LTEとは、下記のことを指す。
- プログレメタルバンド「Liquid Tension Experiment」の略称 →Wikipedia
- Long Term Evolution(ロング・ターム・エボリューション) …携帯電話の通信方式
この項では、2.について解説する。
概要
第3世代(3G)と第4世代(4G)の間に位置する通信規格で、「3Gから4Gへの移行には時間がかかる」としてドコモが2004年に提唱した「Super3G構想」が下敷きになっている。音声通話を考慮せずにデータ通信に特化して高性能化を図ることで、3Gまでの通信規格に比べてデータ通信速度を飛躍的に向上させた(後にVoLTE(Voice Over LTE)規格が後から追加され、音声通信にも対応)。[1]
規格上想定される通信速度の理論値はMIMOに用いるアンテナの本数や変調方式で複数の種類があるが、下りは100Mbpsを超えるものもあり、従来の固定回線が不要になるかもしれないと一部で期待されている。ただし、速度に関してはあくまで理論上の最大値の話であり、実際に固定回線として利用できるかどうかはエリア環境による(加えて、LTE端末より5Gホームルーターのほうが速度面でいえば実用的)。つまり通信速度と回線設置コストの安さ、どちらが大事ですかというお話。
世代の分類に関する混乱やら互換性やら
LTEは当初、ITU(国際電気通信連合)が4Gとして定義した仕様よりも若干スピードが遅かったので、「3.9G」などと呼ばれていた。しかし、先行してサービスを開始した事業者が端数を切り上げて自社サービスを「4G」と称していたので、ITUも後追いでLTEを4Gに含めることを認めている。[2]
逆に言えば技術的にはほとんど4Gであるため、W-CDMAやCDMA2000とは全く互換性が無い。LTEの仕様の中に、「端末がLTEと従来方式(2G含む)のエリアを行き来する際の手続き手順」が策定されているだけである。
なお、LTEの発展規格であるLTE-Advancedの標準化が開始されており、こちらはれっきとした第4世代(4G)の規格の一つとなることが決まっている。
複信方式の分裂
LTEはその複信方式についてFDD(周波数分割複信)を採用するのが当初の予定だった。しかしそこに異を唱えたのが中国である。
FDDはその内容から当然であるが上下の通信に別の周波数帯を用いるが、まとまった周波数帯を確保しづらい中国やインド等の新興先進諸国ではFDDの採用は難しかった。そこで中国は複信方式にTDD(時分割複信)を採用したTD-LTE方式を独自に開発し始めたのである。
TDDでは原理的に上りと下りの電波が混信しない様、電波を発射しない時間帯を設ける必要があり高速化には不利であるとされているが、中国企業が主導でかなり頑張ったそうで、通信速度そのものには大きな差は無いところまで開発されたそうである。
そんなわけで、現在LTEにはFDDなLTEとTDDなLTEの二種類が存在し、しかもTDDなLTEはWiMAXの次世代規格であるWiMAX2とかなり似たものとなり、しかもWiMAX陣営はそれを見てTDDなLTEとの互換性を視野に入れたWiMAX2.1なる規格を作り始める始末であーもー面倒くせえ!!
