最初の画面に戻ったと思うのもつかの間、下から一匹のボーダーコリーがニュッと現れ、閲覧する財団職員にあるメッセージを届ける。
内容は以下の通り。
このメッセージを開いて読んでいると言う事は、君は新たな財団職員なのだろう。そして、我々に何が起こったのかも把握しているはずだ。
我々が失敗したように、ほんの些細なきっかけから世界は崩壊してしまう。人類の歴史はその繰り返しだ。
まるで世界が不条理と不可能を必要としているかのように思うかもしれない。
だが、我々人類は諦める事なく全ての崩壊を乗り越え、君達はその先頭に立った。それだけは忘れないでくれ。君達はこれから様々な異常存在──新たに生まれるもの、かつての財団が対処しきれなかったものも含めて、それらと関わることになるだろう。
君の目の前にいる異常存在は私がやり残した物の一つだ。報告書に記した通り、確保と収容、
──そして保護をお願いしたい。
送り主は五條研究員だろう。SCP-3519によって人類は滅びかけたが、五條研究員とSCP-2000-JPの活躍によってSCP-2000が起動し復活。訓練の賜物か、メッセージを一つも文字化けさせずきちんと届けたSCP-2000-JPは、最後に託された使命を完璧に全うした。
人類はこれまでもこれからも、何度も危機に立ち向かうことになるだろう。今回のように、文明を再構築する事態にまで発展してしまうかもしれない。
それでも、人類は諦めずに立ち向かってきた。それは財団職員だって同じだ。
異常存在の確保と収容、そして保護。
どんなに世界が変わろうとも、財団の使命は変わらない。
さて、目の前のSCP-2000-JPも、当然確保・収容しなければならない。そして、その次にやることといったら……
……さて、SCP-2000-JPが掘った「穴」をクリックすると、いくつか白い穴が空いた黒い空間にたどり着くだろう。これが先述したSCP-2000-JPの「巣」である。計11個の穴は、五條研究員という人物へのメッセージ、あるいは五條研究員とある者の対話記録となっている。一つずつ見ていこう。
1つ目の穴
五條研究員宛に届けられたメッセージ。送り主はなんと、財団きっての問題児と悪名高いクレフ博士である。しかし内容はいたって真面目で、とあるSCPの情報を集めていると書かれているが、文字化けしていて何のSCPかは分からない。
また、「サイト-縺斐↓」で対抗ミーム兵器の開発が完成間近まで進んでいたこと、「サイト-縺斐↓」とクレフ博士のいるエリアは財団職員が全滅していることが記されており、不穏な情勢が伺える。
2つ目の穴
こちらもクレフ博士からのメッセージ。
五條研究員は隔離された場所にいるようで、何が起きているかを把握していない模様。
クレフ博士によると、財団はあるSCPの制御に失敗したとのこと。相変わらず数字部分は文字化けしているが、今回はリンクが付与されている。
財団が制御に失敗したSCP、それはSCP-3519であった。
知らない人向けに説明すると、SCP-3519はオブジェクトクラスがKeterに指定されているミーム感染で、感染者は「2019年3月5日に世界が滅亡するので、その前に自殺するべき」と確信し、40日以内に死亡してしまう。感染する条件が非常に緩く、既に財団の指揮系統は崩壊。世界は終わりを迎えようとしていた。
3つ目の穴
子どもを思わせる言葉使いやひらがなの多さから、「AO-蝗幃峺」は5歳程度の知能を持つとされるSCP-2000-JPと見て間違いないだろう。なお、文字化け部分をS-JISからUTF-8にエンコードすると「AO-四零」となる。
5つ目の穴
訓練を嫌がっているAO-蝗幃峺に対し、五條研究員はご褒美があれば頑張れるかと聞く。それに対しAO-蝗幃峺は「SCPなんとかってなまえがいい」と応えた。現状はAnomalousアイテムに位置づけられているAO-蝗幃峺だが、五條研究員は今回の作戦が成功したらSCPとして指定することを約束した。
6つ目の穴
五條研究員宛に届いたメール。だが、財団の情報管理部門であるRAISAにより閲覧が禁止されている。
現状、五條研究員にメールを送れるのはクレフ博士しかいない。要は、クレフ博士もSCP-3519に感染してしまったのである。
