自己株式とは、企業の財務に関する言葉の1つである。
概要
定義
自己株式とは、自社株買いをしたあとに企業が保有するようになった株式のことをいう。自社株とか金庫株とも呼ばれる。
性質
自己株式には株主総会における議決権が付与されないし、配当を受け取る権利も付与されない。
自己株式は貸借対照表の純資産の部において0以下の数値として記録される。マイナス数値になったら△の記号を数字の前につける。
3つの選択肢がある
自己株式に対して企業がとる行動には保有・処分・消却という3つの選択肢がある。
保有とは処分や消却をいつでも行える状態を保つことである。処分とは売却のことで、株主になる人に対して譲渡することであり、再交付ともいう。消却とはこの世から抹消することである。
必要な手続き
自己株式の取得については自社株買いの記事を参照のこと。
自己株式の保有については法律での制限がない。企業は自己株式を半永久的に保有し続けることができる。
自己株式の処分をするには、新規株式発行と同じ手続きを行う。公募増資や第三者割当増資や株主割当増資と同じ手続きになる。
自己株式の消却をするには取締役会の決議が必要である(会社法第178条)。また、発行済株式総数が変化するので登記の手続きも行う。
仕訳
自社株買い
企業Aがあり、株主Bから銀行預金10000円の出資を受け、代償として100株を渡した(1株100円)。5000円を資本金に登録しつつ事業の基礎にして、5000円を資本準備金に登録しつつ銀行預金という流動資産の形態のままにした。そのあと「資本準備金に登録したままだとすぐに社外に出すことができない」と考えて、5000円の資本準備金を「その他資本剰余金」に振り替えておいた。
ある程度時間がたって、「5000円のその他資本剰余金とその見合いとなる銀行預金5000円は、事業を続けるに当たって不要だ。この5000円を使って株主Cから自社株買いをして、我が社に友好的な株主Bの議決権比率を引き上げよう」と考え、実際に株主Cに銀行預金5000円を払って50株を買い取った(1株100円)。
このときの仕訳は次のようになる。
借方 | 貸方 |
自己株式5000円(純資産) | 銀行預金5000円(資産) |
理論上は「借方 その他資本剰余金5000円(純資産) 貸方 銀行預金5000円(資産)」とすることが可能であるが、それは自社株買いと「自己株式の消却」を同時に行うときの仕訳になってしまう。
自己株式というのは純資産のマイナス項目である。あるいは「自己株式はその他資本剰余金のマイナス項目のようなものである」といった具合に理解することも可能である。
仕訳をするときは、純資産が減るときに借方(左側)に純資産を書き、純資産が増えるときに貸方(右側)に純資産を書く。
しかし自己株式の仕訳をするときは、自己株式が増えるときに借方(左側)に自己株式を書き、自己株式が増えるときに貸方(右側)に自己株式を書く。それは何故かというと、自己株式は純資産のマイナス数値だからである。
消却
企業Aが自己株式の50株(簿価100円)を消却し、この世から完全に消し去ったとする。このときの仕訳は次のようになる。
借方 | 貸方 |
自己株式消却損5000円(純資産) | 自己株式5000円(純資産) |
自己株式消却損というのはその他資本剰余金のマイナス項目なので、次のように仕訳するのとほとんど同じ意味である。
借方 | 貸方 |
その他資本剰余金5000円(純資産) | 自己株式5000円(純資産) |
損失を出しつつ処分
企業Aが自己株式の50株(簿価100円)を時価80円で処分して、銀行預金4000円を得ながら損失を出したとする。そのときの仕訳は次のようになる。
借方 | 貸方 |
銀行預金4000円(資産) 自己株式処分差損1000円(純資産) |
自己株式5000円(純資産) |
自己株式処分差損というのはその他資本剰余金のマイナス項目なので、次のように仕訳するのとほとんど同じ意味である。
借方 | 貸方 |
銀行預金4000円(資産) その他資本剰余金1000円(純資産) |
自己株式5000円(純資産) |
利益を出しつつ処分
企業Aが自己株式の50株(簿価100円)を時価120円で処分して、銀行預金6000円を得ながら利益を出したとする。そのときの仕訳は次のようになる。
借方 | 貸方 |
銀行預金6000円(資産) | 自己株式5000円(純資産) 自己株式処分差益1000円(純資産) |
自己株式処分差益というのはその他資本剰余金のプラス項目なので、次のように仕訳するのとほとんど同じ意味である。
借方 | 貸方 |
銀行預金6000円(資産) | 自己株式5000円(純資産) その他資本剰余金1000円(純資産) |
関連項目
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