ゲイクルセイダー(Gay Crusader)は、1914年生まれのイギリスの元競走馬・元種牡馬。史上12頭目の英国クラシック三冠馬である。
父Bayardo、母Gay Laura、母父Beppoという血統で、父の生産所有者であったアルフレッド・W・コックスという人物の生産所有馬。父バヤルドと同じくアレック・テイラー・ジュニア調教師に預けられた。
ガロピン(セントサイモンの父)の3×3×5(28.13%)という強いインブリードに加えてセントサイモン自体の血も持っているという、現代の視点から見ると大分気性のヤバそうな血統だが、成長すると大人しい気性になったようだ。
ちなみにこの時代はまだ馬主登録の名義を偽名にすることが認められており、コックスは「Mr. Fairie」という偽名を使用していた。
2歳時は骨膜炎のため秋までデビューがズレ込み、デビュー戦は6着に敗れた。しかし続けて出走したクリテリオンSをアタマ差で勝利し、2歳時は2戦1勝とした。
3歳初戦としてコラムプロデュースSというレースに出走したが、136ポンド(約61.7kg)という小柄な3歳馬には厳しい斤量を背負わされた上に不良馬場でのレースとなり、2着に敗戦した。それでも3/4馬身差と僅差だったので、2000ギニーステークスでは1番人気に支持された。ここでは同厩の実力馬マグパイも出走しており、テイラー師の意向で両馬は併せ馬すらしたことがなかったため、どちらが強いか注目されたのだが、マグパイをアタマ差で下して勝利した。
ところで、本馬が生まれた1914年といえば、ご存知の通りサラエボ事件をきっかけとした第一次世界大戦が起きた年である。イギリス競馬も戦禍とは無縁ではなく、2000ギニーが行われるニューマーケット競馬場以外の主要な競馬場はほぼ全て軍による接収や物資節約のための閉鎖が行われたために、とてもではないが開催出来るような状態ではなかった。
それでもクラシックはニューマーケット競馬場での代替開催で凌いでいたのだが、この年に入って戦況が悪化したために、イギリス政府は全ての競馬開催を中止する方針を打ち出した。流石にそれは困るということでジョッキークラブなどが反対した結果、最終的にニューマーケット競馬場に限定して開催を続行することが認められた。
二冠目のダービーはこうして幸いにも戦火を免れ、通常より2ヶ月遅い7月末に、戦時中のそれまでの代替開催と同じく「ニューダービー」として開催された。ここでは途中で若干の不利を受けながらも、最後は4馬身差で完勝した。
アスコットゴールドカップの代替開催として行われたニューマーケットゴールドカップでは初の古馬対戦ながら単勝1.08倍の圧倒的1番人気に推され、2着に15馬身差を付け圧勝。三冠目・セプテンバーSへ臨んだ。
……「ん? セントレジャーは?」と思った方もいるかもしれないが、実はドンカスター競馬場は「代替開催してもいいけどセントレジャーの名前は使うなよ」と意思表示していたため、セントレジャーの代替開催は「セプテンバーS」として行われていたのだ。
さて、ここではゲイクルセイダーの強さに恐れをなした他陣営が続々と回避し、残ったのは僅か2頭。3頭立ての競馬となった。レースでは馬なりのまま苦もなく抜け出し、そのまま6馬身差で圧勝して三冠を達成した。
あまりの楽勝のためにゲイクルセイダーには全く疲労が残っていなかったらしく、セプテンバーSの2日後のロウザーSという14ハロン戦にも出走し4馬身差で楽勝。更に英チャンピオンS・ライムキルンSを連勝し、8戦7勝で3歳シーズンを終えた。この活躍により、生産所有者のコックスはこの年の馬主・生産者ランキングで共に首位を獲得した。
4歳時はゴールドカップ連覇を目指したが、テイラー師の反対を押し切ってコックスが出走させた非公式レースを勝った翌日、絞りきれていない馬体で無茶をしたせいか故障が判明。そのまま引退に追い込まれた。
公式戦の通算戦績は10戦8勝2着1回だった。全レースで手綱を執ったスティーブ・ドノヒュー騎手に「今まで乗った中で最高の馬」と言わしめるなど、代替開催だったとはいえ三冠に相応しい実力の持ち主であった。
種牡馬入りしたゲイクルセイダーは、10万ポンドのオファーを蹴ったコックスが自身で所有していた。高い勝ち上がり率をマークしていたものの、自身を彷彿とさせる超大物には恵まれず、1932年9月に18歳で死亡した。
直系は既に途絶えたが、本馬は母父としては優秀であり、1940年には2000ギニーと凱旋門賞を勝ったジェベルの活躍でフランスのリーディングブルードメアサイアーを獲得。他にも母父としてプリンスローズやエルグレコ(リボーの母父)を出しており、これらの馬を通して血統の奥底にゲイクルセイダーの血を持つ活躍馬は多い。
| Bayardo 1906 鹿毛 |
Bay Ronald 1893 鹿毛 |
Hampton | Lord Clifden |
| Lady Langden | |||
| Black Duchess | Galliard | ||
| Black Corrie | |||
| Galicia 1898 黒鹿毛 |
Galopin | Vedette | |
| Flying Duchess | |||
| Isoletta | Isonomy | ||
| Lady Muncaster | |||
| Gay Laura 1909 黒鹿毛 FNo.1-g |
Beppo 1903 青毛 |
Marco | Barcaldine |
| Novitiate | |||
| Pitti | St. Frusquin | ||
| Florence | |||
| Galeottia 1892 鹿毛 |
Galopin | Vedette | |
| Flying Duchess | |||
| Agave | Springfield | ||
| Wood Anemone |
クロス:Galopin 3×3×5(28.13%)、Sterling 5×5(6.25%)
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最終更新:2025/12/25(木) 01:00
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