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豚熱とは、豚とイノシシにのみ特異的に感染する伝染病である。人間には感染しない。
関連リンクなども参照のこと。
豚熱は日本の法律上の呼び名である。医学や報道では、従来から豚コレラ(とんコレラ)と呼ばれてきた。しかし、人間が発症するコレラと異なりウイルス性の感染症である。病状も重症度もコレラと全く異なるので呼び名が変わった。
フラビウイルスの仲間により発症する「豚熱(英語名 classical swine fever、古典的豚熱)」とアスフィウイルスにより発症する「アフリカ豚熱(英語名 African swine fever、アフリカ豚熱)」の2種類がある。どちらも豚、イノシシに感染するウイルスであり、いずれも死亡率が高い。主にダニによる媒介、感染豚等との直接的な接触により感染が拡大する。
一般に、完全に制圧可能な伝染病には①顕性、急性感染が普通で不顕性感染が無いこと、耐性を持った個体がウイルスを保持しないこと、②宿主域が狭く、病原体を長期間保持する生物や環境が無いこと、③効果的なワクチンがあること、が挙げられる。しかし、どちらも①(病性が多様で不顕性豚がキャリアになる)、②(ダニが広く分布する)を満たさない。豚熱に関してはワクチンが存在するが、アフリカ豚熱に関しては発病にいたるメカニズムが特殊なため、ワクチンの開発は事実上不可能であると言われている。
従って、どちらも一度ウイルスが拡散すると根絶することが極めて難しく、長期間、広範囲にわたって養豚が不可能になる恐れがある。人に感染しないからと言って軽視することは決してできない。
フラビウイルス科ペスチウイルス属のRNAウイルスによるブタの致死的病気で、通常こちらを豚熱という。アフリカ豚熱が発見されたことにより、英語名にclassicalが追加された。日本語名も古典的豚熱と呼んだ方が区別しやすいかもしれない。
1800年代にアメリカの野生イノシシから拡散したと考えられている。養豚を行う全ての国で感染が確認されたことがあると言われるほど感染力が高い。防疫に有効なワクチンを含めた的確な防疫手段が確立されたことから、1970年代には欧州を始めとした多くの国で撲滅されており、家畜の病気としてはまさに古典的と言える物となっていた。ただし、清浄国でも散発的に感染が確認されることがある。多くの場合感染経路不明とされるが、汚染国から違法に輸入した畜産物を豚が食べるなどして感染すると考えられている。
日本では1969年からワクチンが導入され、そのころから急速に感染例が減少していき、1990年代にはほとんど確認されなくなった。ワクチンの性質上、ワクチンを接種した豚と豚熱に感染した豚との見分けが付きにくく発見が遅れるため、ある程度感染例が少なくなった段階でワクチン接種を止める事になっている。日本でもワクチン接種による疑似患畜と区別するためにワクチンの接種が停止され、2007年には清浄国と認定された。
有効な治療法は無く、発生した場合の畜産業界への影響が甚大であることから、日本の家畜伝染病予防法において「家畜伝染病」に指定され、患畜・疑似患畜の速やかな届出と屠殺が義務付けられている。豚熱に感染したと疑われる豚が確認された場合、拡大を迅速に抑えるため、治療やワクチン接種は選択されず殺処分することが義務付けられている。
日本は豚熱の清浄国だったが、2018年9月頃から感染豚が再度確認され始め、野生のイノシシにも拡散しており、2019年11月現在も根絶する見込みは立っていない。野生イノシシを対象にワクチン入りの餌を撒いているが、まだ明確な効果は得られていない。事態を重く見て、9月頃から中部地方を中心に家畜へのワクチン投与が検討され始めた。
主な症状は高熱、元気消失、食欲減退、結膜炎、白血球減少など。人間のコレラなどと異なり、大量の下痢便が出ると言った豚熱に特有の初期症状は現れないのでよくある病気と誤診される危険がある。さらに詳しい症状はこちらを参照(解剖写真あり、閲覧注意)。発症から死亡するまでの期間が10~20日以内のものを急性豚熱、発症回復を繰り返した後に痩せ落ちて30日程度で死亡するものを慢性豚熱という。条件によっては感染豚に抗体が生成されず、ウイルスの拡散源となってしまう。
豚熱とよく似た症状を示す病気に、アフリカ豚熱、トキソプラズマ病、急性敗血症型豚丹毒、オーエスキー病、豚繁殖・呼吸器障害症候群(PRRS)などが挙げられる。これらの病気が流行している場合、豚熱の発見が遅れることがあるので注意を要する。
アスフィウイルス科アスフィウイルス属のDNAウイルスによる豚の致死的な病気で、ウイルスの種類と危険性を上記と区別するためアフリカ豚熱という。アスフィウイルスはもともとダニに感染するウイルス種であったが、イノシシに特異的に感染するよう変化したと考えられている。
アフリカに住むイボイノシシが自然に保持していたものがダニを媒介とすることで家畜に感染したものと考えられている。家畜種に対し極めて高い毒性を示すため、古くからアフリカでの豚の飼育は成功することがなかった。古くは1960年代頃にイベリア半島やキューバ、ブラジルなどに拡散していった。2007年頃に突如ユーラシア大陸に進出し、中国を中心に拡大し猛威をふるっている。
この感染症が危険視される理由は致死性だけでなく、一度常在化すると防疫が極めて困難であることが挙げられる。糞便やダニの体内、肉中にウイルスが数か月にわたり安定して存在できること、運良く病気が治った豚やイノシシにウイルスが残り続けること、現在ワクチンによる防疫が不可能であることなどがその理由である。
1〜2日程度の潜伏期間を経て、高熱、元気消失、食欲不振、場合により皮膚に鬱血が生じるが、これらの症状が現れる前に突然死する場合もある。詳しい症状はこちらを参照(解剖写真あり、閲覧注意)。死亡率は極めて高く、アフリカ株では発症後48時間で98%~ほぼ100%に達する。アフリカ以外の主な流行地であるポルトガル、スペイン、ブラジル、ドミニカの株は死亡率50%以下である。豚熱と症状がよく似ているが、こちらの方が急性であり、危険度は高い。豚熱同様よく似た疾病が多く存在するため、他の病気との鑑別には注意を要する。
有効で安全なワクチンが開発される見込みはほぼ無い。有効な治療法も無く、感染被害を押さえるには発見次第速やかに殺処分し消毒することが唯一の有効な手段である。
家畜伝染病予防法に基づく予防的殺処分の対象となっており、口蹄疫や豚熱と同様の扱いになる。
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最終更新:2024/11/08(金) 19:00
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