ナーセットとはトレーディングカードゲーム『Magic: The Gathering』の登場人物である。
プロファイル
タルキールのカンフー集団ジェスカイ道出身の女性。
女性でありながらもトップである「カン」の地位に就いている。
武術の達人にして学者、神秘家でもある彼女は若き日を放浪の戦士として過ごし、他の氏族や文化を目の当たりにしてきた。その実践的な知識はジェスカイの他の学者の知識とは異なるものであり、指導者の地位に就く彼女の役に立っている。
ある日、かつてのタルキールに存在した謎の龍、ウギンの遺した解読不能なルーン文字と向き合い、日課である瞑想をしていた最中、『癒やせ』という謎の声が脳裏に響いた。
それに驚き、瞑想状態から脱したナーセットはこの事を世界の命運に関わる事態と察知し、代理のカンを立ててジェスカイを後にした。
その旅路の途中、ジェスカイの住まう高山の麓で謎の放浪者、サルカン・ヴォルと出会う。
彼も『癒やせ』という謎の声に導かれて旅をしており、ナーセットはその声がウギンのものであること、彼がその声に従い『扉』を求めて旅をしている事を知る。
それと同時に彼の中にある『なにか違うもの』にも感づいていた。
幸いにもその『扉』に思い当たる場所を知っていたナーセットは、かつてウギンが斃された場である『精霊龍の墓』へと共に向かうことになる。
精霊龍の墓に着いた二人はサルカンに恨みを持つマルドゥ族のカン、ズルゴの襲撃を受ける。
ナーセットはサルカンを先に進ませ、ズルゴに応戦する。
ナーセットはズルゴに対し優勢を保つが、不意を突かれ剣で胸を貫かれ、命を落としてしまう。
サルカンは怒りと悲しみに心を乱されながらも、彼女の遺志を汲み、現れた炎の『扉』を抜けて1280年前のタルキールへと向かった。
サルカンの活躍によりウギンが滅ぶ運命は覆され、ズルゴは鐘を突き、新たな歴史を刻んだタルキール。
そこでもナーセットは生きていた。
カンによる支配が覆され、龍王が支配する事となったけどやってることは相変わらずカンフーなジェスカイ改めオジュタイに属していた彼女は8歳の時に母親の買い物に付いて行った際に脳裏に響く謎の声を聞く。
『悟りを求めよ。知恵を追い求めよ。知識を集めよ。真実を見つけよ。』
そう囁くその声の主はオジュタイを支配する龍王、オジュタイのものであった。
その声と共に次々と流れてくるイメージに心を震わされた彼女はオジュタイの弟子となることを決意する。
その後も三年間、母の買い物に付いて行っては市場の外れでオジュタイの教えを聞いていたが、それだけでは飽きたらなくなっていた。龍王の近くで学びたい。もっと近い場所でオジュタイの教えを聞きたい。
そんなナーセットの意志を読んだオジュタイは彼女のもとに弟子の一人のエイヴンを遣わせ、ナーセットを自身の元へと案内させ、彼女により多くを学ばせた。
その後もナーセットはオジュタイの下で学び、最年少で師の座へと上り詰めた。
しかし、頂点を極めてしまった彼女に学ぶべきことはもはや無く、日々知識の渇望に飢えていた。
そしてとうとうその飢えに耐えられなくなり、ナーセットは破門を承知で一人、山を降りた。
山を降りたナーセットは隠された書庫を見つける。
彼女は無我夢中で蔵されていた書物を読み、タルキールの真実を知る。
―かつては龍ではなく、カンが一族を支配していたこと。
―そのカンが龍を狩っていたこと。
ー『サルカン』と名乗る男が精霊龍ウギンを救ったこと。
ー更に勢いを増す龍の脅威から一族を守るため、各々のカンが会合をしていたこと。
―その会合の場が二体の龍によって破壊されたこと。
― そしてそのうちの一体が、彼女の師であるオジュタイであったこと。
そこまで知ったナーセットは自身の内にある何かが溢れ出るような感覚に気がついた。
それに気がついた時、タルキールからはじき出され、ナーセットの目の前には数多もの次元が目に見えていた。
そう、彼女の内には『プレインズウォーカーの灯』が宿っていたのだ。
目の前に広がる素晴らしい世界へ足を踏みだそうとしたナーセットだが、最後の瞬間でそれを踏みとどまった。
何故踏み出さなかったのかはわからない。
だがその時以来、彼女は自分の内にある『力』を自覚できていた。
そしてあの素晴らしい世界へと踏み出すことは容易である事も悟っていた。
だが、彼女は踏みとどまり、その代わりにタルキール中を見て回った。学ぶべきものがあるはずと信じて。
そして、世界を巡り回った果てにかつて幼き日にオジュタイに教えを授かった市場の外れのあの場所へと辿り着く。
そしてその場所に座していた時、突如としてオジュタイの声が響いた。顔を上げたナーセットの眼前にはオシュタイの姿があった。オジュタイは彼女に問う。
「何を学んだ?何を発見した?何を知ったのだ?」
ナーセット驚きながらもこう返した。
「真実を、学びました。」
ナーセットは破門を覚悟した。だが、オジュタイは怒りはせず、ただ穏やかに微笑みながらこういった。
「誰もが必要とすべきは、悟りを求めること。学ぶべきものは常にある。」と。
オジュタイは今でもナーセットの師であった。そのことを知った彼女はオジュタイに礼を告げる。
礼を聞いたオジュタイはこの場を飛び去った。
その後、知識を求めてウギンに会うべくカル・シスマ山脈を旅していたナーセットは、彼女を探していたサルカンと出会う。
サルカンはナーセットのことを「友人」と言っていたが、彼女はその顔に覚えはなかった。何この人こわい。
それもそのはずだ。彼が知っているのは運命が再編される前の『ジェスカイのカン』であるナーセットなのだから。
