年功主義とは、労働者に賃金を与える方法に関する思想の1つである。年功序列ともいう。
年功主義とは、労働者の勤続年数に応じて賃金の額を決めることをいう。
年功主義とは、労働者に対して勤続年数を重ねることを推奨するものであり、労働者に対して離職せずに勤続年数を重ねて職場に忠誠を尽くすことについて正の外発的動機付けを掛けるものである。
年功主義によく似た思想として年齢主義というものがある。
新卒採用で勤続30年で53歳の労働者Aと、中途採用で勤続5年で53歳の労働者Bと、新卒採用で勤続5年で28歳の労働者Cがいるとする。
AとBを同じ賃金にするのが年齢主義であり、BとCを同じ賃金にするのが年功主義である。
「全ての社員を新卒採用でまかない、一切の中途採用をしない」という形態は昭和時代末期の日本における大企業に多く見られる形態だった。そういう形態の企業では、年齢主義と年功主義がほとんど完全に一体化する。
新卒採用で勤続30年で53歳の労働者Aと労働者A’と労働者A”がいるとする。
AとA’とA”を同じ賃金にするのが年齢主義や年功主義であり、使用者が成果の差を測定してAとA’とA”を異なる賃金にするのが成果主義であり、使用者が能力の差を測定してAとA’とA”を異なる賃金にするのが能力主義である。
年功主義には長所と短所がある。本記事において『年功主義の長所』と『年功主義の短所』の各項目でそれぞれ解説する。
年功主義を導入すると、使用者が労働者の賃金を増やしたり減らしたりする権力を失うことになり、使用者の権力が制限される。なぜなら、年功主義や年齢主義を導入すると、労働者の賃金を決める要素が時間だけになり、使用者による主観的かつ情緒的かつ恣意的な判断を割り込ませて賃金を決めることが不可能になるからである。
成果主義や能力主義は権力を解放して強化する思想だが、年功主義や年齢主義は権力を抑制して弱体化させる思想である。成果主義や能力主義は権力主義で、年功主義や年齢主義は非権力主義である。
年功主義を導入すると労働者が使用者に対して「この者に対して反抗してもよいし、この者の機嫌を損ねても大丈夫だ」と考えるようになって使用者を恐れなくなる。
会社の生産効率を高めるが使用者の機嫌を損ねることと、使用者の機嫌を取ることができるが会社の生産効率を低くすることのどちらかを選択することになった場合、迷わずに前者を選択する労働者が増え、気骨ある労働者が増える。
上司の顔色をうかがうとか上司の機嫌をとるといった「職務から外れた行為」をする労働者が減り、労働者が労働に集中するようになり、職務専念義務を遂行するようになり、労働強化が進み、企業の生産性が高くなる。
そういう企業が増えると国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家が興隆していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。
年功主義を導入すると使用者の権力が制限され、「賃金を恣意的に操作できる強い使用者」が「賃金を恣意的に操作できない弱い使用者」に変化する。すると企業が「賃金を恣意的に操作できない弱い使用者」と「使用者の権力に服従するだけの弱い労働者」で構成されるようになり、権力の点で平等社会になり、さらには権力の点で無階級社会になる。
企業が平等社会や無階級社会になると好ましいことになる。労働者が使用者に対して「この者は自分と対等の存在なので話しかけることができる」と感じるようになり、労働者が使用者に対して積極的に話しかけるようになり、労働者が使用者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使することを遠慮しなくなり、上意下達(トップダウン)だけではなく下意上達(ボトムアップ)が行われるようになり、情報伝達が盛んに行われ、風通しが良くなり、気骨ある労働者が使用者の欠点を指摘する気風が生まれ、企業の欠点が早期に解消され、企業が停滞せずに発展する。
そういう企業が増えると情報流通が円滑に行われる国家になり、国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家が興隆していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。
