本記事では、UGC百科事典サイト (ニコニコ大百科やピクシブ百科事典、各種ファンwiki等) における、いわゆる「炎上」案件の記事の書き方および心構えについて述べる。
炎上案件は多くのアクセス数を稼ぐ一方で、編集者自身がトラブルに巻き込まれるリスクや、記事そのものが法的な問題 (名誉毀損など) を孕む可能性が非常に高い。
むろん本記事が唯一無二の正解というわけでもなく、「あえて火に油を注ぐようなスタイル」で成功している例もなくはないが、基本的には火傷をしないための防護服としてのメソッドを紹介する。
まえがき――なぜ炎上記事は難しいのか
UGC百科事典サイトにおいて、炎上記事は「花形」であり「地雷原」でもある。誰かが何かをやらかした時、人々は情報を求めて百科事典サイトに殺到する。「何が起きたのか?」「誰が悪いのか?」「どうなったのか?」。これらの需要に応えることは百科事典の役割の一つと言えよう。
しかし、炎上の渦中においては情報が錯綜し、感情的なデマが飛び交う。その中で記事を執筆・編集するということは、情報の濁流の中で砂金を選り分けるような作業である。一歩間違えれば、編集者自身がデマの拡散に加担することになり、最悪の場合は訴訟リスクさえある。
Phase 1: 執筆前の心構え
義憤に駆られて書かない
「許せない!」「この悪事を世に知らしめなければ!」という正義感 (義憤) は、記事執筆のモチベーションとしては強力だが、炎上記事においては最大の敵である。
義憤に駆られた編集者は、往々にして「断罪」を目的にしてしまう。百科事典は裁判所ではないし、編集者は検察官でも裁判官でもない。ただの書記官である。「あいつはこんなにひどいことをした」という形容詞を多用するのではなく、「あいつは〇〇をした」という動詞を積み重ねるべきである。
もし画面の前で怒りに震えているのなら、ブラウザを閉じて寝たほうがいい。その記事は、貴方以外の誰か適任者が淡々と書いてくれるはずだ。
「晒し台」を作らない
特定の個人を攻撃するためだけに記事を作成する行為は、多くのUGC百科事典サイトで禁止されているか、推奨されていない。特に一般人 (あるいは半公人) の個人情報を晒し上げるような記事は、プライバシー侵害で削除される可能性が高い。
記事の目的は「事象の解説」に置くべきであり、「個人の糾弾」に置くべきではない。主語は「人物」ではなく「事件」や「騒動」にするのが賢明である。
Phase 2: 情報の収集と選別
詳しくは『UGC百科事典サイトのソースの書き方』を参照していただきたいが、炎上記事においては特に以下の点が重要になる。
魚拓 (WebArchive) は命綱
炎上案件では、発端となったツイート(ポスト)やブログ記事、動画が即座に削除されることが常である。「後でソースとして貼ろう」と思っていても、数時間後には消えている。見つけたら即座に Wayback Machine や Archive.today で保存する癖をつけよう。
削除されたソースを「〇〇と言っていた (ソースなし)」と書くことほど信頼性を損なう行為はない。
「憶測」と「事実」の峻別
炎上初期には「実は〇〇らしい」「裏垢で××と言っていたらしい」という怪情報が飛び交う。これらを事実として記載してはならない。
どうしても触れる必要がある場合は、「ネット上では〇〇という説も流布したが、根拠は提示されていない」「××という噂が広まり、本人が否定する事態となった」というように、「そういう噂があったという事実」として記述する。
Phase 3: 記事の構成
炎上記事を読みやすく、かつ中立的に見せるための鉄板の構成がある。
時系列 (タイムライン) 形式の採用
感情論を排して事実を伝える最強のフォーマットが「時系列」である。
- YYYY/MM/DD: A氏がXにて発言 (Web魚拓)
- YYYY/MM/DD: B氏が上記引用リツイートにて反論
- YYYY/MM/DD: A氏、当該発言を削除し謝罪文を掲載 (Web魚拓)
- YYYY/MM/DD: ニュースサイトCが本件を取り上げる (Web魚拓)
このように事実を淡々と並べるだけで、読者は「A氏が最初に余計なことを言い、早々に火消しを図ったが延焼した」という文脈を勝手に読み取ってくれる。編集者が「A氏の対応は後手後手であり、非常に不誠実であった」などと主観的な評価を下す必要はない。
「事象」と「反応」の分離
「何が起きたか」というセクションと、「それに対する世間の反応」というセクションは分けたほうがよい。
「反応」セクションでは、肯定的な意見と否定的な意見の両方を併記する。「炎上している」ということは否定意見が多いのは自明だが、それでも「A氏の発言にも一理ある」「B氏の反論は言葉が過ぎる」といった擁護意見や冷静な分析があれば拾い上げることで、記事の中立性が担保される (ように見える) 。これは「両論併記」という、編集合戦を避けるための知恵でもある。
Phase 4: 記事の運用とメンテナンス
記事を公開したら終わりではない。炎上記事の掲示板 (コメント欄) は、まさに地獄の釜の蓋が開いたような状態になるだろう。
掲示板の熱に当てられない
掲示板では「記事のここが甘い」「もっとA氏を叩くべきだ」「工作員が記事を編集している」といった罵詈雑言が飛び交うかもしれない。しかし、掲示板の意見は「話半分」に聞くべきである。掲示板の声が必ずしも総意ではない。
有用な情報提供や誤字の指摘だけを拾い、感情的な煽りはスルーする。編集者自身が掲示板でレスバトルを繰り広げるのは、記事の炎上に油を注ぐ行為であり、最も避けるべき事態である。
鎮火後の処理
炎上はいつか必ず鎮火する。数ヶ月、あるいは数年後、誰もその話題をしなくなった時、記事はどうあるべきか。
過剰に詳細すぎる記述や、当時の熱量のまま書かれた感情的な文章は、後から見るとノイズでしかない。ほとぼりが冷めた頃に、「概要」として数行でまとまる程度に圧縮編集することも、UGC百科事典サイトの「園芸 (ガーデニング)」として重要な作業である。
関連項目
- 炎上
- UGC百科事典サイトの記事の書き方
- UGC百科事典サイトの記事の組み方
- UGC百科事典サイトのソースの書き方
- Wikipedia:中立的な観点
(Wikipediaの記事だが、概念として参考になる)
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