死んだオウムとは (シンダオウムとは) [単語記事]

死んだオウムとは、

完全に、明らかに死亡しており、完璧なまでにご臨終で、お亡くなりになり、この世を去って、事切れてしまい、息を引き取り、神の御許に旅立った「故オウム」で、死体であり、命が尽きて永遠の眠りにつき、今頃はヒナギクいっぱいのお墓の下でおねんねしている、その生涯に幕を閉じて昇天した、「元オウム」

である。

概要

「死んだオウム」はイギリスのお笑いグループ、モンティ・パイソンによるスケッチ（コント）。「スパム」「スペイン宗教裁判」などと並び、最もよく知られている。『空飛ぶモンティ・パイソン』第1シリーズ第8話にて放送。

とあるペットショップが舞台。
ノルウェージャンブルーのオウムを買った客・プラリーン氏（ジョン・クリーズ）が、購入した後でオウムが死んでいる事に気が付く。そればかりか、死んでいるオウムを止まり木に釘で打ち付けて売りつけられており、店番の店員（マイケル・ペイリン）にクレームを入れに来る。
ところがこの店員、何を言われようとも非を認めずに適当な言い訳を繰り返す。曰く「ホームシックにかかったんでしょう」「休憩中です」「気絶しただけ」「この鳥はあおむけで寝るんですよ」などなど。埒が明かず、キレた客が噛んで含めるようにネットリと説明したのが、冒頭の内容である。
特に「これは『元オウム』だ（This is an Ex-parrot!）」という言い回しは非常にバカバカしい。

ようやく「解りました、取り換えましょう」と店員に言わせる事に成功したが、あいにくオウムの在庫がない。返金しろよ。ボルトン（イギリスの地方都市）で自分の兄弟がやっているペットショップで交換するというので客はそちらに向かうが、何故か最初の店員がツケひげをつけて店番をしている。

キレ気味に「ここはボルトンだよな？」と問う客に対して店員は「イプスウィッチ（イギリスの地方都市）です」と嘘をつくが即バレ、しどろもどろになりながら言い訳をする。
「えーと、さっき言ったのは……ダジャレ（pun）です、言葉をさかさまに読む……」と言うが、客は怒りをこらえつつも「それは回文（palindrome）だ、ボルトン（Bol ton）の回文はノトロブ（Notlob）だ」（日本語字幕では「ントルボ」）とツッコミを入れる。
だんだんと収拾がつかなくなり、ぐだぐだになってきた所でグレアム・チャップマン演じる軍人が乱入、強引に次のスケッチ（正面ストリップ）に移る。

解説

そもそもこのスケッチは、ペイリンが購入した車が故障した為にディーラーに文句をつけに行ったが、ディーラーが「故障していません」と繰り返し、非を認めなかったという出来事から生まれている。
これを元にしたネタを身内で披露した所、チャップマンが「死んだペットを売りつけるペットショップってのはどうよ」と提案、このスケッチは完成した。その発想、非凡の極み。

ライブでもこのスケッチはおおいに観客を喜ばせ、セルフバカー変化球バージョンが生まれた。
店員がクレームに対して「申し訳ございませんでした」と謝罪、あっさり返金して退場。取り残された客が茫然としながら「サッチャー政権になるとこうも変わるものか...」とつぶやくオチで、当時の政治情勢もあって大ウケしている。

マーガレット・サッチャーもこのスケッチが印象的だったようで、首相辞任直後（1990年 12月10日）のスピーチにおいてイギリス自由民主党（党のシンボルがオウム）を批判して「これは『元オウム』です」と語り、満座が爆笑と喝采に包まれた。そこまでネタが浸透しているというのもすごい（なお、ジョン・クリーズは自由民主党の支持者である）。

1989年にチャップマンが癌で亡くなり、身内を集めた葬儀の席において、クリーズは「死んだオウム」の長台詞を用いた弔辞を述べ、参列者の笑いを誘った。スタイリッシュ不謹慎なこの弔辞についてクリーズは「もし私がこうしてこの場で笑いを取らなかったら、グレアムは私の事を許さないでしょう」と語り、コメディの世界に生きた盟友を「笑い」をもって送り出した。