クロピドグレル 単語

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クロピドグレル

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クロピドグレル(Clopidogrel)とは、抗血小板である。先発医薬品名はプラビックス®

概要

有機化合物
クロピドグレル
クロピドグレル
基本情報
英名 Clopidogrel
化学 C16H16ClNO2S
分子量 321.82
化合物テンプレート

クロピドグレルは、チエノピリジン系抗血小板P2Y12受容体阻である。血小板の凝集を阻して血栓(血のかたまり)の形成を抑制するため、脳梗塞心筋梗塞の再発予防に使われる。

フランスの製企業サノフィが創製し、1997年アメリカで初めて承認された。日本では2006年にプラビックス®の製造販売が承認され、2015年にはジェネリック医薬品も登場した。

血小板2剤併用療法(DAPT)において、しばしばクロピドグレルとアスピリンの2剤が選ばれる。この2剤を1錠にまとめたコンプラビン®配合錠(ロレア®配合錠)も上されており、虚血性心疾患の再発予防に利用されている。

効能・効果

上記の適応症のうち、脳梗塞狭心症および心筋梗塞ニコニコ大百科内に記事があるため、詳細は各記事を参照。PAD閉塞動脈硬化症や閉塞性血栓血管炎(バージャー病)などが該当する。

用法・用量

クロピドグレル75mgを1日1回朝食後に内するケースが多い。患者のライフスタイルによっては食後や夕食後の内示することもあるが、副作用低減のため空腹時の投与は避ける。

非心原性の虚血性血管障害後の再発抑制の場合、75mg/dayを1日1回経口投与する年齢や体重に応じて50mg/dayとする。脳梗塞や一過性虚血発作の急性期でありクロピドグレルを用していない患者であれば、初日300mg/dayを経口投与し、2日から75mg/dayとしてもよい。

PCI適用の虚血性心疾患の心血管イベント二次予防の場合、初日300mg/day、2日から75mg/dayを1日1回経口投与するDAPT期間中はアスピリン(一例として100mg/day)と併用する。なお、PCI施行予定の患者に対しても投与可だが、PCIを施行しなかった場合は投与を中止する。

PADにおける血栓・塞栓形成の抑制の場合、75mg/dayを1日1回経口投与する

作用機序

クロピドグレルなどのチエノピリジン系抗血小板は、体内で代謝活性化を受けたのち、血小板に発現しているアデノシン二リン受容体(P2Y12受容体)とジスルフィド結合(R-S-S-R')を形成する。これにより、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)の活性化が抑制され、グリコプロテインIIb/IIIa(GP IIb/IIIa)の活性化も阻される。また、Giによるアデニルクラーゼの抑制が阻されるため、cAMP濃度が上昇して血小板内Ca2+濃度が低下する。これらの作用によって血小板凝集が阻され、血栓形成が抑制される。共有結合による不可逆的な阻のため、作用持続時間は長い。

チオフェン

チエノピリジン系抗血小板プロドラッグであり、チオフェン環(S原子を含む5員環)が化され、チオエステル(R-S-CO-R')中間体を経てチオール基(R-SH)が露出した活性代謝物となって作用する。クロピドグレルの活性化には物代謝酵素のシトクロムP450(CYP)が関与しており、とりわけCYP2C19の寄与が大きい。CYP2C19の遺伝子による酵素活性の減弱ないし欠損は、クロピドグレルの活性代謝物の産生の低下、血小板凝集阻作用の低下につながる。日本人の約6人に1人が、CYP2C19活性の弱い低代謝(PM)群と推定される。

相互作用

クロピドグレルは、にCYP2C19による化反応を経てP2Y12受容体を阻し、血小板凝集を抑制する。そのため、CYP2C19を阻または誘導する作用のある物を併用すると、クロピドグレルの作用が減弱または増強するおそれがある。CYP2C19を阻する物としてプロトンポンプ阻のオメプラゾール(オメプラー®、オメプラゾン®)、CYP2C19を誘導する物として抗抗酸菌薬リファンピシンリファジン®)がある。

禁忌・副作用

クロピドグレルは抗血小板であるため、血友病の患者、頭蓋内出血や消化管出血など出血している患者への投与は、出血を助長するおそれがあり禁忌である。また、出血するリスクの高い手術を受ける場合、その714日前からクロピドグレルを休することが望ましい。

クロピドグレルと同じチエノピリジン系抗血小板であるチクロジンは、投与開始後2か以内に血栓性血小板減少性斑病(TTP)、顆粒球症、重篤な肝障害などの重大な副作用が発現するおそれがあり、死亡に至った例も報告されている。チクロジン較してクロピドグレルの副作用は60%程度少ないとされるものの、投与開始後2か間は2週間に1回の血液検査の実施を考慮する。

クロピドグレルの副作用として、出血、吐き気、食欲不振、消化器不快感がある。空腹時に内すると消化器症状があらわれやすいため、食後に投与する。

同種同効薬

チクロピジン

チエノピリジン系抗血小板は、チクロジン(パナルジン®)、クロピドグレル(プラビックス®)、プラスグレルエフィエント®)が上されている。

第1世代のチクロジンは、血栓性血小板減少性斑病(TTP)、顆粒球症、重篤な肝障害という重大な副作用のため、1999年2002年に緊急安全性情報イエローレター)が配布されており、原則として定期的血液検査が必要である。1日23回内。細粒剤がある。

2世代のクロピドグレルは、前述したようにチクロジン副作用を抑えた改良版であり最も汎用される。しかし、CYPによる2段階の代謝活性化が必要で、チクロジンと同じく作用発現まで12日かかる。また、CYP2C19の遺伝子のために、クロピドグレルの効果には個人差がみられる。

第3世代のプラスグレルは、さらなる改良版といえる。代謝活性化の第1段階がCYPによる化反応ではなくエステラーゼによる加分解反応であるため、個人差が少なく作用発現にかかる時間も短い(2時間ほどで作用発現が期待できる)。価が1日あたり約250円と高いため、急性期のDAPT導入にプラスグレルを用いて、のちに安価なクロピドグレルに切り替えることもある。

P2Y12受容体阻は、チエノピリジン系抗血小板のほかに、カンレロル、チカグレロル(ブリリン®)などがある。チエノピリジン系抗血小板が代謝活性化を受けてから共有結合を介して不可逆的に阻するのに対し、カンレロルやチカグレロルは未変化体のままADP結合部位とは異なる部位に結合して可逆的に阻する。

血小板は、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻アスピリンバイアスリン®バファリン®)、ホスホジエステラーゼ-IIIPDE-III)阻シロスタゾール(プレター®)もよく使われる。

COX阻アスピリンは、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)すなわち消炎鎮痛薬として知られる。COXをアセチル化して不可逆的に阻し、血小板凝集を進させるトロンボキサンA2TXA2)の産生を抑制するため、低用量であれば抗血小板作用を示す。副作用炎や潰瘍のリスクがあるため、制との配合剤やでは溶けない腸溶性製剤が利用されている。DAPT期間中はクロピドグレルまたはプラスグレルアスピリンを併用する。

PDE-IIIシロスタゾールは、cAMPを加分解するPDE-IIIを阻し、cAMP濃度を上昇させて細胞内Ca2+濃度を低下させるため、血小板凝集を抑制する。血管作用や心収縮力・心拍数増加作用もある。閉塞動脈硬化症や非心原性脳梗塞に用いる点ではクロピドグレルと似ているが、シロスタゾールは虚血性心疾患やうっ血性心不全には用いない。副作用は動悸や頻脈。

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