Fontcity 4とは、かつて販売されていたWindows対応のTrueTypeフォント集である。発売元は富士通ミドルウェア。
シリーズ初版は1993年10月に発売された。その後何度かバージョンアップされ、その最終版がFontcity 4であり、1998年に発売されたものである。
なお、ロシアにFontCityというタイプファウンドリーが存在するが、これは無関係。
概要
富士通子会社・富士通ミドルウェアから販売されていた製品。Windows 95からWindows XPまでをサポートし、それ以外のOSはサポート外である。
数えて実に計207書体が収録されていた。書体識別子に「FC」(FontCityの略か)を使用した。
フォントの他にもカラーイラスト5,000点以上、サンプル文書100種類以上、またフォント管理を行ったり画像編集、ホームページ作成などを行えるソフトウェアも色々付属していた。
住所録作成から印刷まで行える宛名書き機能では、同社で取り扱っていた「筆まめ」等のCSVや、シャープ社製ザウルスにも対応していた。
「4」の発売以降はバージョンアップは行われなかったものの、販売は10年以上継続。Windows XPサポート終了の区切りでもある2014年3月31日をもって長きにわたる歴史に終止符を打ったが、最初の製品から数えて約20年もの間販売されたロングセラー商品となった。
製品と機能の詳細
イラスト素材やフレームデータ、後述する書体製品など、収録されている素材が知られるが、それらを管理したり編集できるソフトウェアのインターフェースが目玉である。
イラスト関連
イラストデータ素材は5,000点以上が収録されているが、これをキーワードで検索するイラスト検索、カテゴリ別に一覧表示するイラスト千科という機能によって参照できた。
参照されたイラスト素材は、背景素材とともに「あんばい」という合成機能で合成したり、フォトフレームという機能で写真枠をつけたり、吹出しで文字を入力したりできる。
文書関連
フォントの収録も含め、はがきや文書を入力するための機能が充実している(イラスト機能についてもそういった文書に掲載するためのものである)。
207のフォントデータのインストール管理を行うフォント管理、謹賀新年などの題字の書き文字素材を参照できる「タイトル百科」というものがある。また、フォントで外字や記号を収録した書体を参照するための「文字入力サポート」、文字にグラデーションやストライプ、影など装飾をつける「FontGear」というソフトウェアがある。
住所録やはがきの宛名面を印刷できるPIM/Lightというソフトウェアや、180種類の文例を参照して作文できる文例やサンプルなどの機能もあり、参照から編集までをある程度製品内で完結できるようになっていた。
収録されていた書体について
書体区分 | 書体数 |
---|---|
和文総合書体 (漢字・仮名両対応) |
56書体 |
かな書体 | 24書体 |
数字書体 | 24書体 |
イラスト文字 | 1書体 |
記号 | 2書体 |
欧文書体 | 100書体 |
合計 | 207書体 |
珍しいことに、ソフトウェア組み込みを除いて商用二次利用が自由なライセンスで提供され、その上でメーカー希望小売価格は9,800円という安価であった。このことも手伝い、2000年代初期までの多数のテレビテロップなど広く用いられた。
フォント形式はTrueTypeフォントであるため、ソフトウェアが動作せずともフォントファイルは2023年現在もなお利用できる。
漢字・仮名両対応の和文総合書体では、明朝体・ゴシック体・丸ゴシック体といった基本書体は4ウエイトからなるファミリーで制作されており、伝統的な筆書体についても一部をOEMとしながら楷書・教科書・行書・隷書・古印など一通りを揃えた。また、「イーマ」ファミリー、「ウェブ」ファミリーなどデザイン書体についても充実していた。
欧文書体も外部提供書体が多いが、その中には現在では入手の困難な多数の書体が含まれている。例えば「Candice」などはかつて話題であったが、現在では販売が行われていないため、このフォント集を購入することが数少ない入手方法の一つである。
多くが独自開発のラインナップで構成されており、同じくITメーカー系の書体製品でも他社のOEMをメインに取り揃えたキヤノンの「Fontgallery」シリーズとは異なる路線であった。
総合書体
他社からのOEMと、製品オリジナルの書体が半々といった比率で存在する。なお、順番は基本説明書に準じつつ、一部を整理している。
書体名 | ウエイト | 所属 | 備考 |
---|---|---|---|
FC明朝体 | L,M,B,H | 富士通ミドルウェア | 明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体ともに独自書体で、3書体で骨格が共通している。品質はよくいえば素朴か。Hウエイトは黒味の調整不足が目立つ。 |
FCゴシック体 | |||
FC丸ゴシック体 | |||
平成明朝体 | L,M,B | 日本規格協会 | 日本規格協会によって企画され、様々なベンダーに提供された書体群。 明朝体・角ゴシック体はコンペティションの形で作られ、明朝体がリョービイマジクス、角ゴシック体が日本タイプライターによる。平成丸ゴシックは写研。 |
平成角ゴシック体 | |||
平成丸ゴシック体 | L,B | ||
重ね丸ゴシック | H | ウッドランド | ウッドランドOEM。 線幅を太くして「食い込み処理」を行なった、いわゆるスーボ系書体。 ナール書体に類似した骨格を持つ、偽ナールの一種でもある。 |
教科書体 | L,M | イワタ | イワタからOEMされている。 |