年功主義や年齢主義を導入すると使用者に対して労働者が意見を表明しやすくなり、民主主義の組織に近づく。一方で成果主義や能力主義を導入すると使用者に対して労働者が意見を表明しにくくなり、権威主義の組織に近づく。
年功主義を導入すると、成果や「成果に結びつく行動」の量によって労働者の賃金が変動しなくなり、同じ勤続年数で全く同じ賃金になって所得格差が縮小するので、同じ勤続年数の労働者どうしで平等意識が芽生えていく。そして、同じ勤続年数の労働者で構成される社会が平等社会や無階級社会になっていく。
昭和時代の日本の大企業は、すべての社員を同じような年齢で新卒採用して中途採用をしないことが一般的だった。そういう企業においては、短期勤続労働者が長期勤続労働者を見ると自分も勤続年数を重ねるとあのような労働者になる」と予測することができ、長期勤続労働者が短期勤続労働者を見るときに「自分も若いときはあのような労働者だった」と思い返すことができるので、異なる勤続年数の労働者同士でも平等意識が芽生えていく。そして、異なる勤続年数の労働者で構成される社会が平等社会や無階級社会になっていく。
企業が平等社会や無階級社会になると好ましいことになる。労働者が他の労働者に対して「この者は自分と対等の存在なので話しかけることができる」と感じるようになり、労働者が他の労働者に対して積極的に話しかけるようになり、労働者が他の労働者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使することを遠慮しなくなり、情報伝達が盛んに行われ、風通しが良くなり、お互いの欠点を指摘する気風が生まれ、企業の欠点が早期に解消され、企業が停滞せずに発展する。
そういう企業が増えると情報流通が円滑に行われる国家になり、国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家が興隆していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。
年功主義を導入すると、成果や「成果に結びつく行動」の量によって労働者の賃金が変動しなくなり、同じ勤続年数で全く同じ賃金になって所得格差が縮小するので、同じ勤続年数の労働者どうしで平等意識が芽生えていく。そして、同じ勤続年数の労働者で構成される社会が平等社会や無階級社会になっていく。
労働者で構成される社会が平等社会や無階級社会になると、劣った労働者が優れた労働者に対して嫉妬の心を抱くようになる。嫉妬には見苦しいなどの短所があるが、ライバル意識と競争心を生んで労働強化をもたらして社会を活気づけるという長所があり、絶対的な悪徳というわけではない。
次のような話がある。年功序列的と揶揄された会社にAとBが同期で入社した。AとBが入社して数年後にAの月給がBの月給よりも数百円だけ多くなった。Aは「自分の方が評価されている」と張り切り、Bは「あいつには負けられない」と頑張り、AとBが2人とも出世街道をばく進し、月給の差が数百円のままで2人とも取締役にまで出世したという[1]。ここでのBの心理は「あいつに負けて悔しい」といったものだが、これは嫉妬心の一形態である。その嫉妬心が猛烈なライバル意識を生み、競争を煽り、労働強化をもたらした。
年功主義を導入して平等社会や無階級社会に近づいた企業は、嫉妬心の強い労働者ばかりになり、ライバル意識や競争心を持つ労働者ばかりになり、「あいつに負けて悔しい」という気持ちの強い労働者ばかりになり、活気が増える。そして労働強化が進み、生産性が高い企業になる。
そういう企業が増えると国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家が興隆していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。
年功主義を導入すると、使用者の権力が制限される。そうなると労働者が使用者に対しておびえなくなり、「使用者のご機嫌伺いを優先しよう」と考えなくなり、労働運動をすることが可能になる。
ここでいう労働運動は、労働者が使用者に対して賃金を上げるように要求する行為のすべてを指す。「労働者が労働三権を行使して使用者と労働協約を結ぶ」という本格的なものも含むし、「労働者が使用者に聞こえるように賃金の安さを愚痴って使用者が効率賃金仮説に基づいて賃金を上げるように誘導する」という簡易的なものも含む。
