曖昧さ回避
- 数学などで証明の終わりに用いられる語句。
- 加藤元浩著の漫画のタイトル。正式タイトルは「Q.E.D. 証明終了」
- 高田崇史による歴史ミステリー小説シリーズ。表記は「QED」(.が無い)。→「QED」
- 東方紅魔郷のExボスが使用するスペルカードの符名。QED「495年の波紋」
- 量子電磁力学(Quantum ElectroDynamics; QED)の略称
- Acid Black Cherryの2枚目のアルバムタイトル。2009年に発売。
概要
古典ギリシア語の "ὅπερ ἔδει δεῖξαι" (ホペル・エデイ・デイクサイ。頭字語は«ΟΕΔ»)の古典ラテン語訳 "quod erat demonstrandum" (クウォッド・エラット・デーモーンストランドゥム)の頭字語である。
学校では大体「よって~は~を満たす」あるいは「証明終わり」として教わるはずだが、より厳密には「以上がかねてより証明されるべき事柄であった」(英語で言えば "which had to be demonstrated") という意味になる。
複数形「以上がかねてより証明されるべき事柄の数々であった」もあり、こちらは "quae erant demonstranda" (クワエ・エラント・デーモーンストランダ)。
ピンと来ない人へ
「//」これもQ.E.D.みたいなもんです。
数学者がQ.E.D.をあんまり使わない理由
……とここまで紹介してきたように、Q.E.D.は「証明完了」の代名詞として広く知られているが、
- 元になったラテン語が長くて理解しづらい
- というかどういう意味か覚えてない
- 書くのが面倒
- ラテン語をそのまま理解すると文章が意味不明になる場合がある
- そもそもAMS-LaTeXなどの数学用組版ソフトウェアを使ったら勝手に別の記号をつけてくれる
- 気取ってる感じがする
- みんなが使ってないので一人だけ使うのも恥ずかしい
等々の理由で不人気である。
そもそもQ.E.D.は「以上で証明された」とか「これで証明は終わり」という意味ではなく、「以上が証明されるべき事柄であった」というなんともちんぷんかんぷんな略称であり、日本人のみならず英語圏の数学者にとっても意味不明で使うのはなんとなく躊躇われるらしい。
というわけで参考までに、現在よく用いられている証明完了の記号をいくつか紹介する。
他の証明終了を表す記号
まず日本語で書く場合、
と最後につける。高校の教科書などではこうなっている場合が多い。これで全く問題はないので、中学生や高校生であればこれを書いておけば良い。あと「証明完了」とかそういうのでも構わない。ただ、「(了)」や「(終)」はあまり好まれない。何が終わったのかよく分からないからである。好まれないだけで、別に悪いわけではない。嫌いじゃないけど好きじゃないよ。
もし「~~を証明せよ」という問題が出て、証明終了の事実を丁寧に書きたいなら、
よって題意は示された。
と書くのが良い。大学入試などで証明問題が出た場合、こう書き添えるのが最も無難だろう。(この場合、別途「Q.E.D.」など他の証明完了記号を付け加える必要はないが、後述の「□」とかを書き添えておくとちょっとやさしさが出る)
他言語を見てみると、サンスクリット語では
इ.सि.
と書くらしい。
タミル語では、
நி.வே.
と書く。……とこのように意味不明だと思われたかもしれないが、日本人以外にとっては「証明終」も意味不明の類いなので、今日では証明完了の記号として、世界的に、以下のように書くことが多い。
□ もしくは ■
これはtombstone(墓石)、もしくは最初に「Q.E.D.」の代わりとして使った数学者の名前を取ってハルモス記号と呼ばれる。tombstone(墓石)と呼ばれる所以には、「この定理は証明完了なので、今後の証明の必要性を葬り去った(=墓を建てた)」とかいう意味も込められているらしいが、後付けの逸話である可能性も高い。
この□は正方形でも長方形でも構わない(ただし長方形の場合、横長ではなく縦長を使う)。数学組版ソフトウェアのTeXの場合、白抜き正方形で記されることが多いため、現在では白抜き正方形が圧倒的多数派となっているが、伝統的には縦長の黒塗り長方形が正しいらしい。事実、少し昔の数学書だと味海苔のような細長い黒長方形が書き込まれている。
黒板で記す場合は塗りつぶすのが面倒なので□の方が好まれる。ある数学者は板書する際に■の代わりとして□の中に×マークを書き入れたが、その人物曰く「□の中に斜線を書くのも可」らしい。もし講義などをする立場になるなら、「証明完了のサインはこれ」とあらかじめ定義しておくのが望ましいだろう。
書く場所は、数学書によって「文章の直後」「段落の一番右」などと一定しないが、基本的には証明完了の事実を示した文章(もしくは数式)の後の近い場所に置くのがマナーである。現在では証明完了したのと同じ行に、一番右寄せで「□」と書くことが主流。
さて、やはり手書きだと□を隅っこに書くだけではなんとなく頼りないのも事実。というわけで、
//
と書くのも認められている。他にも、「xx=yyであることを示せ」という問題なら、「以上によりxx=yy」と書いて「xx=yy」の下に二重線を引いても証明完了の印として認められることがある。
そして何も書かないで下に空白を空けることでも証明完了を意味させることは可能である……が、「証明せよ」といった問題が出ている場合や、新たに定理を提示する場合、定理に対する証明と、その証明終了のサインをつけておくことは読み手に対するマナーとも言える。
……とにかく証明完了のサインはやたら多い。とはいえ、「Q.E.D.」はほとんど使われることがなく、最も不人気な「//」にすら劣る場合があり、現在では圧倒的に「□」が主流である。
ちなみに、フェルマーの最終定理を三日間にわたるセミナーで黒板を使いながら証明したアンドリュー・ワイルズは、最後にフェルマーの最終定理に直接つながる谷山・志村予想の証明完了を示した後、黒板にフェルマーの最終定理の式を書くと、
これで終わりにしたいと思います。
と宣言した。前に述べている定理と、フェルマーの最終定理が同値であることを聴衆は知っているので、証明完了と言わなくても、一言添えるだけで十分だったのである。会場は総立ちとなり、誰かが持ち込んだシャンパンが空けられたとかなんとか。(ただし、その後出版された論文ではきちんと「□」が添えられている)
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