神経

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神経とは、動物の体内で情報伝達を担う組織、あるいはそれが集まって機能を持つ器官としての総称である。

概要

大きく分けて脳、脊髄の「中枢神経系」、中枢神経系と内臓や骨格筋、感覚器などを連絡する「末梢神経系」に分けられる。ややこしいが「脳神経」「脊髄神経」は「脳と末端を連絡している神経」「脊髄と末端を連絡している神経」なので末梢神経系にあたる。ちなみに脳神経は左右12対、脊髄神経は左右31対存在する。

神経は長い手を伸ばしたような形の細胞により構成されており、この細胞の内外でイオンをやり取りすることで情報を「活動電位」という電気信号として伝えている。これを「伝導」と呼ぶ。長く伸びた手に鞘のようなもの（髄鞘）が巻きついた有髄神経は髄鞘と髄鞘の間に露出した神経細胞めがけてイオンがジャンプするように素早く伝導していく（跳躍伝導）ため、髄鞘が存在しない無髄神経より伝導が速い。

テトロドトキシン

このイオンのやり取りを阻害することで毒性を示す有名な神経毒がフグの毒「テトロドトキシン」である。

また、神経の末端と作用する神経や器官との接合部位をシナプスと呼ぶ。シナプスにおける神経間の情報のやり取りを「伝達」と呼び、神経から放出される「神経伝達物質」によって行われる。

末梢神経系は身体の機能調節に関わる「自律神経系」と運動や知覚に関わる「体性神経系」に分けられる。

自律神経

身体を興奮状態にする「交感神経」、リラックス状態にする「副交感神経」の2種類があり、基本的には1つの器官を両方の神経が支配している（拮抗二重支配）。自律神経は身体のアクセルとブレーキのようなもので、どちらかが優位になることによって身体の機能を調整する。

自律神経は基本的に中枢から末梢へ興奮を伝えるため2本の神経を介しており、2本の神経の間を神経節という。中枢～神経節を担当する有髄神経を節前線維、神経節～器官を担当する無髄神経を節後線維と呼ぶ。交感神経は胸髄、腰髄、副交感神経は脳幹、仙髄から伸びている。

交感神経は節前線維が短く、節前線維1本に対して20～30本の節後線維に連絡している。副交感神経は節前線維が長く、節前線維1本に対して節後線維1本と連絡している。交感神経は自分の所に部下を大勢呼びつけて指示する上司、副交感神経は現場までやってきてマンツーマンで指示する上司といった趣きである。

節前線維からは神経伝達物質としてアセチルコリンが放出され、交感神経節後線維からはノルアドレナリン、副交感神経節後線維からは再びアセチルコリンが放出される。節後線維からアセチルコリンが放出される汗腺の交感神経、節前線維が直接連絡する副腎髄質などの例外もある。

サリン

副腎髄質は節後線維が変化したものと考えられており、節前線維からの連絡を受けると血中にアドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミンを放出している。

神経伝達物質の分解を抑制する、神経伝達物質の受容体を刺激、あるいは阻害することで薬理作用をもたらす医薬品（あるいは毒）が多く存在する。例えばサリンはアセチルコリンの分解酵素を阻害し、アセチルコリンの異常な蓄積が起こることで神経伝達システムが崩壊して死に至る。

体性神経

感覚器と脳を連絡している知覚神経、骨格筋を支配している運動神経の2つがある。

知覚神経は有髄神経と無髄神経の両方があるため、足の小指をぶつけるなどすると、ぶつけた瞬間の「速い痛み」、しばらくジンジン続く「遅い痛み」の2種類が伝導される。

また運動神経は有髄神経なので伝導が早く、知覚神経は無髄神経も含むため伝導が遅い（種類にもよるが最大で100倍ほどの差がある）。局所麻酔により体を動かせる状態のまま痛みだけが消えるのは、麻酔が遅い伝導を止めることが得意だからである。

運動が不得意な人を「運動神経がない」と言うが、そんな人はまず居ないし、「無神経」な人もまず居ない。また「反射神経」という神経はない。

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