをしてしまい、セフィーロ平和と秩序を第一に考えられなくなってしまった。セフィーロの安寧よりザガートの幸せを願うようになってしまった。それゆえにセフィーロは不安定になってしまったのだ。
エメロードは自らをめるために閉じ籠り、ザガートと距離を置くことで気持ちを整理しようとした。だがそれも失敗に終わってしまった。
つまりエメロードはザガートに誘拐されたのではなく、エメロード自身の意思で行方をくらましたのである。むしろザガートは彼女の側でその宿命を憂い、彼女自由を願っていた。

セフィーロを支える『柱』は、その役ゆえに自殺することができない。『柱』の力は強大で、セフィーロの住人では太刀打ちできない。ゆえに『柱』に万が一のことがあった場合、『柱』を殺すために外の世界人間を呼び出すというセーフティ――それが『魔法騎士』を召喚する魔法なのだ。ザガートへの思いが制御できなくなる前に、エメロードたちを召喚したのだった。
セフィーロを救ってほしいとは、エメロード自身を殺して欲しいということだったのだ。これまでザガートが執拗に魔法騎士三人に刺客を送り込んでいたのも、魔法騎士エメロードを殺させないためだった。

嫌な言い方をすれば、たちはエメロード介錯するためだけに今まで戦ってきたのだ。だが、これまでお互いのため、セフィーロのため、すなわち他者のためを思いながら戦ってきた三人に、ザガートを思うエメロードの気持ちを否定できるはずがなかった。

ザガートを失い怒り狂うエメロードは、混乱するたちにお構いなしに攻撃してくる。暴走するエメロードがもし世界の破滅を願ったなら、その願いの力でセフィーロは消滅するだろう。そうなる前に止めてほしいとエメロードは懇願する。たちはエメロードの願いを受け止め、慟哭しながら彼女を倒す。宿命から解放されたエメロードはザガートの元へ旅立ち、しいきが広がっていく―。

気が付くとたちは元居た場所―東京タワーに戻っていた。だが三人の心中は帰還の喜びよりもやりきれなさやいたたまれなさで溢れており、は思わず

こんなのって こんなのってないよ――っ!!

と叫びながら、と互いを抱き締めあうのだった。

この台詞コマを最後に、魔法騎士レイアースの第一部は幕を閉じる。「こんなのってないよ――っ!!」と言いたかったのは当時の読者のほうかもしれない。

セフィーロを救う」「東京に帰る」という物語的は果たせているものの、助けをめた本人を殺してしまうという非常に後味の悪い終わり方であり、ネットレイアース話題が出ると未だに高確率でこの展開や柱システムについて語られる。

TVアニメ版

TVアニメ20話にて原作同様東京タワーに帰還するのだが、この台詞の代わりに「もう一度セフィーロに行きたい もう一度セフィーロに行って、今度こそ柱であるエメロードが大切に育てたセフィーロの為に自分ができることをしたい」と願う台詞に変更されている。続く21話冒頭では、エメロードを殺してしまったことをでうなされており、その悪夢の中で嗚咽と共に「こんなのって こんなのってないよ......!」と呻くようにつぶやく―というに改変されているため、原作とはシチュエーション台詞ニュアンスがやや異なる。

叙述トリック

最後の最後にこれまでの前提が覆るという驚きの展開だが、実は「セフィーロを救ってほしい」「エメロードが姿を消した」といった断片的な情報開示されているだけで、最初からエメロードは「ザガートに攫われた私(エメロード)を救出してほしい」などとは一度も言っていない。

こういった断片的な情報から「ザガートという悪人に囚われたエメロードを助ければセフィーロが救われる」と解釈したのはたちやクレフ(そして読者)であり、その解釈はエメロードの本当の願いとズレてしまっていたのだ。

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