また、SCP-3519は、感染した人間が「世界の終末が迫っている」と言及するのをいかなる媒体で認識しても感染する。
これが意味することは、つまり……
7つ目の穴
最悪なことに、五條研究員もSCP-3519に感染してしまった。「明日滅びる」という言及から、この会話は2019年3月4日に交わされたことが分かる。
AO-蝗幃峺も死ぬ準備をするように伝える五條研究員だが、そもそも死に方が分からない。ここでAO-蝗幃峺は「SCiPNETにつないで外の世界を見たい」とお願いする。どうせ世界は滅びるということで、五條研究員は彼の願いを聞き入れた。
ところが、SCiPNETにAO-蝗幃峺を接続すると事態が急変する。AO-蝗幃峺が自らに付いた番号と同じポートを指定したところ、サイトのセキュリティにサイバー攻撃として検知されてしまったのだ。五條研究員のいる場所には鎮静ガスが散布され、五條研究員は昏睡した。
そして……
8つ目の穴
昏睡から目覚めた五條研究員は、AO-蝗幃峺に現在の日時を確認する。AO-蝗幃峺の答えた日付は、2019年3月5日をとっくに経過していた。
SCP-3519は、世界滅亡の日とされる2019年3月5日を過ぎると効力を失う。五條研究員と一匹の電子の犬は、世界の危機から生き延びることに成功したのだ。
10個目の穴
AO-蝗幃峺が収集した五條研究員宛のメール。1枚目は閲覧できないが、2枚目は閲覧が可能となっている。それによると、クレフ博士はSCP-2000のもとへ向かっていたようだ。
SCP-2000は、アメリカ・イエローストーン国立公園の地下に存在する財団製の施設であり、人類が滅亡しかけている、または滅亡してしまった際に起動すると文明を再構築することができる。普段は財団の管理者によって厳重に守られているが、ガニメデ・プロトコルが発令されると財団職員なら誰でもアクセスできるようになる。財団の人類の危機に対する最後の手段といっていいだろう。
クレフ博士はSCP-2000の起動を試みたようだが、管理者が入り口を封鎖してしまったらしく、失敗に終わったと告げられている。
SCP-2000-JPとは、シェアワールド創作作品群『SCP Foundation』のオブジェクトである。
概要
SCP財団日本支部で開催された「SCP-2000-JPコンテスト」の優勝作品。コンテストテーマは「変遷」。
大百科記事でこんなことを言うのもアレだが、この記事の解説を読む前にぜひ本家の記事を読んでもらいたい。というのも、報告書には巧妙なギミックが仕込まれており、事前情報無しで読むのが一番楽しめる。まだ読んだことのない人は、こちらから本家の記事を読むことを強くおすすめする。
SCP-2000-JP | |
基本情報 | |
---|---|
OC | Thaumiel |
収容場所 | 未収容 |
著者 | WagnasCousin FeS_ryuukatetu furabbit |
作成日 | 2020年2月1日 |
タグ | メタ コンピュータ 犬 知性 自我 |
リンク | SCP-2000-JP![]() |
SCPテンプレート |
SCP-2000-JPは、コンピュータ・ネットワーク上で活動する情報知性体である。メタタイトルは「伝書使」。
現在収容されておらず、オブジェクトクラスは「Thaumiel」に指定されている。
イメージ画像はボーダーコリーのイエイヌ。「テキストボックスから成るグラフィカルユーザーインターフェース」、要はメッセージアプリのような仕組みを備えており、ユーザーとの意思疎通が可能。人間なら5歳程度の知能を持つ、そこそこ賢いわんこである。
SCP-2000-JPの特徴として、コンピュータ・ネットワーク上のセキュリティホールを「掘る」ことで、それを突破する能力が挙げられる。また、自身にとって最も重要な情報のある場所を「巣」と定め、それ以外の場所から持ち帰った情報を保存する習性を持っている。なお、SCP-2000-JPは情報を「噛んで」持ち運ぶため、情報には欠損が見られる。まさにわんこ。
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