年功主義を導入すると、労働者の労働運動が活発化するので、賃金が上がりやすくなる。労働者の賃金が上がりやすくなると労働者の消費が増えやすくなり、労働者の生活水準が向上しやすくなる。また、結婚率や出生率の下落が抑制されやすくなり、少子化と人口減少が抑制されやすくなる。そして、政府が移民の導入に頼らずに済むようになり、国家における言語や文化の統一性が維持されやすくなり、国家における情報の流通が円滑な状態が維持されやすくやすくなり、国家全体の生産技術が維持されやすくなる。国家全体の生産技術が維持されると労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが維持され、国家が没落せずに済む。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。
年功主義を導入すると、労働者の賃金が使用者の恣意的な判断で急減少する可能性が発生しなくなるので、労働者が将来の賃金の安定性に確信を持つようになり、労働者が「自分は将来に賃金を大きく減らされるかもしれない」と思わなくなり、労働者が将来不安にさいなまれなくなる。そうなると労働者は予備的貯蓄をする必要性に迫られなくなり、消費好みで倹約嫌いの性格に変貌していき、生活水準を上昇させることになる。
ちなみに消費というのは生活水準そのものであ[2]。消費が多いと生活水準が高くなって生活が豊かになるし、消費が少なくなると生活水準が低くなって生活が貧しくなる。
さらには、年功主義を導入すると、莫大な消費が予想される結婚・子作りに踏み切る勇気を労働者が持つようになり、結婚率や出生率を上昇させていき、少子化や人口減少を抑制する力を作るようになる。人口減少が進まなくなると政府が移民の導入に頼らなくなり、国家における言語や文化の統一性が維持されやすくなり、国家における情報の流通が円滑な状態が維持されやすくなり、国家全体の生産技術が維持されやすくなる。国家全体の生産技術が維持されると労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが維持され、国家が没落せずに済む。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。
年功主義を導入すると、労働者の賃金が使用者の恣意的な判断で急減少する可能性が発生しなくなるので、労働者が将来の賃金の安定性に確信を持つようになり、労働者が「自分は将来に賃金を大きく減らされるかもしれない」と思わなくなり、労働者が将来不安にさいなまれなくなる。そうなると労働者は予備的貯蓄をする必要性に迫られなくなり、消費好みで倹約嫌いの性格に変貌していく。
国家全体の限界消費性向MPCが高くなって限界貯蓄性向MPSが低くなり、消費が増えて投資が減り、クラウディングアウトとなり、実質利子率が上昇していく。実質利子率が上昇することで、実質利子率が低すぎる状態から脱却し、バブル経済の発生を抑制し、国家の経済を安定させることができる。
実質利子率が低くなりすぎると、需要が無いのに需要が有るかのように見せかけて投資家から融資を騙し取る投資詐欺を行う知能犯罪者が増え、過剰投資と呼ばれる状態になって不良債権が増え、バブル景気とバブル崩壊の両方を作り出し、強烈な負の需要ショックを作り出し、長期にわたる深刻な不景気を発生させ、将来世代を苦しめる。
年功主義を導入すると、経営者は「労働者を雇ったあとに企業の収益が減ったら年功主義のために賃金という費用を最低賃金の水準にまで減らせず企業が倒産する」と思うようになり、業績を拡大して市場占有率を増やす機会に恵まれたときに積極的に労働者を雇用しなくなる。そのため、市場占有率を大きく高める大企業が増えにくくなり、「我が社は市場占有率が高いので君たちは我が社の要求を受け入れるしかない」と協力企業に威圧する大企業が増えにくくなる。
大企業の協力企業が、大企業に対して値上げ交渉をしやすくなり、大企業に対して価格転嫁をしやすくなり、収益を増やしやすくなり、労働者に支払う賃金を増やしやすくなる。このため、大企業に勤める労働者と「大企業の協力企業」に勤める労働者の賃金格差が縮小する。「大企業の協力企業」というのは多くの場合において中小企業であるため、大企業に勤める労働者と中小企業に勤める労働者の賃金格差が縮小し、平等社会や無階級社会に近づく。