正楷書体 | M | 富士通ミドルウェア | 漢文正楷書局書体(正楷書体)の漢字書体を模倣し、仮名を当てたとみられる書体。 |
毛筆楷書 | N/A | コーパス | |
毛筆行書 | |||
ふで楷書体 | 石井文庫 | ||
行楷書体 | イワタ | ||
隷書体 | |||
勘亭流江戸文字 | 富士ソフトABC | ||
ひげ文字 | ウッドランド | ||
高橋隷書体 | 富士ソフトABC | 麗流隷書としても知られる。大元は株式会社ブリッジのOEM。 | |
淡古印体 | ウッドランド | 古印体の名手・井上淡斎による古印体。写研の「淡古印」とは別書体だが、どちらとも同じ設計士による作である。 | |
千葉ペン字体 | 富士ソフトABC | 美文字系のペン字体。 | |
筆記体 | 富士通ミドルウェア | ペン字体だが、こちらは中庸な書き味。 | |
まる文字 | 「丸文字」に分類される手書きのペン字風書体。 | ||
ウェブライン | 横線が縦に比べ太くなっている、「ファンテール体」に分類される書体。 | ||
ウェブチャビー | 丸い線端をもち、下部分が膨らんだような造形をしている。類似書体にフォントワークス「スランプ」など。 | ||
イーマ108 | 明朝体系だが、横線が太くアンチック体に分類される。 | ||
イーマ205 | 縦が太く横の細い、いわゆるタイポス系書体。 | ||
イーマ310 | 太くて丸いマーカーペンで書いたようなボテっとした丸ポップ体。 | ||
イーマ407 | 細めで強弱のついた、角ポップ体。 | ||
イーマ513 | 太めで一定の太さを持ち、手書き系の骨格を持つ角ポップ体。 | ||
サインボード16G | 共通したビットマップ書体に、それぞれ異なる図形処理を行っている書体群。サインボード16Gは円形、タイルは四角形、キューブは四角の中に穴の空いた造形。 | ||
タイル16G | |||
キューブ16G | |||
袋 丸ゴシック体-H | 縁取り処理を行っている書体。 | ||
袋 重ね丸ゴシックH | ウッドランド | ||
袋 勘亭流江戸文字 | 富士ソフトABC | ||
袋 イーマ310 | 富士通ミドルウェア | ||
袋 イーマ513 | |||
影 丸ゴシック体-H | 縁とともにいわゆる「シャドウ処理」を右下方向に行っている。 | ||
影 重ね丸ゴシックH | ウッドランド | ||
影 勘亭流江戸文字 | 富士ソフトABC | ||
影 イーマ310 | 富士通ミドルウェア | ||
影 イーマ513 |
かな書体
こちらは、全て本製品オリジナルと思われるラインナップ。和文のデジタルフォントを紹介する大手サイト「和文フォント大図鑑」をして「オマケって感じ
」と評しているくらいで、なぜか総合書体より手書き系で素朴な出来のもので構成されている。悩ましいが、用法次第で化けることだろう。
書体名 | 備考 |
---|---|
かな書体01 | 細身のファンテール体。 |
かな書体02 | 縦が太く横が細い、コーポレート系の骨格を持つタイポス系書体。 |
かな書体03 | 手書き系の骨格を持つ角ポップ体。右に傾いたような癖が特徴。 |
かな書体04 | 手書き系の骨格を持つ角ポップ体。コロコロとした印象。 |
かな書体05 | 緩い骨格で、角ゴシックと角ポップの中間のような印象。細めの線幅。 |
かな書体06 | 05の骨格を踏襲しながら太くしたような造形。よりポップ体としての風味が強く感じられる。 |
かな書体07 | 骨格はポップ体系だが、折り返しの部分へ紙を折ったように切り込み線が入れられている。 |
かな書体08 | カリグラフィ風の線で書かれている。 |
かな書体09 | オーソドックスな角ゴシック体をシャドウ処理したようなシャドウ書体。かなりMB101臭がするが気のせいだろう…。 |
かな書体10 | 線の太さに強弱のあるカクカクとしたデザイン書体。 |
かな書体11 | ペンでサッと書き上げたような細くて勢いのある手書き風書体。 |
かな書体12 | カクカクした線の曲がり方をしているデザイン書体。といっても、手書きの風合いが色濃く残る。 |
かな書体13 | 骨格はかな03に類似し、それと比較してより細いバージョン。 |
かな書体14 | 可愛らしい手書き系の骨格を持つ角ポップに、横のストライプ処理を施した書体。あたかも元の書体があるような作りだが、特にそういうのはない。 |
かな書体15 | 丸い線で構成され、曲線の内側に軽く塗りつぶしたような模様の処理が行われている書体。かわいい。 |
かな書体16 | 切り絵のように荒々しく、刺々しい造形のデザイン書体。 |
かな書体17 | 縦線が太く横線が細い。縦線は太い線を細いアウトラインで囲むような造形で、少し「Broadway」とかそういう書体っぽい。 |
かな書体18 | サインペンで書いたように線の端と端が丸く膨らんでいる書体。 |
かな書体19 | 丸っこい手書き風の文字を縁取りした、アウトライン系書体。例によって元の文字のようなものはない。 |
かな書体20 | 右に傾き、線が進むにつれ細くなっていく、手書きの勢いを感じさせる書体。11と特徴は類似するが、骨格などが共通するわけではない。 |
かな ちびちび | 小ぶりで右上がりの手書き風書体。 |
かな くるりん | 小ぶりで、文字の端がくるりんと丸まって渦を描いている手書き風書体。 |
かな ころりん | 文字がいろんな方向に傾いたりしている手書き風書体。 |
かな でこぼこ | 文字にばらつきが持たされた、手書き風書体。 |
関連リンク
関連項目
- 富士通
- フォント / タイポグラフィ / タイプファウンドリー
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