しかしナーセットはその名前は知っていた。サルカン即ち、サル-カン。「偉大なるカン」を意味するその名前は、遠い昔にウギンの命を助けたとされる伝説の龍人の名前であった。
サルカンは迷った末、真実を語った。
―サルカンとサルカンの知る「ナーセット」は龍のいないタルキールに生まれたこと。
―その「ナーセット」が死んだこと。
―自分が時を遡って龍が滅ぶ歴史を書き換え、今のタルキールとナーセットがあること。
彼女は自分の読んだ書物の中のサルカンの戯言と隠された歴史が真実であったことを知った。
そして、ナーセットは隠された書庫で起こった、内から沸き上がる力によって「タルキールの外の世界を見た」体験を語った。
そしてサルカンは、いつぞやの獅子人のときと同じように、その力を持った人間を「プレインズウォーカー」と呼ぶことと、自身とウギンが同様の力を持った存在であるということを明らかにした。
ナーセットはウギンと話をした後、アタルカ氏族の領土へ行き、噂に聞く、マンモスの象牙に刻まれた古の物語を探し求めるつもりだと話した。
サルカンはナーセットに尋ねる。
「タルキールをまた離れることは考えていないのか?探検すべき多くの世界があるし、その全部を見ることすらできないくらいだ。」
「いつか、そうすると思う。だけど、この世界にはまだ沢山の謎がある。今はまだ......私は、この世界に居たい。」
ナーセットの返答を聞いたサルカンは、今ここにいるナーセットが自分の知る「ナーセット」―何よりも知識を追い求める女性と同じであることを知り、微笑んだ。
「ああ、君が何を言いたいかは、よく分かっている。」
カードとしてのナーセット
ナーセットとしてデザインされたカードは当記事作成現在では2枚存在する。
Narset, Enlightened Master / 悟った達人、ナーセット (3)(青)(赤)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) モンク(Monk)
先制攻撃、呪禁
悟った達人、ナーセットが攻撃するたび、あなたのライブラリーの一番上から4枚のカードを追放する。ターン終了時まで、あなたはこのターンに悟った達人、ナーセットにより追放された、クリーチャーでないカードをそれのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
3/2
タルキール覇王譚に収録されたナーセット。
この時は灯が目覚めていないのでクリーチャーである。
攻撃するたびにライブラリーのカードをノーコストで出せるという強い能力を持つ。
だが、6マナと重く、パワー・タフネスは3/2とマナレシオは低い。
しかし、高いアドバンテージ力と除去耐性により、デッキの中核を担える可能性はある。
また、強力なカードが多くブロックされない確率が比較的高く初手ナーセットが確定するに等しいフォーマットである統率者戦では屈指の強ジェネラルとして恐れられている。
Narset Transcendent / 卓絶のナーセット (2)(白)(青)
プレインズウォーカー — ナーセット(Narset)
[+1]:あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。それがクリーチャーでも土地でもないカードであるなら、あなたはそれを公開してあなたの手札に加えてもよい。
[-2]:このターン、あなたが次にあなたの手札からインスタント呪文かソーサリー呪文を唱えたとき、それは反復を得る。
[-9]:あなたは「あなたの対戦相手はクリーチャーでない呪文を唱えられない。」を持つ紋章を得る。
6
タルキール龍紀伝に収録された通算2枚目のナーセット。
こちらは灯が覚醒し、プレインズウォーカーとしての登場である。
少プラス能力は制限付きの手札補充。《ドムリ・ラーデ》の「クリーチャーでも土地でもないカード」版である。専用にデッキを構築すれば手札を増やす確率を大きく上げることが可能であるし現スタンダードでの青白はその手の強力カードは中々豊富である。
少マイナス能力は《炬火のチャンドラ》と似たような能力。アドバンテージを稼げるが二回目までにタイムラグがあること(これはメリットにもなり得る)、もともと反復を持っている呪文に対しては意味が無いことには注意。
大マイナスは対戦相手に生物以外唱えることを禁止する紋章。クリーチャーの少ないコントロールは悶絶するだろう。ビートダウンには効果が薄いがビートダウンには少マイナスだけ使っていればいいだろう。
初期忠誠度が6と硬い上4マナとそこまで重くなく、コントロールデッキでの活躍が期待される。
余談
- 当初はイロモノカンフー集団の長ということで「彼女もネタキャラなんだろうなぁ」と一部で思われていたがストーリーが進むにつれ茶目っ気のある可愛らしさを見せ、さらにタルキールブロックでの主人公であるサルカン・ヴォルの戦う目的でありかけがえのない人となる。これを受けて「ナーセットさんマジヒロイン」「カンがヒロインとか流石ジェスカイ道マジ狡猾」という声がネットの一部で上がった。タルキールブロックのストーリーはまだ進行中(2015年3月現在)であり、これからのストーリーに目が離せない。
- ストーリーラインを担当しているDoug Beyer氏のブログによるとナーセットは「現代社会では自閉症スペクトラム、非定型発達として説明される(要訳、ちゃんと知りたい人は原文を読んでください)」とのこと。
幻聴に悩まされるプレインズウォーカーといいトランスジェンダーなカンといい強迫性神経障害の龍王といいタルキールはメンタルケアが必要なキャラが多い。
関連項目
- 3
- 0pt