中小企業の労働者が「大企業の労働者は自分とは出来が違う存在でとても話しかけられない」と考えなくなり、中小企業の労働者が大企業の労働者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使するようになる。国家の中で情報の流通が行われやすくなり、欠点が修正されやすい国家になる。さらには国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家が興隆していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。
ある国において年功主義を一般化すると、使用者によって労働者の賃金を最低賃金の水準にまで減らすことが難しくなり、労働者の待遇を一気に悪化させることが不可能になるので、労働者の離職率が下がる。
ただし、ある国において年功主義を一般化すると、使用者が「労働者を雇ったあとに企業の収益が減ったら年功主義のために賃金という費用を最低賃金の水準にまで減らせず企業が倒産する」と考えるようになり、雇用に対して消極的になるので、失業者の就職率が下がる。このため年功主義を一般化したとしても失業率が下がるとは限らない。
経済学者が経済の状況を測定するときに最も頻繁に使う経済統計は、実質GDPとインフレ率と失業率の3つである[3]。そして、失業率は、労働者の離職率と失業者の就職率という2つの要因によって決定される[4]。
ある国において年功主義を一般化すると、失業者の就職率が下がり、労働者の離職率が下がり、転職が減り、雇用の固定化が達成され、企業における中途採用労働者の割合が少なくなって生え抜き労働者の割合が多くなる。そうなると、企業の収益が増えることがある。
生え抜き労働者は、就職している会社の企業風土などの知識を持っているなどの理由である種の生産技術を豊富に持っている存在であり、中途採用労働者と入れ替わったときと比べて企業の収益を高く保つことがある。
また生え抜き労働者は、同僚や上司から「この人に教育をしても離職されて損をする可能性が低い」と信じられやすい存在であり、十分な教育を受けられる可能性があり、中途採用労働者と入れ替わったときと比べて企業の収益を高く保つ可能性がある。
しかし生え抜き労働者は、他の会社の企業風土を知っておらず、企業に新鮮な感覚をもたらして企業を改革する可能性が低く、中途採用労働者と入れ替わったときと比べて企業の収益を減らすことがある。
また生え抜き労働者は、優秀な生産技術を持っていないことがあり、中途採用労働者と入れ替わったときと比べて企業の収益を減らすことがある。
ある国において年功主義を一般化すると、失業者の就職率が下がり、労働者の離職率が下がり、転職が減り、雇用の固定化が達成され、企業における中途採用労働者の割合が少なくなって生え抜き労働者の割合が多くなる。そうなると、企業の費用が減ることがある。
生え抜き労働者は、就職している会社の企業風土などの知識を持っているなどの理由である種の生産技術を豊富に持っている存在であり、企業にとって教育費用を支払わなくていい存在であり、中途採用労働者と入れ替わったときと比べて企業の費用を低く保つことがある。
効率賃金仮説という思想があり、その中には「労働者の賃金を増やせば離職率を減らすことができて職場の教育費用を削減できる」というものがある。年功主義はそうした思想に合致する。
しかし生え抜き労働者は、優秀な生産技術を持っていないことがあり、企業にとって教育費用を支払わねばならない存在であることがあり、中途採用労働者と入れ替わったときに比べて企業の費用を増やすことがある。
年功主義を導入すると、使用者の権力が制限される。このため労働者が使用者の顔色をうかがわなくなり、使用者を中心とした中央集権の組織にならなくなる。
年功主義を導入した企業は、使用者に対して口答えばかりする生意気な労働者が増え、口うるさくて厄介な労働者が増え、「上司の言うことは絶対である」とする軍隊風の組織を作れなくなり、上意下達(トップ・ダウン)の徹底が行われなくなる可能性が発生する。
