労働強化 単語

ロウドウキョウカ

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労働強化とは、労働に関する言葉の1つである。反対語は労働弱化である。

概要

定義

労働強度を増大させることを労働強化という。

労働強度とは、労働時間の中の単位時間内における労働者1人の労働支出量のことである。

わかりやすい定義

労働時間の中の単位時間内において労働者1人が手足の動きの量や思考の量を増やすことを労働強化といい、労働時間の中の単位時間内において労働者1人がのんびりペースを改めてシャカリキになって獅子の働きをするようになることを労働強化という。

労働時間の中の単位時間内における労働者1人の手足の動きの量や思考の量の合計を労働強度という。

労働強度の計測方法

肉体労働の労働強度を表す数値の代表例はエネルギー代謝率(RMR)である。労働時の消費エネルギー量から安静時の消費エネルギーを引いて得られる値を基礎代謝量で割って得られる数値である。 「RMRが0~2なら軽労働、2~4なら中労働、4以上なら重労働」などと分析する。

労働の労働強度を表す数値は立ったものが存在しない。

労働強化は生産技術の向上

国家の総供給の量は、資本量Kや労働時間Lといった生産要素と「利用可な生産技術」で決定される[1]

ある国家において、資本量Kを一定のままにして、すべての労働者の労働時間Lを一定のままにして、その上ですべての労働者が労働強化したとする。

その場合は国家の総供給の量が増えるのだが、資本量Kや労働時間Lが一定であるので、利用可な生産技術が向上したことになる。

つまり労働強化をすることは生産技術の向上であり、労働弱化をすることは生産技術の劣化である。

労働強化は資本生産性Y/Lや労働生産性Y/Lの向上

ある国家において、資本量Kを一定のままにして、すべての労働者の労働時間Lを一定のままにして、その上ですべての労働者が労働強化したとする。

その場合は有利な供給ショックが発生し、タテ軸物価・ヨコ軸実際GDP(Y)の総需要-総供給モデルにおいて短期総供給曲線が右に行移動し、均衡点が右肩下がりの総需要曲線に沿って右下に移動するので、国家実質GDP(Y)が増える。しかし一方で資本量Kや労働時間Lが一定である。ゆえに資本生産性Y/Kや労働生産性Y/Lが向上する。

つまり労働強化をすることは資本生産性Y/Kや労働生産性Y/Lの向上であり、労働弱化をすることは資本生産性Y/Kや労働生産性Y/Lの劣化である。

長所

労働強化の長所は、国家実質GDPが増えやすくなることや、国家の資本生産性Y/Kや労働生産性Y/Lが高まりやすくなることである。

国家の資本生産性Y/Kが高まるとそれに例して実質資本レンタル料R/Pが増え、投資家にとって収益を得られやすくて魅力的なになる。

国家の労働生産性Y/Lが高まるとそれに例して実質賃金W/Pが増え[2]労働者にとって豊かな生活を得られやすくて魅力的なになる。

短所

労働強化の短所は、労働者の働き過ぎ・過労を引き起こし、労働者の精神的・体的な疲労が大いに蓄積し、労働者病気になったり怪をしたりする可性が増え、労災事故の可性が増えるという点である。

とくに、労働時間を一定にさせたまま労働強化を行うと、労働者の働き過ぎを引き起こしやすい。

労働強化の手法

労働者に職務専念義務を課す

労働強化をするための最も基礎的な手段は、労働者職務専念義務を課し、労働者が労働時間のなかで労働に全神経を集中するように仕向けることである。

労働者職務専念義務を課すときは、その労働者公務員なら法律で定めるし、その労働者が私企業労働者なら労働契約や就業規則や労働協約で定める。

さらに、労働者職務専念義務を確実に遂行させるには、①効率賃金仮説に従って賃金を増やす、②年功主義年功序列)の賃金体系を導入したり終身雇用の雇用体制を導入したりして使用者の権力を大きく制限して労働者使用者のご機嫌伺いをしなくなるように仕向ける、③副業を禁止して労働者副業のことを考えないようにする、などの手段が考えられる。

内発的動機付け

内発的動機付けをして「この仕事をすると人に感謝されて自分の有能さを実感できる」と労働者に信じ込ませると労働強化することができる。

ちなみに、内発的動機付けによる労働強化をしつつ労働強化した分の給与を永久に支払わないのなら、それはやりがい搾取と呼ばれる。

企業労働者に対して内発的動機付けを掛ける方法としては、顧客や利用者の感謝を収集してそれを労働者に聞かせてやるというものが考えられる。

外発的動機付け(上手くいかないこともある)

外発的動機付けの一環として成果主義の給与体系を導入して「成果を挙げれば挙げるほどガッガッポと稼げる」と労働者に信じ込ませて労働強化をすることがある。

ただし、この方法は、労働者が「自分の働きぶりを監視する上に好かれるようなことをしよう」と考えるようになって労働者使用者の顔色をうかがうようになって労働時間の中において職務専念義務を果たさなくなるという副作用がある。その副作用が出てしまうと労働強化を実現できず、かえって労働弱化になってしまう。

不安と恐怖を煽って困惑させる(上手くいかないこともある)

不安と恐怖煽り労働者の「意思決定の自由」を制限して労働者を困惑させて労働強化をすることがある。

カルト宗教団体がこの手法を使うことがあり、「シャカリキになって働かないとあなたの身内に不幸が訪れるだろう」と霊感に基づいた予言をして信者をこきつかうことがある。

ブラック企業の経営者がこの手法を使うことがあり、「シャカリキになって働かないと企業倒産するだろう」と不安を煽って労働者をこきつかうことがある。

ただし、この方法は、労働者が不安になって労働時間の中において職務専念義務を果たさなくなるという副作用がある。その副作用が出てしまうと労働強化を実現できず、かえって労働弱化になってしまう。

労働強化と資本主義的合理化

資本主義体制のにおいて、企業は「資本主義的合理化」をする必要性に迫られており、収益から費用を引いて得られる利益の最大化をすことを強いられている。

資本主義的合理化を実践するには次の3つの方法がある。

  1. 労働時間を増やして、収益を大きく増やして費用を少なく増やして利益を増やす
  2. 人件費を減らして、収益を維持しつつ費用を減らして利益を増やす
  3. 労働強化して、収益を増やして費用を維持して利益を増やす

1.の代表例は「工場を1日8時間操業から1日16時間操業にする」というものである。労働者には生活というものがあるし、また労働基準法第32条で法定労働時間が定められている。このため労働者に長時間労働を無限に課すことができず、1.を達成するのは難しい。

2.の代表例は「日給1万円の労働者を日給8千円に賃金カットする」というものである。これは労働者しい抵抗が予想されるので、2.を達成するのは難しい。

3.の代表例は「工場を1日8時間操業のままにして、労働者獅子の働きをさせる」というものである。こうした労働強化は1.や2.にべて簡単に実現できる。

労働強化と賃金変化

労働強化と賃金変化については4つの場合が考えられる。

1.労働強化の程度よりも賃上げの程度が大きい。わずかな労働強化に対して大な賃上げをする 実質的賃上げ
2.労働強化の程度と賃上げの程度が同じぐらい。大な労働強化に対して大な賃上げをする 実質賃金維持
3.労働強化の程度よりも賃上げの程度が小さい。大な労働強化に対してわずかな賃上げをする 実質的賃下げ
4.労働強化しつつ賃金を維持する 実質的賃下げ

1.は労働組合める状態であり、労働者の利益が増える状態である。

3.や4.は使用者が望む状態であり、使用者の利益が増える状態である。

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』67~69ページ
  2. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』82~83ページ
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