E-2Cとは、アメリカのノースロップ・グラマン社が開発した早期警戒機である。愛称はホークアイ。
概要
最初から早期警戒管制機として開発された唯一の機体で、初期生産型のE-2Aは1964年に実用化、陸上を低空で飛行する目標を探知する能力を持つE-2Cは1972年に登場した。艦上機として開発されているが、E-2Cは陸上基地からの運用にも適合する能力があるため、米海軍だけでなく、日本、フランス、台湾、イスラエルなどが導入している。
空母で運用するため、主翼を根元から折りたたむ機能が搭載されている。乗組員はパイロット二名、レーダー操作担当三名の計五名が乗り組む。
E-2Cのセンサーの中核はAN/APS-125(新しい機体はAPS-138)捜索レーダーで、胴体に取り付けた円盤型レドームは毎分6回転しながら360度全周を捜索する。APS-125は戦闘機クラスの小型目標なら200海里、さらに小さい巡航ミサイルでも100海里以遠で探知する能力を持ち、ドップラー・フィルタリングの技術により、海面によるクラッター(電波の乱反射)が激しい低空飛行目標でも容易にピックアップしてスコープ上に表示する。捜索レーダーのほかに敵性電波を受信して発信源を探知し、電波の種類を分析するAN/ALR-59PDS(電波探知判別装置)や、要撃戦闘機を管制するための通信装置を装備している。[1]
E-2Cの機能を強化したE-2D"アドバンスド・ホークアイ"も作られており、米海軍で配備が開始されているほか、航空自衛隊でも導入が始まっている(後述)。
航空自衛隊のE-2C
日本では1976年9月に発生したMiG-25の亡命事件の経験からE-2Cの導入を決め、1986年4月には三沢基地に、初のAEW部隊である警戒航空隊が誕生した。
それ以降も機体の取得が続き、1994年度の2機の追加により、13機体制となっている。配備に伴いE-2CとBADGEを連接するための通信バッファ(航空機の航跡情報等をE-2CとBADGEのそれぞれのプロトコルで相互変換する)も設置された。1997年から2012年にかけて、全機がホークアイ2000相当に改修された。[2]
米海軍のホークアイ2000は共同交戦能力(CEC)に対応しているが、航空自衛隊向けにはCECの中核となるAN/USG-3共同交戦プロセッサはリリースされなかったようだ。他に複合材料製の8枚プロペラを装備するNP2000仕様も空自向けの機体は採用している。[3]
日本のE-2CはアメリカのFMS(有償対外軍事援助)により導入が行われているが、このFMSが曲者らしくE-2Cの稼働率はあまり良くないという話も漏れ伝わるところでもある。これはFMSで導入した機体に必要な整備部品の購入などはアメリカ政府を通す必要があるほか、発注したものの納入が遅れたり、請求額がザルだったり、故障した部品はアメリカ本国に返還する必要があったりとまぁ色々あるそうで、FMSを使って導入された機体は、まともな部品を融通しあう共食い整備が始まり、これが稼働率低下の原因となっている…そうだ。もっとも稼働率に関しては防衛上の秘密事項でもあるし、FMSの運用の見直しも行われているレポートが防衛省にもあるので、この話の真偽は定かではないし、現在もそうなのかは疑問の余地がのこるので注意してほしい。あくまで噂話レベルといったところ。
E-2D アドバンスド・ホークアイ
E-2Cの改良型として2007年に初飛行。IOC(初期作戦能力)を2014年10月10日に取得している。[4]
E-2Dでは搭載レーダーが新型のAN/APY-9に変更されている。このレーダーは既存のレーダーに比べ、より波長の長いUHF帯(300MHz~1GHz)を使用しており、E-2Cより2世代分進化したと言われるデジタル信号処理と組み合わせることでステルス機を探知する有効な手段になっている。[5]
日本では中国の脅威への対抗として2014年に那覇基地に飛行隊を新編し、2個飛行隊体制へと増強するためにE-2Dを新たに導入する。2019年に最初の1機が納入されており、最終的に13機を導入する計画になっている。[6]
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *「兵器最先端6 電子戦力 エレクトロニクスの戦い」 読売新聞社編 1986 pp.65-66
- *「尖閣の脅威に対抗する"E-X"」宮脇俊幸 軍事研究2014年3月号
- *「空自の目と耳”偵察機&警戒機”レビュー」井上孝司 丸MARU 2015年1月号
- *http://news.usni.org/2014/10/16/navy-declares-ioc-e-2d-advanced-hawkeye
- *「実戦配備近づくE-2Dの意義」徳永 進 航空情報2014年10月号
- *水平線の向こう探知しリスク回避 「E-2Dアドバンスド・ホークアイ」 2020.10.9
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