年功主義を導入すると、労働者が将来の賃金の安定性に確信を持つようになり、労働者が「自分の賃金は将来に大きく減らされない」と思うようになり、労働者が将来不安にさいなまれなくなる。そうなると労働者は予備的貯蓄をする必要性から解放され、消費好みで倹約嫌いの性格に変貌していく。
国家全体の限界消費性向MPCが高くなって限界貯蓄性向MPSが低くなり、消費が増えて投資が減り、クラウディングアウトとなり、実質利子率が上昇していく。実質利子率が上昇しすぎると、投資が減って将来の生産設備が減り、将来の資本量が減り、将来において国家の実質GDPが減り、国家が衰退する。
年功主義を導入すると、消費が増えて投資が減り、クラウディングアウトとなり、実質利子率が上昇していく。実質利子率が上昇すると企業の利払い費用が増えて企業の税引後当期純利益が減る。
また、年功主義を導入すると、使用者の権力が弱くなり、労働者が使用者に対しておびえなくなって労働運動をするようになる。そうなると賃金という費用が増えやすくなり、税引後当期純利益が減りやすくなる。
また、年功主義を導入すると、企業が賃金を「景気に対応する調整弁」として使うことが難しくなる。不景気になって業績不振に陥って収益を低下させた企業は、年功主義のせいで賃金という費用を一気に削減できないので、税引後当期純利益を減らしやすくなる。
つまり、年功主義を導入すると企業の倒産の危険性が高くなり、企業が倒産しやすい社会になる。
ある国において年功主義を一般化したあとに衰退産業が発生したとする。そのとき、衰退産業の企業は年功主義のために賃金を減らすことができないので、解散するときに弁済する負債が多くなり、解散した後に株主へ分配する残余財産が少なくなる。
衰退産業の企業が解散した後に労働者が有望産業に就職して部門間シフトが行われる。つまり、年功主義が一般化すると、株主の財産を潰しながら部門間シフトが行われるようになる。
年功主義は企業の株主の財産権を保護しない思想であり、株主資本主義に適合しない思想である。
年功主義を導入すると、使用者は「労働者を雇ったあとに企業の収益が減ったら年功主義のために賃金という費用を最低賃金の水準にまで減らせず企業が倒産する」と思うようになり、業績を拡大して市場占有率を増やす機会に恵まれたときも積極的に労働者を雇用できなくなる。そのため、市場占有率の高い大企業が増えにくくなる。
自由貿易を導入すると、企業は安価な海外産の商品と競争することになるので、市場占有率を高めてスケールメリットの恩恵を受けて安価な商品を生産できる体制をつくらねばならなくなる。年功主義を導入すると市場占有率の高い大企業が出現しにくくなり、スケールメリットの恩恵を受けにくくなり、自由貿易に対応しにくくなる。
年功主義・年齢主義は保護貿易を基調とする国に適合しやすく、成果主義・能力主義は自由貿易を基調とする国に適合しやすい。
ある国において年功主義を一般化すると、使用者が「労働者を雇ったあとに企業の収益が減ったら年功主義のために賃金という費用を最低賃金の水準にまで減らせず企業が倒産する」と考えるようになり、雇用に対して消極的になるので、失業者の就職率が下がる。
ただし、ある国において年功主義を一般化すると、使用者によって労働者の賃金を最低賃金の水準にまで減らすことが難しくなり、労働者の待遇を一気に悪化させることが難しくなるので、労働者の離職率が下がる。このため成果主義を一般化したとしても失業率が上がるとは限らない。
経済学者が経済の状況を測定するときに最も頻繁に使う経済統計は、実質GDPとインフレ率と失業率の3つである。そして、失業率は、労働者の離職率と失業者の就職率という2つの要因によって決定される。
短期勤続労働者というものは頭脳や筋肉が元気であることが多いが、そのわりに低い賃金で我慢することを強いられる。
短期勤続労働者は、「低額の賃金をもらっているのだから守秘義務を忠実に守らないかもしれない」とされて強い権限を持つ管理監督労働者になれないことが多い。つまり平社員の地位で我慢することを強いられる。
年功主義を採用すると、成果を挙げたり能力を高めたりすることについて労働者に対して外発的動機付けを掛けられない。
