リングとは、鈴木光司によるホラー小説、及びそれを原作とした映画、ドラマ、漫画の事である。
曖昧さ回避
概要
1990年の第10回横溝正史賞 (現・横溝正史ミステリ&ホラー大賞) に応募され、最終選考まで残ったものの落選。しかし鈴木光司がその直後に『楽園』で第2回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞したため、本作も翌1991年に角川書店から出版された。単行本では部数は伸びなかったのだが、業界では口コミで話題になり、同年末の『このミステリーがすごい!』で国内14位にランクイン。1993年の文庫化、1995年の続編『らせん』の発表を経て大ベストセラーとなった。
作家デビュー前の貴志祐介氏はほとんど期待せずに読み始めたそうだがそのまま徹夜するほど熱中し、この作品の影響を受けてホラー作家としてデビューした。
本作は増殖する恐怖というかつての "不幸の手紙" を連想させるホラー小説であり、"呪い" を解く為の方法、そしてその出自を探ってゆくミステリ小説としても読める。さらに物語が進むにつれて、生物学用語を鏤めたバイオホラーへと様変わりし、完結篇に至ってはE・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』やウォシャウスキー兄弟『マトリックス』を想起させる本格的なSF小説へと変貌する。
1998年に映画化されるや、テレビから這い出て迫る貞子(恐怖感を優先した映画版独自の演出)などがホラーファンを中心に人気を呼び、同時製作の続編「らせん」と共に大ヒット。翌年の1999年には、ドラマ版「リング~最終章~」、映画「リング2」、前者の続編のドラマ版「らせん」が製作された。
更に2000年には、「リング0 バースデイ」が公開。いずれの作品も大ヒットし、日本ホラー界にリングブームを巻き起こすと供に、同業界の再活性化を起こした。
2002年には、アメリカで「ザ・リング」としてリメイクされ、ついにハリウッドへ上陸。低予算に対して予想以上の大ヒットを飛ばし、後に続編の製作された。他の和製ホラー「呪怨」「仄暗い水の底から」などのリメイクが進むきっかけを作り、ハリウッドにジャパニーズホラーブームを巻き起こした。
このように世界規模での人気を得たリングシリーズだが、近代和製ホラーの傑作として、現在も根強い人気を誇る。
実は映画版に先駆け、1995年に「金曜エンターテインメント」の枠で、2時間ドラマが制作されている。テレビから貞子が出ることも無ければ高山が超能力者であることもないという、非常に原作に忠実な設定で、かつ評価の高い作品なのだが、如何せんテレビから出てくる貞子のイメージが強すぎることや、ソフト化が一度しか行われていないことなどから、知名度は低い。
あらすじ
- 第一巻『リング』 (1991年、角川書店 / 1993年、角川ホラー文庫)
- 同日同時刻に驚愕の表情を遺して死亡した4人の若者。姪を失った雑誌記者浅川和行が調査してゆくと一本のビデオテープに辿着いた。その奇妙なテープの謎を解明かす為、彼は高校時代からの友人で大学講師の高山竜司の協力を求め事件の真相を追い始めるのだが……
- 第二巻『らせん』 (1995年、角川書店 / 1997年、角川ホラー文庫)
- 監察医の安藤満男の許に死因不明の怪死体が運び込まれた。その遺体の名は高山竜司。かつて大学で同級生だった男の解剖を終えた時、安藤は物言わぬ竜司からメッセージを受取る、"RING" と。正体不明の肉腫、新型ウィルス、浅川レポート…… 真実を追求める安藤の前に現れるのは人類進化の扉か、あるいは破滅への階段か……
- 第三巻『ループ』 (1998年、角川書店 / 2000年、角川ホラー文庫)
- 世界は破滅への道を進んでいた。日米を中心に数百万人の患者を出した謎の癌ウィルス。医学生の二見馨は父親と恋人を蝕むそのウィルスがどこからやって来たのか調査を始める。やがて浮かび上がって来たのはかつて父も参加し、20年前突如として凍結された日米共同の国家プロジェクト『LOOP』。電脳空間にもう一つの地球をシミュレートするというこの巨大計画。当時そこで何が起こったのか? 馨は真理を求めニューメキシコの砂漠を奔る……
- 第四巻『バースデイ』 (1999年、角川書店 / 同年角川ホラー文庫)
- リングシリーズ最終作。3篇の短編からなる短編集であり、シリーズ3作の間などを補完する内容になっている。『空に浮かぶ棺』では、「らせん」の後、貞子を身に宿して再誕させた高野舞の最期が描かれる。『レモンハート』では、生前の貞子の姿を、彼女を慕う遠山という男の視点から映し出す。そして『ハッピー・バースデイ』では、人類のために決死の覚悟で再びループ界に入った高山が、貞子の呪いを解き、現実世界とループ界を救うまでが描かれる。この作品で、貞子の過去と呪いは完全に解かれることになる。
- 第五巻『エス』 (2012年、角川書店)
- 『ループ』とは別の形で描かれる、『らせん』の続編。「貞子3D」の製作過程で新たに生まれた物語で、同作の原作とされているが、筋書きは全くの別物で、同作のノベライズは別に存在する。
安藤満男の息子・安藤孝則は、その内容が変貌するという奇妙な動画のデータを手に入れる。そこに映っていたのは、幼女連続殺人で死刑が執行されたばかりの柏田という男だった……。
シリーズの時系列のどこに位置するのか曖昧な作品であり、『らせん』と『ループ』の間、『ループ』によってループ界が多様性を取り戻した後、『ループ』とは全くのパラレルワールド、など様々な解釈が可能。 - ゲーム『the Ring』(2000年、角川書店)
- もしかして→バイオハザード
- ドリームキャストで発売されたリングを原作としたアドベンチャーゲーム。時系列としては『リング』の後になるが、直接的な繋がりに関しては不明。
- アメリカ合衆国にある民間ウィルス研究所『CDC』を舞台に、謎の変死を遂げた恋人ロバートの死の原因を突き止めるため、主人公・メグが現実世界と仮想世界を往復して謎を解き明かしていく。オリジナルストーリーではあるものの、貞子、ループ界なども登場する。
登場人物
- 山村貞子 (ループ歴1947年 - 1966年)
- 詳細は "貞子" を参照。
シリーズのメインヒロイン。黒髪ロング、微乳、ふたなりが揃ったエスパー美少女である。が、映画版では恐怖演出を優先した製作のために、長い髪を振り乱して迫る血走った眼の女亡霊となってしまった。
貞子の母親の生涯は実在した超能力者とされる女性に似ているそうだが鈴木光司は執筆した時点でこの女性を知らなかったという。
- 高山竜司 (ループ歴1958年 - 1990年)
- シリーズを通した事実上の主人公。医学部を卒業したのち文学部哲学科に学士入学。博士課程修了後論理学の講師を務める。数学、科学、オカルトへの造詣が深い変人。
映像化作品ではその時代を代表する美形俳優が演じているが原作では身長160センチほどで筋骨隆々と容姿が異なる。これは金田一耕助やドラキュラなどとも共通する。
関連動画
関連項目
この記事を見た者は、一週間後のこの時間に死ぬ運命にある。死にたくなければ、今から言うことを実行せよ。すなわち……
- 32
- 0pt