水戸ホーリーホック新スタジアム問題とは、Jリーグに所属するサッカークラブ「水戸ホーリーホック」が、J1クラブライセンスの基準を満たすための新スタジアム建設または既存スタジアムの改修を巡る一連の課題や議論の総称である。
特に、ホームタウンである水戸市とクラブ側との間で見解の相違やコミュニケーションのすれ違いが長年にわたり続いており、計画が膠着状態に陥っている点が大きな特徴となっている。
概要
水戸ホーリーホックの現在のホームスタジアム「ケーズデンキスタジアム水戸」は、J1ライセンス基準で定められた観客席を覆う屋根の設置率などを満たしていない。そのため、クラブは毎年「将来的なスタジアムの改善」を約束することを前提に、例外的にライセンスの交付を受けている状況にある。
この問題を解決すべく、2019年に関係者による検討協議会が発足。当初は市の活性化にも繋がる新スタジアム建設を前提に議論が始まった。しかし、候補地の選定や100億円規模と見られる巨額の財源確保が難航。
議論が長期化する中で、行政側はより現実的な選択肢として既存スタジアムの改修を重視するようになる。一方で、クラブ側は観戦環境の抜本的な改善などを理由に新設を求め続けたため、両者の間には徐々に溝が生まれていった。
特に、市が「改修」の予算を計上した直後にクラブ側が「新設」の構想を打ち出したという経緯があり、これが両者の信頼関係を損なう一因となった。現在も計画の方向性は定まっておらず、具体的な進展が見られないまま時間だけが経過している。
経緯まとめ
| 時期 | 主な動き・やり取り | 関係性の変化・ポイント |
|---|---|---|
| 2019年 | 【協調と期待】 「水戸のサッカースタジアム検討協議会」が発足。水戸市、茨城県、クラブが一体となり、新スタジアム建設を前提に議論を開始。 同時期、水戸市はJ1基準を満たすため、既存のケーズデンキスタジアム水戸の改修(費用30~40億円)を決定し、基本計画策定の予算を計上していた。 |
良好なパートナーとしてスタート。市長も市の活性化の観点から前向きな姿勢を示す。 しかし、この時点で既に市(改修)とクラブ(新設)の間で、将来像に対する根本的な認識のズレが生まれていた。 |
| 2020年~2022年 | 【現実の壁と方針の揺らぎ】 クラブ側が目指す新設案は、旧市役所跡地や桜山地区などの候補地が挙がるも、費用や用地確保の問題で次々と難航。 クラブ側は「民設民営」だけでなく、行政との連携(公民連携)による新設を模索し続ける。 |
新設のハードルの高さが明らかになり、計画が停滞。市側は財政的な観点から、より現実的な選択肢として改修案を重視する姿勢を強め、両者の間に温度差が生じ始める。 |
| 2023年 | 【すれ違いの表面化】 クラブ側が新設を求める署名活動を強化するなど、膠着状態の打破を目指す。 これに対し、高橋市長は会見などで「財源の目処が立たない」「まずは改修も現実的な選択肢」と慎重な発言を繰り返す。 |
市長の慎重な発言が、新設を強く望むクラブやサポーターには「後ろ向き」と受け取られ、両者の関係に溝が生まれる。 |
| 現在 (2024年~) | 【膠着と市長の遺憾表明】 高橋市長が定例会見(2025年2月)で、過去の経緯に対する強い遺憾の意を表明。「(令和元年に)市は改修予算を計上していたのに、クラブから協議なく新設計画が打ち出された」「あの時行っていれば30~40億円で済んだのに」という趣旨の発言を行い、両者のすれ違いが決定的なものとなる。 クラブ側はJ1ライセンス失効への危機感を訴え続けるが、打開策は見いだせない。 |
市は「クラブ側の動きが原因で話がこじれ、好機を逸した」というスタンスを明確化。クラブは「市の協力なくして前進はない」という状況で、良好とは言えない膠着状態が続いている。 |
補足
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クラブの経営体質と過去の問題
水戸ホーリーホックは過去に深刻な経営難や債務超過に陥った経緯があり、2019年には社員への残業代未払い問題も発覚している。クラブの経営規模や財務的な体力の限界が、巨額の投資を伴うスタジアム計画の足かせになっている側面がある。
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建設候補地の広域化
水戸市との協議が停滞する中、クラブ側は2025年1月に、建設候補地を水戸市内に限定せず、周辺の市町村も含めた広域で検討していく方針を表明した。これは膠着状態を打破するための新たな動きである。
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市長の牽制発言
高橋市長は2025年2月の会見で、「本市が悪いというストーリーを作らないでほしい」と発言。これは、計画が進まない責任が市にあるかのような見方が広まることへの強い不快感と、クラブ側への牽制を示すものであり、両者の信頼関係の悪化を象徴している。
関連リンク
- 水戸ホーリーホック オフィシャルサイト
- 市長記者会見要旨(令和7年2月25日) - 水戸市ホームページ
- Jリーグスタジアム基準|Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)
- 水戸ホーリーホック 新スタジアム建設計画の進捗状況に関する記者発表を行いました (2022年10月20日)
- 水戸ホーリーホック スタジアム建設計画の進捗状況に関するご報告を行いました (2025年1月31日)
- 【年度内に基本計画策定】ケーズデンキスタジアム水戸、芝生席改修で1・5万席確保へ - 日本工業経済新聞社 (2019年9月12日)
- J2水戸が残業代11年間未払い&幹部パワハラ 社長が認める - 日刊ゲンダイDIGITAL (2019年6月24日)
関連項目
親記事
子記事
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