日本におけるLTE
日本での商用LTEサービスはNTTドコモが先行している。ただ、他社もここ数年で計画の前倒しなどを行っているおり、ドコモ以外が特段消極的というわけでもない。
日本で使用しているバンド(周波数帯)
日本では1,3,8,11,18,19,21,26,28,41の使用が認められており、事業者により使用しているバンドは異なる。
赤印は主力、緑印は基地局数は中ぐらい、青印は少ない。
NTTドコモ | KDDIグループ | ソフトバンク | 楽天モバイル | |
1(2.1GHz帯) | ● | ● | ● | |
3(1.8GHz帯) | ● | ● | ● | |
8(900MHz帯) | ● | |||
11(1.5GHz帯) | ● | ● | ||
18(800MHz帯) | ● | |||
19(800MHz帯) | ● | |||
21(1.5GHz帯) | ● | |||
26(850MHz帯) | ※1 | |||
28(700MHz帯) | ● | ● | ● | ● |
41(2.5GHz帯) | ● ※2 | ● ※3 |
脚注
※1 バンド18を内包
※2 『WiMAX2+』として事業展開中。
※3 『AXGP』として事業展開中。
NTTドコモの場合
NTTドコモは2010年12月からえるてーいー「Xi(クロッシィ)」として商用サービスを開始した。これはFDDなLTEである。2011年末頃からXi対応スマートフォンなどを積極的に導入しており、混雑が激しくなりつつあるFOMAネットワークからの移行を推進している。
2.1GHzをメインとし800MHz・1.5GHz・1.8GHzでもサービスを開始している。700MHzの利用も開始したが、電波干渉の関係から対応基地局は少ない。なお、1.8GHzは東名阪バンド。
auの場合
auは、『au4GLTE』というブランド名で2012年夏~秋に商用サービスを開始している。これもFDDなLTEである。2013年3月末に全国の実人口カバー率96%を目指すとしている。周波数は800MHz帯をメインとしており他の事業者と比べ電波の届く場所が多いという特徴を持つ。混雑する大都市圏では、1.5GHzおよび2GHz帯も利用する。
KDDI傘下のUQコミュニケーションズが採用しているWiMAXは、LTEサービス開始後も併存させていたが、2+に巻き取った。
UQコミュニケーションズは次世代として前述したWiMAX2.1を採用する「UQ WiMAX 2+(仮称)」を発表した。結果的に同グループ内でFDDなLTEとTDDなLTEが併存する形となってしまっている。
ソフトバンクの場合
ソフトバンクモバイルは2012年に「SoftBank 4G LTE」という名称でサービスを開始した。これもまたFDDなLTEである。主に2.1GHz帯を使用している。イー・アクセス買収によって取得した1.7GHz帯も利用するが、経営まで統合した。
またそれとは別に、傘下のウィルコムが開発したXGP(PHSの系統の通信技術)をベースにしたAXGPと呼ばれる規格を用いたサービス「Softbank 4G」を2012年2月から提供開始。2.5Ghz帯で展開されている。
このAXGPと呼ばれている規格、ウィルコムが推し進めていたXGPという技術を高度化(Advanced)したものだと称しているのだが、しかしその正体はTD-LTE(TDDなLTE)そのものと言って差し支えない。
XGPが高速化のためにいくつかの互換性を失うような仕様変更をしてAXGPを作った結果、TDDなLTEと殆ど同じ様なものになってしまったというような感じのアレである。
したがって、AXGPもLTEの一種という扱いもできるのだが、その辺はたぶん大人の事情であって、今後も公式でLTEを名乗ることはおそらくないと思われる。
ちなみにソフトバンクモバイルには「ULTRA SPEED」と呼ばれるサービスもあるが、これは上のほうで出てきたHSPA+という規格を用いており、旧イー・モバイルの「EMOBILE G4」と同等のもの。
ワイモバイルの場合
旧イーモバイルでは2012年3月サービス開始。スタート時の名称は「EMOBILE LTE」という名称。1.7GHzを使用している。ソフトバンクへの吸収により、ワイモバイルの周波数帯もソフトバンク管轄となった。700MHz帯でのサービスも展開している(免許取得済)。
ワイモバイル網+ソフトバンク網の両方のLTEを使える(状況に応じ自動切替)が、特に旧イーモバイル機種は乗り入れ先が異なる。
例として、Nexus5の場合は2.1GHz帯・900MHz帯に、EM01F(ARROWS S)の場合は2.5GHz帯に乗り入れが可能である。
楽天モバイルの場合
4G向けとしてバンド3(1.7GHz)を採用しエリア展開を実施。あわせてエリア補完のためauのバンド26ローミングを行っている。なお、auローミングエリアでは自社エリアのバンド3ほどの速度は出ない仕様となっている(用途がエリア補完であるため)。
当初は1.7GHzのみで行けると豪語していたが、エリア展開の過程でプラチナバンド取得に方針転換。3キャリアから一部周波数帯を割譲してもらうつもりでいたが、ドコモがバンド28に3MHz幅の空き地を見つけたためこれが割り当てられた。
ただし、他キャリアの700MHzと同様に衛星との電波干渉がある。
キャリアアグリゲーション
キャリアアグリゲーションとは、複数の周波数帯に同時接続することによって速度向上・接続安定性の向上を狙うシステムのことである。
小ネタ
韓国語のWebでは、LTEを縦に並べたように見えるハングル文字「눝」(ローマ字に直すと nut)の一文字で表されることがある。このことが2012年9月頃にTwitterなどで話題になった。
関連リンク
関連項目
脚注
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