このため、年功主義を採用する職場は、成果を挙げたり能力を高めたりすることについて労働者に対して内発的動機付けを掛ける必要がある。具体的にいうと、「成果を挙げたり能力を高めたりすると顧客に感謝される」と労働者に言い聞かせたり、顧客の感謝の声を労働者に聞かせたりする必要がある。
顧客の感謝の声を収集してそれを労働者に伝える能力の低い職場は、言い換えると営業部門の実力が低い職場は、内発的動機付けを掛けることが上手ではない。そういう職場が年功主義を採用すると、労働者が成果を挙げず能力を高めないという結果を生みやすい。
昭和末期から平成初期の日本の大企業は、ほとんどが年功主義を採用しており、ごくわずかに成果主義・能力主義を混ぜ合わせていた。
1989年以前のトヨタ自動車は、すべての社員を入社年次によって分割して「輪切り」をしていた。そして、同期社員の集団の中で上位20%の社員に対してA評価を与えてごくわずかに基本給を上げることを毎年繰り返していた。同期社員の集団がある程度の年齢になったら、基本給を見るだけでそれまでの評価の積み重ねがわかるようになっていた。基本給の額を見て、基本給が他の社員よりも高いものを管理職に登用し、出世させていた[5]。
トヨタ自動車に限らず、どこの企業でもそのような人事制度になっていた。成果を挙げた社員に対してもごくわずかに基本給を上げるだけで、同期従業員同士の格差をほとんど付けない。50代の社員に対して基本給を確認して、基本給の高いものから管理職に登用する。若いうちに成果を挙げても即座に報酬として支払わず、長い時間を掛けた後に「管理職登用と管理職手当の支払い」とか「役員登用と役員報酬の支払い」という手段で報酬を与えており、成果主義・能力主義を極めて薄めた人事制度で会社を運営していた。
1980年頃の米国の大企業の中には、日本の大企業とよく似た企業があった。年功主義や終身雇用を採用して、労働者の生活の安定を重視する企業である。
IBM、ヒューレット・パッカード、インテル、NCR、GE、P&G、3Mといった企業が日本企業と似た企業とされていた[6]。
年功主義を採用する企業ばかりになった国は、どこの企業でも離職率が下がる。どこの企業も「人を教育することを他社にまかせる」とか「他社が教育した人材を引き抜く」という気風を持たなくなる。
そういう国では転職市場が小さくなり、転職を通じた労働者の再配置が少なくなり、転職を仲介する企業が儲からなくなる。
新しい産業が生まれるときにそうした産業へ労働力を円滑に移転させることは、どこの国にとっても重要な課題である。つまり「部門間シフトの円滑化」「労働力の円滑な移転」「円滑な労働移動」「労働移動円滑化」はどこの国にとっても重要な課題である。
年功主義を採用する企業ばかりになった国は、転職を通じずに労働者を再配置するという手法で対応する。新しい産業が生まれそうなときに、大企業が社内の雇用を維持しつつ社内ベンチャーを立ち上げて新しい産業に参加することが多くなる。
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6 ななしのよっしん
2024/01/09(火) 23:30:52 ID: 9qUaZ3zA8M
>>5
逆に同じレベルの才能、素養の人間同士で勤続年数が異なるなら短いほうが吸収が早くて優秀という評価になると思うが
7 ななしのよっしん
2024/01/24(水) 19:10:49 ID: G+WnBWRUKe
>>4
そこで逃げ切り世代って言われるんですよ(キリッとか言われても知らんがなとしかならんし、そもそも成果主義云々も日本の社会はくそだ!海外なら成果主義で俺みたいなやつも認められるのにー!みたいなのノリもなくはなかったろ
まあ、ネットで言われてる成果主義と現実の成果主義は違うのかもしれんが(すくなくとも日本の企業等が成果主義とやらは海外とかにあるらしい同盟のものとは全くの別もんなんだろう。しらんけど)
8 ななしのよっしん
2024/04/19(金) 12:18:04 ID: s4gcqn3yw5
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最終更新:2025/12/10(水) 05:00
最終更新:2025/12/10(水) 05:00
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